《魚カタログ》
冬が旬のメジャーな魚②
|ブリ / クエ / トラフグ / マダイ
豊かな魚文化が根づく日本。海水魚や淡水魚、魚以外の甲殻類や軟体類まで……。知っているようで知らない、美味しい魚について生物ライターの平坂 寛さんに教えてもらった。その中でも今回は、全国の鮮魚店やスーパーマーケットで手軽に入手できる定番の魚種。そんなメジャーどころから、これから旬を迎える旨い魚たちをご紹介。
《ブリ》
イナダもハマチもこの魚です
「脂を味わうべし」
冬のブリを特に「寒ブリ」と呼ぶが、夏場とは比べ物にならないほど脂がのり美味しくなる。近年は質の高い養殖ものも流通し、手頃な冬の味覚となっている。関東と関西で、出世の名前に違いがある。
〈美味しい食べ方〉
脂ののった寒ブリは刺身もよいが、しゃぶしゃぶでさっぱりと食べるのもまた絶品。
《クエ》
言わずと知れた超高級魚
「欠点は価格だけ!」
数ある高級魚の中でもとりわけ高価な魚のひとつ。気軽に手を出せるものではないが、その旨さは確かに値段に見合う。これほど上品でありながら力強い旨みに満ちた魚はそういない。あまり小型のものは脂と旨みに欠けるため、ある程度育ったものがよい。近年は養殖法も確立され、養殖ものが出回りはじめている。いずれは安価でクエ鍋を楽しめる日が来るかも?
〈美味しい食べ方〉
クエ鍋は肉や出汁も最上級のものだが、皮や唇のゼラチン質が至高。
《トラフグ》
フグの最高峰
「命懸けの美食」
食材として「フグ」といえばまず本種を指す、食用フグの代表。味は極めて上等だが毒性も強いため、免許をもった調理師のいる店で賞味するほかない。「アタれば命にかかわる」ことから隠語で「鉄砲」とも。「てっさ」は鉄砲刺し、「てっちり」は鉄砲ちり鍋の略。毒性ばかりが話題になるが、貝を砕く強力な歯も危険だ。養殖ものは歯を切って出荷される。
〈美味しい食べ方〉
冬はてっちり(鍋)と締めの雑炊が最高。店でしか味わえない贅沢。
《マダイ》
味よし姿よし縁起よし
「食用魚の優等生」
朱色がかった体色と丸みを帯びた豊かな魚体はいかにも日本人好みなルックス。その上「おめでたい」の語呂合わせもあって祝いの席に欠かせない魚となっている。煮ても焼いても生でも旨い。入手しやすく和洋を問わずさまざまな料理に合う懐深い優等生的な食材だ。クロダイなど「◯◯ダイ」という魚は数多いるが、単に「タイ」という場合は本種を指す。
〈美味しい食べ方〉
身だけでなく出汁も旨い。アクアパッツァでスープを味わうのもオツ。
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監修・文=平坂 寛
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」