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高知の宴文化“おきゃく”とは?
皿鉢料理と日本酒で愉しむ土佐文化
前編|土佐のおきゃくを味わう冬の旅へ

2025.12.22 PR
高知の宴文化“おきゃく”とは?<br>皿鉢料理と日本酒で愉しむ土佐文化<br><small>前編|土佐のおきゃくを味わう冬の旅へ</small>

酒と宴をこよなく愛する、おおらかな県民性で知られる高知。脈々と伝わる “おきゃく”のもてなしを体験すれば、初対面の人とも和やかに打ち解け、知らなかった高知が見えてくる。前編では、名料亭で体験するお座敷遊びとともに、土佐流もてなしの魅力をご紹介。

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高知の美味しく楽しい酒文化を堪能

「いしはらの里」で供される田舎皿鉢。山間部ならではの名物・田舎寿司をはじめ、イタドリの炒め物やチャーテ(ハヤトウリ)の酢の物など、風土を鮮やかに映す品々がふんだんに

南国の風土で、豪放磊落ごうほうらいらくな気風が育まれてきた高知。山内容堂など歴代の土佐藩主が酒豪揃いであったというエピソードなどから、酒好きのイメージも強い。酒が好きなら、酒を楽しむ席も大好き。そんな気質を象徴するのが“おきゃく”だ。“お客”を招いて開く宴は、やがてそれ自体が“おきゃく”と呼ばれるようになったという。

冠婚葬祭をはじめ、祝い事や節句の際に催される“おきゃく”の付き物といえば、皿鉢さわち料理。大皿を用いて、刺身や鮨、煮物、和え物、そして甘味や果物などが賑やかに盛り込まれた料理の総称だ。下ごしらえこそ手間と時間を要するが、事前にすべてを用意してからゲストを迎えることができるので、給仕に追われる人も出ず最初から宴の一員に。あとは、各自が好きなものを好きなだけ。現代でいうビュッフェスタイルのような、とても合理的でみんなに優しいシステムなのだ。

折に触れて開く“おきゃく”に備えて、一般家庭でも大皿と取り分け用の小皿、徳利やお猪口を多数揃えていたとか。さらには時間を忘れて夜更けまで盛り上がったときのために、お客用の布団まで常備していたというから心が和む。

大皿を囲み、ざっくばらんに酒を酌み交わせば、立場や年代が違っても、いつしか家族のような気安さに。“おきゃく”を体感すれば、ますます高知が好きになる。

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歴史ある料亭で
高知伝統のお座敷遊びを体験!

前菜から刺身、フルーツなどを盛り込んだ「得月楼」の組物皿鉢。アサヒガニがおめでたい席にもふさわしい。べく杯をはじめ、お座敷遊びのアイテムも宴のムードを高める

いかに楽しく酒を飲んで、“おきゃく”を満喫するか。古くからその追求に余念のない高知県人にとって、お座敷遊びも外せない。

皿鉢料理と美酒を味わい、場が温まった頃が座興の出番。天狗、ひょっとこ、おかめをかたどった、卓に置けない形状の「べく杯」は、あまりにも有名なアイコンだ。各キャラクターの絵が描かれた特製のこまを回し、出た目に描かれた杯で酒を受けるのがお約束。最も杯の容量が多い天狗が出ると、いやが上にも盛り上がる。こま回しにもコツがあり、3回続けて失敗した場合は天狗の杯を干すペナルティが。「たまるか(なんと)!」と、土佐弁でリアクションしてみるのも楽しいだろう。

高知のお座敷遊びいろいろ
ゲームに負けたら、楽しく罰杯を受けよう。酒を飲み干す際は、お面を被ったようにべく杯を持つのがポイント。大ぶりな天狗の杯は、写真映えも抜群だ

見えないよう握り込んだ箸を一対一で出し合い、合計の本数を当てる「箸拳」も、シンプルだがヒートアップ必至の遊び。実は、坂本龍馬が新婚旅行で鹿児島を訪れた際に「なんこ拳」なる遊びを知り、大いに気に入ったため土佐にもたらしたのがはじまり……という説も。このほか、伏せた杯を一人ずつひっくり返していき、中に仕込まれた花を引き当てた人が酒を飲むという、ロシアンルーレットのような「菊の花」なども。

飲むほど、酔うほどに取りつかれる“おきゃく”の魅力。酒が飲めなくても、心配は要らない。ノンアルコールでも十分に雰囲気を楽しめる。老舗料亭「得月楼」で仲居さんから手ほどきを受けながら遊びに興じれば、龍馬ら先達の酒豪と肩を並べたような気分に。

 

150余年の歴史を紡ぐ名料亭で、至福のもてなしを
「得月楼(とくげつろう)」

繁華街にありながら、重厚な門をくぐれば静けさに包まれ別世界に

1870(明治3)年、玉水新地で創業。南海第一楼(西日本一の料亭)と称され、宮尾登美子の著書『陽暉楼ようきろう』のモデルとなった。文人墨客の書画を多数所有し、典雅な和風建築の離れからは、幕末の著名な庭師が手掛けた庭園を望むことができる。山海の幸をふんだんに使って仕立てた、豪快かつ繊細な土佐料理を楽しみたい。皿鉢料理は2名から提供可、前日までに要予約。お座敷遊びは別途リクエストを。

宮尾登美子をはじめとする文人や政界の要人たちも利用した座敷「南博邸」。昭和12年開催の南国博覧会から移築され、釘を一本も使わず建てられている
「べく杯の遊びをするときに、“べろべろの神様”という囃子歌を歌うんですよ」と教えてくれる仲居さん。温かなもてなしがうれしい

得月楼(とくげつろう)
住所|高知県高知市南はりまや町1-17-3
Tel|088-882-0101
営業時間|11:00~14:00(L.O.13:30)、17:00~22:00
定休日|月曜(祝日の場合は水曜休)
www.tokugetsu.co.jp

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地元の人々の日常に触れられる
“おきゃく”体験

UターンやIターン移住組も含め地元・土佐町を愛してやまない住民の皆さんと乾杯

より日常の目線で「おきゃく」を体感できるスポットも。場所は四国の中央に位置する土佐町。元小学校の建物を生かしたコミュニティセンターで、地域住民に迎えられての宴会がかなう。

こちらの皿鉢料理は、山里ならではの美味が凝縮。魚の代わりにタケノコやコンニャク、ユズなどを使った田舎寿司、山菜の炒め物や漬物といった素朴で滋味深い品々が、じんわりと心に染みる。酌み交わすのは、土佐町で長年愛される地酒。校舎の面影と相まって、はじめて訪れたのにどこか懐かしい。館内で宿泊もできるので、宴が長引いて夜が深まっても、そのまま布団へ。旅なのに里帰りさながら。そんな体験もまた「おきゃく」の醍醐味だろう。

地元の土佐酒造が手掛ける「桂月」。料理を選ぶことなく飲み飽きず、冷酒でも燗でも楽しめるオールラウンドな日常酒

 

山村の学び舎跡で、地元目線の宴会に触れる
「いしはらの里」

校舎や校庭、体育館をほぼそのままに保存し活用。ゆっくりと時間が流れる

2009年まで数多くの子どもたちを育んだ旧石原小学校を、地域のコミュニティ拠点として再生。「いしはらのおきゃく!」プランでは、ホスピタリティ精神あふれる地元の“おんちゃん・おばちゃん”たちと交流しながら、皿鉢料理や地酒を味わえる。ほかにバウムクーヘンづくりや薪割り、木工など体験プログラムも充実。館内には家族風呂やシャワールームが新設されているので、宿泊(1名4000円)も快適。

旧小学校の教室や図書室を生かしたノスタルジックな空間で宿泊できる

いしはらの里
住所|高知県土佐郡土佐町西石原1228
Tel|0887-72-9328(月~金曜、9:00~17:00)
※「土佐のおきゃく文化を体験 大人の修学旅行 土佐のおんちゃん・おばちゃんと語る いしはらのおきゃく!」1泊2日1万9800円(宿泊料、香る竹食器づくり一式、桂月飲み放題のいしはらのおきゃく体験、朝食。10~30名で受付可能)
※「土佐のおんちゃん・おばちゃんと語る いしはらのおきゃくランチ」日帰り4000円(地鶏BBQ、10~40名で受付可能)
www.ishiharanosato.jp

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“おきゃく”に満喫する高知スポット
 
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土佐のおきゃくを味わう冬の旅へ
01|高知の宴文化“おきゃく”とは?
02|日本酒の酒蔵見学と人気店めぐり

text: Aya Honjo photo: Azusa Shigenobu
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」


≫東高知の伝統と芸術に触れる旅
≫塩の道をゆく高知旅

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