眠りは科学でととのえる
基礎知識や理想の睡眠を解説!
睡眠の効果やよりよい睡眠をめぐる科学的研究が進んでいる。ここでは、睡眠学の第一人者である内村直尚さんに、眠りについてうかがった。
監修=内村直尚(うちむら なおひさ)
久留米大学学長。日本睡眠学会理事長。睡眠医療の第一人者として、幼少期からの睡眠の大切さを知り、生活習慣の改善を目指す学習「眠育」の普及にも尽力。『知識ゼロでも楽しく読める!睡眠のしくみ』(西東社)など著書多数。
そもそも、どうして人は眠るのですか?

人は人生の約3分の1を眠って過ごすといわれている。睡眠の一般的な定義は、内部からの欲求によって意識が低下した状態であり、外部の刺激で即座に目覚めるという点。実のところなぜ眠るのかという根本的な理由は、現代科学でもなお謎に包まれているという。しかし、睡眠が心身の健康に不可欠な多様な働きをもつことは解明されている。主な役割は、日中の活動で疲れた脳と身体を休める疲労回復や、脳内の情報を整理して定着させる脳のメインテナンス。ほかにも、免疫力の向上や身体の成長、ストレスの緩和、脳にたまった老廃物の除去などの役割がある。
寝不足も寝過ぎもNGです

睡眠時間は、短過ぎても長過ぎても健康リスクを高める可能性がある。成人の場合、死亡リスクや生活習慣病の発症率が最も低いのは、1日6~8時間程度の睡眠だ。5時間未満の「寝不足」が続くと、脳のパフォーマンスが低下するだけでなく、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、認知症、さらにはがんのリスクも高まるという。

一方、9時間以上の「寝過ぎ」も注意が必要。長時間睡眠の背景には、睡眠時無呼吸症候群などの隠れた病気や睡眠負債による質の低下が潜んでいる可能性があり、やはり死亡リスクの上昇を招く。しかも、平日の不足分を週末の「寝だめ」で補うことは難しく、体内時計を乱す原因となるため、毎日の規則正しい睡眠習慣がポイント。
年齢を重ねると
熟睡しにくくなる理由

加齢により熟睡しにくくなるのは、体内時計が前倒しになり、睡眠にかかわるホルモン分泌が早まって朝型へと変化し、25歳で約7時間あった平均睡眠時間が、65歳で約6時間にまで減少するため。また、中途覚醒は増加し、ノンレム睡眠中の深い眠りが減り、浅い眠りが増えるため、尿意や物音など身体的不快感で夜中に目が覚めやすくなることも要因だ。活動量や基礎代謝の低下も熟睡を妨げる原因とされている。
いまだ謎に包まれる
夢とあくびの働き

夢やあくびの根本的な理由は、現代科学でもいまだ謎。夢は記憶の整理や選択にかかわるとされるが、明確な結論は出ていない。あくびは、冷たい空気で脳を冷やして覚醒を促したり、反対にリラックスさせる働きがあるという説があるが、真相は不明だ。これらは心身を健やかに保つための不可欠な生命現象と考えられている。
睡眠の質を高める必要性とは?
「起きている16時間の質を左右するのは、8時間をどう寝るかです」と話す睡眠学者の内村直尚さん。ここ20~30年で睡眠研究が進み、近年では、睡眠は疲労回復や脳のメインテナンスなどに効果があることが科学的に解明され、快眠への意識も高まっている。

快眠のカギは睡眠リズムをつかさどるセロトニンとメラトニンという物質。朝日を浴びて分泌されるセロトニンが日中の意欲や集中力を高めるメンタル安定剤として働き、その14~16時間後にはセロトニンを原料としたメラトニンが分泌されることで体温を下げ、自然な眠気を誘うという仕組みだ。ゆえに規則正しい生活は大切なのだ。
睡眠の質は成長期の子どもにとっても欠かせない。「2023年度に、母子健康手帳に子どもの睡眠記録と保護者の睡眠に関する問診項目が新たに追加されたのも、よい傾向です」と内村さんは語る。成長期のための睡眠教育「眠育」を提唱する内村さんは、「睡眠不足は成長発達を阻害し、成績低下や切れやすさ、不登校、さらには将来の健康リスクにもつながります」と警鐘を鳴らしている。海外では、睡眠を阻害する夜のゲームやスマホ利用時間を法律で制限する国もあり、国内では条例で規制する自治体も出てきている。
睡眠が科学的に解明されてきたことで、その重要性が国や自治体に認められてきたのだ。
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部屋、枕、パジャマのポイント
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text: Kazunori Morikawa
2026年6月号「ウェルネス入門」



































