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市立伊丹ミュージアム《建築と彫刻の交差展-隈研吾×三沢厚彦×棚田康司》
伊丹市新庁舎ができる過程をひも解く

2022.9.14
市立伊丹ミュージアム《建築と彫刻の交差展-隈研吾×三沢厚彦×棚田康司》<br><small> 伊丹市新庁舎ができる過程をひも解く</small>

兵庫県伊丹市の市立伊丹ミュージアムにて、2022年11月28日に開庁する伊丹市新庁舎を記念した企画展が2022年9月10日(土)~11月6日(日)にかけて開催。設計を手掛けた隈研吾氏、現代彫刻家の三沢厚彦氏と棚田康司氏の資料から見えてくる新庁舎ができるまでの物語とは?

隈研吾が挑戦した、
環境配慮型 次世代省エネの大規模庁舎

兵庫県南東部に位置し、伊丹空港の通称で知られる大阪国際空港などを有する伊丹市。その中心地に建つ伊丹市役所本庁舎は、1972年に建築され、1995年の阪神・淡路大震災を経験。震災をきっかけに定期的に耐震診断調査が行われ、さまざまな検討を重ね、同位置での建て替えが最も優位であると判断された。当初は2021年から2040年の間に検討を行うスケジュールだったが、2016年に発生した熊本地震による当該地域の庁舎などの被災を受けて、地域住民や職員の安全の確保や庁舎機能を継続する重要性などを鑑みて、スケジュールの前倒しを図ることとなった。
そうして2020年1月から約2年半をかけて整備工事が行われ、今年11月28日に伊丹市役所本庁舎はいよいよ開庁を迎える。

快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する石油やガスなどのエネルギー年間消費量をゼロとすることを目指した建物を指す「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」のうち、50%省エネを達成する「ZEB Ready」にて建てられ、床面積2万㎡を超える大規模庁舎では、西日本初の新築ZEB庁舎となる。また環境省が実施する「レジリエンス強化型ZEB実証事業」において同規模庁舎では、全国初となる。

「環境に配慮した庁舎」をひとつのテーマにした新庁舎は、基本設計と実施設計監修、工事監理を隈研吾氏、実施設計・施工を大成建設が担当した。
基本設計を進める上で隈氏は「既存庁舎を生かしながらの建て替え、まちづくりや景観に配慮した意匠、BCP(事業継続計画)や免震といった庁舎建て替えが直面するさまざまな課題をクリアしつつ、2万㎡を超える大規模庁舎としてZEB Readyを達成する」ことを今後の庁舎建築において大きな意義のあるものとし、実際に大規模庁舎としては記録的な環境に配慮された建物となった。

新庁舎誕生までの物語をひも解く

棚田康司 《薔薇と乙女》構想スケッチ Courtesy Mizuma Art Gallery

11月28日に開庁を迎える新庁舎を記念して、市立伊丹ミュージアムにて開庁までの過程をひも解く企画展が開催される。
新庁舎の設計を手がけた建築家の隈研吾によるスケッチや、初期段階のマケットなどの資料を通して新庁舎がどのような過程を経て完成を迎えるのかを紹介するとともに、現代彫刻家の三沢厚彦と棚田康司が建設地にあったクスノキを活かして制作し、新庁舎内に設置される新作の彫刻計6点とスケッチやドローイングなどの資料も初公開される。

隈 研吾(くま けんご)
1954年、神奈川県生まれ。東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立。30カ国以上でプロジェクトを進行し、自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案。日本建築学会賞、毎日芸術賞、芸術選奨文部科学大臣賞 、国際木の建築賞(フィンランド)、国際石の建築賞(イタリア)などを受賞。現在、東京大学特別教授・名誉教授。

三沢厚彦(みさわ あつひこ)
1961年、京都府生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。樟を素材に様々な動物の姿を等身大に彫り出した「ANIMALS」シリーズを2000 年から制作し、伊丹市立美術館を含む全国5 館で個展を2007~2008 年に巡回開催して以降、各地の美術館で個展を開催。第20 回平櫛田中賞(2001 年)、第41 回中原悌二
郎賞(2019 年)等を受賞。現在、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科特任教授。

棚田康司(たなだ こうじ)
1968年、兵庫県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。日本古来の技法「一木造り」を用い、樟を素材に
神秘的な表情を特徴とする少年少女の像や女性像を制作。伊丹市立美術館で開催した個展「たちのぼる。」(2013年)をはじめ全国各地の展覧会に出品。第8回岡本太郎記念現代芸術大賞特別賞(2005年)を受賞。現在、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科客員教授。

隈研吾《Itami City Hall》スケッチ
三沢厚彦 《Animal 2022-01》構想スケッチ
三沢厚彦 《Dog 2022-01》構想スケッチ
三沢厚彦 《Bird 2022-01》構想スケッチ
棚田康司 《ヴィオラ》構想スケッチ Courtesy Mizuma Art Gallery
棚田康司《暦のトルソ 桜の少女》 構想スケッチ Courtesy Mizuma Art Gallery

伊丹市新庁舎開庁記念
建築と彫刻の交差展-隈研吾×三沢厚彦×棚田康司

会期|2022年9月10日(土)~11月6日(日)
会場|市立伊丹ミュージアム
住所|兵庫県伊丹市宮ノ前 2-5-20
時間|10:00〜18:00 ※入館は17:30まで
休館日|月曜(祝日の場合は開館、翌平日休館)
料金|一般500円、大高生300円、中小生200円
Tel|072-772-5959
https://itami-im.jp

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