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《魚カタログ》
これ知ってる?実は美味しい魚たち①
|オオサガ / オニダルマオコゼ / アラ / イラコアナゴ

2025.1.11
《魚カタログ》<br>これ知ってる?実は美味しい魚たち①<br><small>|オオサガ / オニダルマオコゼ / アラ / イラコアナゴ</small>

豊かな魚文化が根づく日本。海水魚や淡水魚、魚以外の甲殻類や軟体類まで……。知っているようで知らない、美味しい魚について生物ライターの平坂 寛さんに教えてもらった。街の鮮魚店に並ぶことはまれだが、実は美味しい魚たちも少なくない。そんな「知る人ぞ知る」ちょっとマニアックな良魚たちをご紹介。

平坂 寛(ひらさか ひろし)
1985年、長崎県生まれ。生き物を五感で楽しむスタイルで、生物ライター、YouTuberとしても活動。『釣って 食べて 調べる 深海魚』(福音館書店)など著書多数

《オオサガ》
深海のルビー

「極めつきの高級魚」
水深約1000mの深海底に生息する真紅の巨大メバル。強烈な旨みと甘い脂を純白の身に蓄えており、その味わいたるやあらゆる魚類を見渡してみても最上級のものである。しかし、その稀少性の高さから非常に高価で、大型のものでは1尾あたり10万円を超えることも。その美しさと価値の高さから「深海のルビー」とまで称される。水揚げされてもそのほとんどは小売店などを経ずにハイグレードな飲食店へ直行することもあり、なかなかお目にかかれない。とはいえどうにか、一生に一度は食べておきたい魚である。なお、市場ではメヌケやベニアコウという別名のほうが通りがいい。

〈平坂 寛のオオサガのトリビア〉

別名の「メヌケ」とは「目抜け」を意味する。これは深海から引き上げた際に水圧の急減で眼が出目金のように飛び出すことに由来する。

〈美味しい食べ方〉

丁寧に熟成させたものを刺身で、というのが王道だろう。

《オニダルマオコゼ》
最強の毒魚

「異形! 猛毒! 美味!」
温暖な海に暮らす大型のオコゼ。アンコウ以上に魚らしくない岩のような姿をしている。実際、海底の石に擬態して生活しており、眼前を餌となる生物が通りがかるのを待ち伏せする。その徹底ぶりは凄まじく、至近距離でも見落とすことがあるほど。ただ、恐ろしいことに本種は背ビレのトゲに猛毒をもつ。その毒性は魚類の中で最も強く、人が刺されて死亡した例もある。ただし味は非常によく、沖縄の市場では生きたまま高値で販売されているのを見掛けることがある。漁獲量は少なく産地が限られるため入手は難しい。なお販売時も毒針は処理されていないので扱いには注意が必要。

〈平坂 寛のオニダルマオコゼのトリビア〉

石に擬態している本種は、触っても微動だにしないほど完璧に石になりきってみせる。毒針で武装している余裕か、はたまた役者魂なのか。

〈美味しい食べ方〉

出汁が取れるので鍋や汁に合う。体表に苦みがあるので丁寧に処理する。

個性的だけど、実は旨い!
筆者が沖縄で捕らえたオニダルマオコゼ。岩そっくりに擬態しているため毒針もろとも踏みつけそうになる。まるで生きた地雷だ

《アラ》
クエに負けない「真のアラ」

「名前がややこしい!」
脂がさほど強くのらない淡麗な味わいの白身魚だが、その味のよさは最上級のものである。惜しむらくは西日本では「アラ」といえばクエを指すこともあり、そちらの陰に隠れてしまうのか知名度が不当に低い印象だ。実際はクエにも負けぬ美味な高級魚なのだが。ヒレやエラ蓋に鋭いトゲがあり、刺されるとひどく痛むので取り扱いには注意が必要である。

〈美味しい食べ方〉

身は刺身にすると上品な甘みを堪能できる。頭は蒸物か煮物に向く。

《イラコアナゴ》
マアナゴの代用品?

写真提供=北海道大学総合博物館「みんなの博物館」

「北海道の新名物?」
北国の深海底曳漁で大量に漁獲され、専らマアナゴの代用として加工品原料向けに売買されてきた。ところが近年、新鮮な個体の流通に伴ってその美味しさが周知されはじめたのか、値上がりしつつある。北海道では「オキハモ」の名で新名物化する動きも。口が非常に大きい上にあごの骨格が柔軟で、自身の頭部より大きな餌を丸のみにできる。

〈美味しい食べ方〉

煮穴子や天ぷらにすると食べやすい。大型のものは骨切りする。

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監修・文=平坂 寛
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」

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