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《美味しい魚図鑑》 Vol.8 アジ
味がいいからアジってホント?

2022.3.6
<small>《美味しい魚図鑑》 Vol.8 アジ</small><br>味がいいからアジってホント?
photo by Nishihama

スーパーに並ぶあの魚、この魚。どんな海に生息し、どこで捕れるものが美味しいのか。本当の旬はいつで、どんな料理が合うのか。魚を知り尽くす小川貢一さん監修のもと、日本人なら知っておきたい魚の基本を詰め込みました。

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小川貢一(おがわ・こういち)さん
956年、東京・築地生まれ。仲卸3代目として築地で育つ。魚を知り尽くし、かつて築地で魚料理店の店主を務めた料理人でもある。著書に『本当に美味しい魚の見極め方』など多数

根付きのアジがブランドアジに

日本中の比較的暖かく浅い海に生息するマアジ。外洋で回遊するものと、東京湾や大阪湾など湾内や特定の瀬に居つくものがいる。外洋のアジは筋肉質で痩せているのに対し、瀬で豊富な獲物を食べるアジは脂がのり、「地アジ」、「根付きのアジ」として人気。各地でブランドアジが登場している。

アジの旬は初夏。一本釣りなどで身のしっかりしたものは刺身やタタキで食感を楽しみたい。巻き網漁などで大量に捕るものは身が柔らかくなりがちで、その場合は塩焼きやフライに。巻き網漁は巨大な網で魚群を囲い込む漁だが、旬の一番いいときにアジの群れを追うため、漁場が近いと良質なアジが入ることもある。4〜9月頃島根・浜田沖で、巻き網漁で捕る50g以上のマアジで、平均脂質10%以上のものを「どんちっちアジ」と呼び、近年人気が高い。

<鯵の基礎知識>

マアジ

●科
アジ科

●旬
6〜7月(マアジ)

●名前の由来
味がよいからアジ。群れになって泳ぐことから、漢字のつくりはたくさん入り混じるという意味の「参」。

●魚種
マアジ(キアジ、クロアジ)、
シマアジ、ムロアジ

●地域名、幼名
ホンアジ、平アジ、小さいものを「ジンタ」や「豆アジ」、大きいものを「大アジ」

●選び方のポイント
ヒレがピンと張り、エラが鮮紅色で、ゼイゴと呼ばれるとげ状のウロコがしっかり付いているもの

●主な生息地
北海道南部から東シナ海

●県別漁獲量ランキング(マアジの場合)
長崎:4万7500t
島根:1万4400t
千葉:4200t
宮崎:3600t
愛媛:2700t

Q:美味しいアジの見た目は?
A:小顔で、目とお尻がきれい

大きな痩せ型より、小さくて太っているものを。アジに限らず美味しい魚はみんな小顔だ。鮮度は目とお尻に表れる。目を覆う透明の膜が盛り上がっていれば鮮度がよく、尻ビレの前にある肛門が開いて液体がにじんでいたらNG。

Q:味がいいからアジってホント?
A:実際に旨みの要素が豊富です

江戸時代の政治家で儒学者である新井白石の語源辞典に「アジとは味なり、その味の美なるものをいう」とある。実際にアジは、旨み成分であるアミノ酸やイノシン酸を豊富に含む。

Q:アジの開きの盛りつけ、皮は上か下か?
A:皮目パリッとキープのため皮が上、が基本です

アジの開きは皮を含む身を取って食べて、最後に一番下の骨を残すのが正しい食べ方であり、皮を上に盛りつけるのがスタンダード。皮を下にしたら、パリッと焼けた皮が蒸気で台無しなる。

<column>
全国ブランドアジ選手権

関あじ(大分県)
豊後水道で漁獲され、大分の佐賀関で水揚げされるアジ。この海域は伝統的に一本釣りで、出荷に合わせて活け締めにされる

瀬つきあじ(山口県)
山口県の日本海の天然礁(瀬)にすみつき、豊富で良質な獲物を食べて成長する。体色はやや黄色を帯び「黄アジ」とも呼ばれている

どんちっちアジ(島根県)
島根県西部沖で捕れ、旬の4〜9月は「アジの大トロ」と呼ばれるほど脂がのる。一般的なアジが7%ほどなのに対して10%以上

黄金アジ(千葉県)
東京湾入り口の潮の流れが速い浅瀬にすみ、栄養をたっぷり蓄えている「金アジ」。中でも千葉の金谷港に揚がる「黄金アジ」が人気

<trivia>
アジは青魚じゃないの?

青魚とは便宜上つけられた概念で、その条件もあいまい。「背中から見て青い魚」、「群れで回遊することが多い」、「肉質は赤身の魚が多い」など。その意味でアジは青魚だが、分類上は赤身の魚である。

 

読んで字の如くイワシは弱い?
 
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Vol.7|サバ
Vol.8|アジ
Vol.9|イワシ
Vol.10|イカ

text: Yukie Masumoto 写真提供=国立研究開発法人水産研究・教育機構、
フーズリンク、農林水産省「うちの郷土料理」、小枝圭太(東京大学総合研究博物館)、
標津サーモン科学館、PIXTA
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」

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