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なぜ「早寝、早起き、朝ごはん」がいいの?
柴田重信さんが教える
時間栄養学で見る朝食のススメ

2023.5.24
<small>なぜ「早寝、早起き、朝ごはん」がいいの?</small><br>柴田重信さんが教える<br>時間栄養学で見る朝食のススメ

時間栄養学とは、食べる「内容」や「量」のみならず、「いつ食べるか=体内時計」という視点を加えた学問のこと。そこには「朝食」が大きくかかわっている。

教えてくれたのは……
柴田重信(しばた・しげのぶ)さん

1953年生まれ。九州大学大学院薬学研究科博士課程修了、薬学博士。広島大学医系科学研究科特任教授、早稲田大学名誉教授。『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社)など著書多数

Q なぜ朝食をとることがいいの?
A 朝食で「体内時計」をリセットすることが重要なんです

朝目覚めると、活動に備えて体温や血圧は上がり、夜は自然と眠くなる。このような生体リズムをコントロールしているのが、身体に備わる「体内時計」というシステムだ。体内時計の周期は約24.5時間。1日約30分のズレを修正するには、体内時計を毎日リセットしなければならない。その役割を果たすのが朝の「光」と「朝食」。体内時計には脳内にある主時計と、臓器や末梢組織各所にある副時計が存在し、主時計は光、副時計は朝食によって動き出す。朝食によるリセット効果は朝の時間帯に高まるため、起床後1時間以内、9時頃までにとるのがベスト。

Q 体内時計が乱れるとどうなる?
A 身体の中で時差ボケが発生。基礎代謝、免疫力が低下します

身体の中にある「体内時計」の仕組み
主時計と副時計を同時にリセットし、ハーモニーを奏でるには、網膜から入り脳の視交叉上核へ届く光の刺激と、臓器などへ届く朝食の刺激が必須となる

体内時計をオーケストラにたとえると、主時計は指揮者で副時計は奏者。朝、光を浴びたとしても朝食を食べなければ、主時計はタクトを振りはじめたのに、副時計は演奏を放棄している状態となる。つまり主時計と副時計との間に時差ボケが生じ、体内時計が狂ってしまうのだ。体内時計が乱れると、肥満、睡眠障害、糖尿病、がん(大腸がん、乳がん、前立腺がん)、うつ病など、さまざまな病気を引き起こす恐れもある。体内時計は光や食事による刺激で前進したり後退したりするが、何かの刺激で急に動くことはない。毎朝、決まった時間に光を浴び、朝食をとるという習慣を固定化し、少しずつ体内時計のリズムを整えていこう。

Q 前日の夜に食べ過ぎてしまった……。朝食を食べないとダメ?
A チートデイが1日あってもOK!

たまに前日の夜に食べ過ぎて朝食がとれなかったり、夜更かしをしてしまっても、体内時計が大きく乱れることはない。要は日頃から体内時計のリズムを整えてさえいれば、週に1日くらいチートデイがあってもOKなのだ。また、朝、食欲がわかない人は、軽く身体を動かしてみるのがおすすめ。200㎖で約6.8gのタンパク質がとれる牛乳を飲むことからはじめるのもよい。

Q ズバリ、体内時計を整える朝食メニューは?
A ご飯、味噌汁、青魚に納豆。和食の組み合わせがサイコーです

朝食は体内時計をリセットする力が大きい「インスリンが出やすい食べ物」を選びたい。インスリンは血糖値に反応して分泌されるため、血糖値を上げやすい炭水化物(糖質)はメニューに加えよう。さらにタンパク質、鮭や鰯といった魚の脂に含まれるDHAやEPA、野菜や肉、大豆に含まれるビタミンK、野菜や海藻に含まれる水溶性植物繊維にも、体内時計のリセット効果がある。すなわち「ご飯+魚」という和食は理想的な朝食。具だくさんの味噌汁や、ビタミンKが豊富な納豆をプラスするのもよし。慌ただしい朝は、コンビニで購入した鮭のおにぎりがおすすめ。

Q 朝からたくさん食べると太ってしまう?
A 朝からしっかり食べることで脂肪燃焼モードが発動します!

朝食をとることで、朝から血糖値が上がり、結果、身体は「脂肪燃焼モード」になることがわかっている。睡眠時まで代謝のよさは続くので、同じ3食でも「朝食+昼食+夕食」をとる人と、「昼食+夕食+夜食」をとる人の比較では、前者のほうが寝ている間に分解される脂肪量が多いという研究結果も。ただし、これまで「昼食+夕食」のみだった人が、そこに「朝食」を加えるだけではカロリーオーバー。1日の食事量は変えず、「朝食3:昼食3:夕食3:間食1」のバランスにするのがよく、間食はおやつなどで調整するのが望ましい。

Q 時間栄養学的ダイエットにつながる食事法はありますか?
A 朝食を軸にコントロールした12時間断食がおすすめ

近年「16時間断食」といったプチ断食ダイエットが広まっているが、体内時計のリズムを無視した絶食時間の昼間設定では、思うような結果が得られないことが多い。絶食時間の適切な長さは「12時間」。1日の食事量は同じでも、栄養がエネルギーとなって燃焼されるか、脂肪として蓄えられるかは、食事の回数や量によって異なる。1日3食を基本とし、栄養の比率を考えながら朝・昼・夕の食事量を均等にするのがおすすめ。夕食での糖質は余剰エネルギーになりやすいので、ご飯やパンなどの炭水化物は少なめに。長い絶食時間であっても「夜のドカ食い」はすべてを台なしにする。

読了ライン

text: Nao Ohmori illustration: Yuka Sakamaki
Discover Japan 2023年5月号「ニッポンの朝食」

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