1年360食以上カレーを食べる
歌舞伎役者・ 尾上右近が語る
「カレー愛!」
後編|カレーの自由さは歌舞伎と共通する!?
無類のカレー好きとして知られる尾上右近さん。カレーと歌舞伎の意外な共通点から、お気に入りの店、自宅でカレーを楽しむための極意など、カレーへの熱い思いを行きつけのお店の東京・東銀座にある「薬膳Dining&Bar 銀座しんのう」で語ってもらった。
歌舞伎役者・尾上右近
2005年、二代目尾上右近を襲名。2018年、七代目清元栄寿太夫を襲名。役者としても多方面で活躍し、「北野エースカレーなる本棚®公式アンバサダー」も務める。10月の歌舞伎座上演「錦秋十月大歌舞伎」の通し狂言『義経千本桜』に二役で出演。
「カレーには明確な定義がない。
その自由さは歌舞伎と
共通していると思います」

「カレーも歌舞伎も幅広い。歌舞伎は古典だけでなく新作歌舞伎も増えています。2025年9月に『ルパン三世』を歌舞伎にした作品に出演しましたが、アニメとコラボしても歌舞伎として成立するんです。というのも歌舞伎には明確な定義はなく、歌舞伎役者がやるから歌舞伎になる。カレーも同様で、専門家は口を揃えて『カレーに定義はない』と言います。しいて言えばスパイスを使うことくらい。自由だからいろんなジャンルを吸収して、バリエーションが広がる。誰とでも相性がいいのに自分の個性も消さない“カレーのような人”になりたいと思います」

右)約25種類の生薬とスパイスを使用したキーマカレーと、欧風&スパイスカレーのハイブリッドとして誕生したデミグラスカレーをあいがけ。仕上げにもスパイスをミルで挽いて香りをプラス。カスメリティやピーナッツなどもトッピング
歌舞伎に注力するため、カレーは食べることに専念。自身でカレーづくりはしないが、自宅では思う存分レトルトカレーを楽しんでいる。一押しのレトルトは、ミャンマー料理研究家・保芦ヒロスケさんが開発した「ミャンマーチキンカレー チェッターヒン極辛」。
「衝撃的に美味しくて、レトルトカレーの常識を覆されました。僕の中では5年以上不動の1位。基本的にこれとどのカレーをあいがけすればいいかを考えています」

ひと皿に複数のカレーを盛りつける“あいがけ”の魅力は、美味しさが1+1以上に、何倍にも広がっていくこと。サラサラしたカレーには、とろみのある食感が異なるカレーを。そして異なる食材を合わせるのも極意のひとつだ。
「たとえばドロっとしたビーフカレーには、サラッとした野菜カレーを合わせる。感覚的にやっていましたが、料理研究家の方から肉と野菜の異なる旨み成分を掛け合わせると相乗効果で美味しくなると教えてもらったので、理にかなっているようです。茶色×黄色など、彩りで選んでもいい。ひと手間かけると自分でつくった感覚になれて楽しいし、自分の好みに寄せられるのでおすすめです」

あいがけする際は盛りつけ方にも注意。サラサラ系のカレーはご飯をすり抜けてしまいがちなので、うつわの中央にご飯のダムをしっかりとつくること。
「防波堤はあいまいにしない! 最初にカレーが混ざると悔しいので」と右近さん。それぞれのカレーの味を楽しんでから、途中でダムを決壊させてルーをミックスする。
「一番好きなあいがけは、チェッターヒンと『富良野スープカレー』。富良野スープカレーの酸味が加わることで、チェッターヒンのピーナッツオイルの甘さが際立つ。お互いのよさを引き出し合って、味が変化するんです」

右)爽やかな香りが漂うクロモジのジントニック1320円
道具にもこだわり、食器はインド製の丸い深皿、スプーンは「山崎金属工業」の「カレー賢人 キャリ」を愛用。カレー専用として設計されたスプーンはなめらかな口当たりで口にフィットする。
「浅いスプーンはうまくカレーがすくえません。キャリはある程度深さがあるので、スプーンの上で小さなカレーライスがつくれる。僕はルーとご飯を6対4の比率ですくって、最後のひと口まで同じ配分でバランスよく食べたい。キャリならそれが可能なんです」
カレー好きが高じて、カレー愛をつづった書籍を出版し、自主公演ではオリジナルレトルトカレーを販売したことも。今後もカレーにまつわる野望があるそうだ。
「カレーを食べながら見る歌舞伎をやってみたい。音楽家の方に、お酒を飲みながらライブするとお客さんと一体になれて楽しいという話を聞いて、うらやましいなと。演者も見る側も第一部はカレーを食べ、第二部はお酒を飲む。そんな公演を妄想しています(笑)」
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薬膳Dining&Bar 銀座しんのう
住所|東京都中央区銀座3-11-7 鶴見ビル
Tel|03-6264-3412
営業時間|11:30~15:00、
17:00~23:00 定休日|日曜、祝日
www.ginza-shinno.tokyo
02|尾上右近が語る「カレー愛!」【後編】
text: Rie Ochi photo: Maiko Fukui, Norihito Suzuki
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」



































