京都《桃山温泉 月見館》
伏見の名建築で歴史とアートを堪能
後編|天然温泉と銘酒を愉しみ、上質な滞在を。
宇治川が流れる伏見は戦国時代に豊臣秀吉が居城を築き、物流の拠点となった地。そこに佇む「桃山温泉 月見館」が2025年7月、歴史・文化とアート、そして先端技術が融合したホテルに生まれ変わった。今回、実際に編集部が宿泊し、客室やアートギャラリー、天然温泉・スパ、バーなど感性を刺激する滞在についてレポート。その類いまれなる時空間とは?
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天然温泉で
プライベートな寛ぎを

大温泉「浄 Jo」(写真)と中温泉「澄 Cho」はいずれも最大90分の貸し切り制。浄は屋内風呂、豪壮な岩組みの露天風呂に加え、ロウリュが可能なサウナも
桃山温泉 月見館ステイでの大きな楽しみのひとつが、伏見で唯一の天然温泉だ。多くの酒蔵を育んだ名水の地・伏見は地下水が豊富で、敷地内の地下深くから湧き出る源泉は低張性弱アルカリ性冷鉱泉。疲労回復はもちろん、肌にやさしく美肌効果もあるといわれている。館内では内風呂も大温泉・中温泉も、蛇口から出る湯はすべてこの天然温泉のものというからうれしい。

中でも、貸し切り露天風呂で坪庭を眺めながら、ゆったり湯に浸かるひとときは格別。湯上がりには肌に心地よい浴衣をさらりとまとって、露天風呂からすぐのところにある「涼み処」へ。自然の風に吹かれながら天を仰げば、観月の名所ならではの美しい月が眺められることも。

湯上がりには、自然の風に吹かれてほてりを冷ます「涼み処」でひとときを。一部の屋根が抜かれ天空が望めるので、天気のよい日は名月を拝むこともできる。虫の音や心地よいBGMに身をゆだね、ゆるりと過ごしたい
館内には、熟練のセラピストが常駐するサロン「MOMOYAMA ONSEN SPA」も備えている。やさしい香りに包まれながら極上トリートメントを受ければ、心も身体もとろけそう。

好みのアロマオイルを選び、心地よくほぐしてもらえる「MOMOYAMA ONSEN SPA」。経絡アロマオイルマッサージとフェイシャルトリートメント、ヘッドマッサージも組み合わせた贅沢な90分コースなど、多彩なメニューを用意
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酒処・伏見で
珠玉の杯を静かに愉しむ

そして酒処・伏見の銘酒を静かに嗜むなら、バー・ラウンジ「観 KAN」へ。京都の名バー「K6」の西田稔氏が監修を手掛け、西田氏の元で長年修業したバーテンダー・山元裕加さんが洗練のもてなしで迎えてくれる。

25~40年もののシングルモルトのオールドボトルや限定生産のレアボトルを中心に、約50本のウイスキーが揃う。東京や祇園と比べ、ぐっと抑えた価格で楽しめるのも魅力だ。ソン氏収集のヴィンテージを含め80銘柄を超えるワインも
こちらでは、ウイスキーならスコッチや日本の有名銘柄に加え、ほかではなかなか見ないオールドボトルや珍しい国・地域のレアボトルとも出合える。日本酒は、伏見の6つの老舗酒蔵の銘酒が多数スタンバイ。現在、9つの銘酒を使ったオリジナルカクテルも開発中とか。有名カクテルはもちろん、「私をイメージしたカクテルを」などと、遊び心あるオーダーが寄せられることも。

17時スタートのバーは宿泊客でなくとも予約すれば利用できるとあって、オープン以来、地元の名士が続々と訪れ、ボトルキープをはじめているという。鎌倉時代につくられた仏像が据えられた神秘的なラウンジは日中開かれ、ここでオリジナルブレンドのコーヒーをはじめとしたソフトドリンクを楽しむのも一興。「京都の街中の喧騒とは少し離れた静かな場所で、どうぞゆっくりお過ごしください」とバーテンダー・山元さん。

端正な吉野杉の一枚板のカウンター席のほか、個室も備える食事処は、2026年春にオープン予定。現在、宿泊者の朝食はこちらで。地元伏見の老舗料亭による、季節の素材を盛り込んだ朝御膳が振る舞われている
2026年春には食事処として、和食レストランがオープンする予定だ。なぐり加工が足に心地よい床や、栗の木を洒脱に面取りしたクロークなど、随所に趣向が凝らされたしつらえも見どころ。

さらに、ここが指月城の跡地という由緒にちなみ、指月城で秀吉が夢見た理想の茶室をかたちにするプロジェクトも進行中。実現すれば、大人のしっとりとした滞在がより豊穣なものになりそうだ。
古くて新しい名建築、桃山温泉 月見館の進化からまだまだ目が離せない。
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≫公式サイトはこちら
桃山温泉 月見館
住所|京都府京都市伏見区桃山町泰長老160-4
Tel|075-621-7733 客室数|4室 料金|真/1泊1室13万4090円~(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISAほか IN|15:00 OUT|12:00
夕・朝食|和食(食事処※2026年春開業予定)
アクセス|車/名神高速道路京都南ICから約20分、第二京阪道路巨椋池ICから約10分 電車/京阪電気鉄道観月橋駅から徒歩約2分、近畿日本鉄道桃山御陵前駅またはJR桃山駅から徒歩約15分
施設|貸切風呂、食事処、バー、ラウンジ、ギャラリー、スパなど
text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Kenji Okazaki
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」
































