市川猿之助がルフィに変身!
シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』
歌舞伎の舞台を映画館で楽しめる「シネマ歌舞伎」。2022年9月の上映作品は『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』だ。今年連載25周年を迎え、8月には新作アニメ映画が公開され大ヒットとなっている国民的人気漫画『ONE PIECE』の世界を歌舞伎化した話題の舞台。歌舞伎ファンも漫画ファンも、映画館で楽しもう。
本作は全国の映画館にて、2022年9月30日(金)から10月6日(木)まで上映予定。観に行く前に、あらすじや作品背景を予習しておこう。
世は大海賊時代。
海賊王を目指す冒険の途中、最愛の兄がピンチに?!
かつて海にその名を轟かせた海賊王ゴールド・ロジャーが遺した大秘宝ワンピースをめぐり、海賊たちが海でしのぎを削る大海賊時代。海賊王を夢見る少年モンキー・D・ルフィは、仲間たちと共に航海を続けている。しかし、シャボンディ諸島での海軍との戦いでルフィと仲間たちは散り散りになってしまう。
ひとりになったルフィは、別の海賊団に属する最愛の兄エースが海軍に捕らえられて処刑宣告を受けたと知り、周囲の協力を得て救出のため脱獄不可能と言われる大監獄インペルダウンへ向かう。苦難を乗り越えようやくエースの幽閉場所へとたどり着くが、エースはすでに海軍本部マリンフォードへと移送された後であった。
刻一刻と迫る処刑時間。エースを救おうとするエースの仲間の海賊団とルフィはマリンフォードへ向かう。しかし海軍には、生い立ちにある秘密を抱えたエースを囮に有力な海賊をおびき出し一掃するという狙いがあり…。
海賊と海軍との間で壮絶な戦いがいま始まる――!
「ONE PIECE」の世界を歌舞伎の舞台で表現!
「ONE PIECE」最大の魅力ともいえるキーアイテム「悪魔の実」は、一度口にすると一生泳げないカナヅチになることを代償に、超人的な能力を授ける海の秘宝。食べた実の種類によって得られる能力は違い、物語の主人公ルフィは幼少期に「ゴムゴムの実」を食べて全身ゴムのゴム人間になっている。ルフィのほかにも、様々な悪魔の実の能力者が登場する。
超人的な能力を持つ海賊と海軍の激しい戦闘など、漫画作品ならではのダイナミックなシーンは歌舞伎の古典的な手法をフル活用で表現している。
本作に登場する歌舞伎の伝統的な演出はいくつかあるが、中でも印象的なのは、俳優の体を吊り上げて観客の頭上を通る「宙乗り」や、本物の水を大量に使った立ち廻り「本水」といったダイナミックな演出。どちらも電力の無い江戸時代にすでに取り入れられていたというのだから驚きだ。
さらに、ひとりの俳優が何役も演じるのも歌舞伎の醍醐味のひとつ。この作品で演出もつとめた猿之助は、ゆく先々で周りを味方につけてしまう魅力あふれる主人公・ルフィを熱演。さらに絶世の美女でルフィに恋する女帝ボア・ハンコック、そしてルフィ憧れの大海賊赤髪のシャンクスと、3役を演じる大活躍だ。一瞬で姿を変える「早変わり」や、各役どころの演じ分けにも注目しよう。
「スーパー歌舞伎」の歴史
もともと「スーパー歌舞伎」は、先代の三代目市川猿之助(現・市川猿翁)が始めた古典芸能化した歌舞伎とは異なる演出による現代風歌舞伎のこと。現在は四代目猿之助が引継ぎ、「スーパー歌舞伎Ⅱ」として常識にとらわれないエンターテインメント満載の新作歌舞伎を世に送り続けている。本作でも主題歌を導入し、上演の途中で観客が立って手拍子で参加できる場面を作るなど、従来の観劇スタイルを覆す型破りな挑戦をして大成功を遂げた。
さらに、「白浪五人男」や「義経千本桜 渡海屋 大物浦」といった歌舞伎の大人気演目のオマージュともいえるシーンも多数。歌舞伎ファンにもうれしい。
これからの歌舞伎を担う存在のひとりである猿之助は、誰よりも観客思い。常識にとらわれず、老若男女、誰でも楽しめる歌舞伎をつくり上げた。漫画「ONE PIECE」と歌舞伎の知識を少しずつ予習しておくとより楽しめるが、自信のない方には同時音声解説のイヤホンガイドアプリもおすすめ。気軽に映画館で楽しもう。
©尾田栄一郎/集英社・スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』
月イチ歌舞伎 2022
『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』
上映日|2022年9月30日(金)~10月6日(木) ※東劇のみ10月20日(木)まで上映
上映館|東劇ほか全国の映画館にて(詳しくはこちら)
料金|一般2200円、学生・小人1500円
出演|市川猿之助、市川右團次、坂東巳之助、中村隼人、市川春猿、市川弘太郎(現・市川青虎)、坂東竹三郎、市川笑三郎、市川猿弥、市川笑也、市川男女蔵、市川門之助、福士誠治、嘉島典俊、浅野和之