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新潟―佐渡を「水」でめぐる
|水がもたらした文化の魅力に触れる

2022.10.5
新潟―佐渡を「水」でめぐる<br><small>|水がもたらした文化の魅力に触れる</small>

日本有数の米どころであり、紺碧の日本海の恵みや四季を通じて大地が育む青果、そして国内を代表する銘醸地として名高い新潟県は、広大な県土にまたがる大自然が育んだ食や伝統工芸、大地の芸術祭に代表される里山アート、文化遺産など、多様な文化が根づいている。今回、それらを多面的にひも解くべく、3つのテーマで新潟―佐渡をめぐった。新たな新潟のストーリーを再発見する旅へ――。

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文化と交流を生んだ船の道
(佐渡市〜出雲崎町)

▼佐渡エリア

現在も続く神事の「やわらぎ」(上写真)など、全国から集結した鉱山労働者によって、佐渡には独自の信仰や芸能がもたらされた

大地コースでも紹介した佐渡金銀山。その文化を語る上で、「水」というキーワードも外せない。海水面以下に達していた坑道での採掘は、湧出する地下水を排水しなければ産出量が伸び悩む。そこで5年の歳月をかけて手掘りで約1㎞にも及ぶ「南沢疎水道」を開削。同時に6カ所から開削されたが、貫通点の誤差は1m足らずという、当時の高精度な測量技術には驚かされる。さらに、内部にらせん状の羽根を取りつけた木筒で水をくみ上げ、後に水田にも利用された「水上輪」の技術や、切り出した上砂を山裾に落とし、堤に溜めた水を流し底に残った砂金を採取する。西三川砂金山の「大流し」など、目的ごとに知恵と工夫を凝らした、知られざる水利技術が佐渡金銀山の隆盛に貢献していた。

南沢疎水道
佐渡金銀山の鉱山内に溜まった水を排水するため、鑚(たがね)と鎚(つち)だけの手掘りでつくられた地下排水路
資料館(上写真)では、金鉱石の採掘から佐渡小判をつくるまでの工程を、模型でわかりやすく説明。最先端のMR技術で楽しむ「アイランド・ミラージュ」も人気

史跡 佐渡金山
住所|新潟県佐渡市下相川1305
Tel|0259-74-2389
営業時間|8:00~17:30(4~10月)、8:30~17:00(11~3月)
※最終入場は30分前
料金|アイランド・ミラージュ/大人3000円、中小生2550円、道遊坑・宗太夫坑/大人900円、中小生450円(共通券は大人1400円、中小生700円)、ガイド付き山師ツアー/大人2400円、中学生1200円(4~11月)
休館日|なし
www.sado-kinzan.com

西三川砂金山の、山を切り崩す砂金採り「大流し」の様子を、プロジェクションマッピングと映像で再現
3面スクリーンの多角的な映像で、鉱石の採鉱から小判製造までの一貫した生産システムを紹介している

きらりうむ佐渡
約400年にわたって金78t、銀2330tを産出した佐渡金銀山のガイダンス施設。展示室では、4つのシアターがあり、3面スクリーンやプロジェクションマッピングなどを用いて、佐渡金銀山の魅力や価値をわかりやすく紹介。

住所|新潟県佐渡市相川三町目浜町18-1
Tel|0259-74-2215
開館時間|8:30~17:00(受付は16:30まで)
入館料|無料(展示室観覧は大人300円、小・中学生150円)
休館日|年末年始
www.city.sado.niigata.jp/site/mine/5306.html

佐渡相川ふれあいガイド
料金|1時間2500円~
予約期限|1週間前
申込先|佐渡観光交流機構 相川観光案内所
Tel|0259-74-2220

老舗鮮魚店が営む食堂兼居酒屋。築60年の古民家を生かした空間では、小木港で一年を通して捕れるサザエや鯵をはじめ、多種多彩な旬の新鮮魚介が手頃に味わえる。その海の幸を心ゆくまで堪能できる海鮮丼(1600円)や、金山の宝船定食(2400円)はぜひ

佐渡金山をめぐった後は、「持田家」へ。相川で半世紀以上営む「持田鮮魚店」直営の食堂では、変化に富んだ佐渡の海の恵みが四季折々の魚介料理を通じて堪能できる。

持田家・持田鮮魚店
住所|新潟県佐渡市相川一町目7
Tel|0259-67-7268
営業時間|11:30~14:00(L.O.13:30)、18:00~21:00(L.O.20:30)
定休日|日曜夜、月曜
www.mochidaya.net

展示館に鎮座する全長23.75mの千石船「白山丸」の実物大展示(上写真)は、まさに圧巻!その迫力とともに細部のディテールで当時の高度な造船技術を伝えている。民俗博物館では昭和30年代の漁具や農具、船大工道具など3万余の貴重な民俗資料を展示。

そして、水という視点で見逃せないのが北前船による水運文化だ。北前船とは、江戸時代半ばから明治にかけて大阪と北海道を結び、運送に加えて寄港地で商品を売買していた〝動く商社〟。新潟本土や佐渡には多くの寄港地があり、人やモノが集まり独自の文化が形成されていた。そのひとつとして栄えた小木の宿根木集落には、船大工の技術を結集した当時の民家が軒を連ね、「佐渡国小木民俗博物館」では、当時の図面から再現した千石船「白山丸」が実物大の迫力でその文化をいまに伝えている。

佐渡国小木民俗博物館
住所|新潟県佐渡市宿根木270-2
Tel|0259-86-2604
開館時間|8:30~17:00
入館料|大人500円、中小生200円
休館日|なし(冬季は月曜日休館)
http://shukunegi.com/spot/ogiminzokuhakubutsukan

佐渡小木ふれあいガイド
料金|1時間2500円~
予約期限|1週間前
申込先|佐渡観光交流機構 南佐渡観光案内所
Tel|0259-86-3200

宿根木集落
造船業で繁栄し、最盛期には佐渡の富の1/3を集めた集落。約1haの土地に高密度でひしめく110棟の建造物群は、狭小地に工夫を重ねて建てた舟形の「三角家」や軒下の飾りなど船大工独自の技術を、ノスタルジックな情景でいまに伝えている。

住所|新潟県佐渡市宿根木416
http://shukunegi.com
※見学する場合は、町並み保存協力金(100円程度)の協力をお願いいたします。

▼出雲崎エリア

「妻入り」とは、切妻屋根両端の三角形になっている面に向かって出入り口を設けた建築様式のこと。その伝統的な外観や間取りを再現した観光交流施設で、館内では妻入りの建築様式や出雲崎の観光名所の情報を発信している。無料の休憩所としても利用可

新潟本土の寄港地であり、佐渡からの金銀荷揚げ港として栄えたのが出雲崎だ。ここは、中山道と北陸道を結ぶ北国街道の宿場町としても発展を遂げ、天領として越後一の人口密度を誇った。現在も、間口が狭く奥行きの長い「妻入り」構造の家屋が約3.6㎞にも連なり、当時の情景を風情豊かに伝えている。また、中越の政治経済だけでなく文化の中心地でもあった出雲崎は、生涯多くの詩歌を詠み、その遺墨が「日本書道の究極美」と称された僧侶・良寛を生み、かの松尾芭蕉が『奥の細道』で「荒海や佐渡によこたふ天河」の名吟を詠んだ地としても名高い。

北国街道妻入り会館
住所|新潟県三島郡出雲崎町大字尼瀬166
Tel|0258-78-3700
営業時間|9:00~18:00(4~9月)、9:00~17:00(10~3月)
入館料|無料 
休館日|なし

越後出雲崎 天領の里
佐渡を望む海岸線に沿って造成された観光複合施設。2/3スケールの江戸時代の御用船や天領時代の商家などを展示する時代館は、華やかなりし時代の出雲崎をリアルに再現。敷地内の「夕凪の橋」から望む夕日は、世界で一番大きいと称されている。

住所|新潟県三島郡出雲崎町尼瀬6-57
Tel|0258-78-4000
営業時間|物産館/9:00~17:00、レストラン「陣や」/11:30~15:00、時代館/9:00~17:00(3月下旬~11月)、10:00~16:00(12~3月上旬)
休館日|水曜、年末年始
http://tenryo.pinoko.jp/

良寛記念館
江戸時代を代表する禅僧であり、詩人、歌人、書家としても名高く、温厚な人柄で「良寛さん」と呼ばれて親しまれた偉人の記念館。建築家・谷口吉郎が手掛けた国登録有形文化財建築の中で、貴重な良寛の遺墨や縁者の作品、巨匠の絵画などを展示している。

住所|新潟県三島郡出雲崎町米田1
Tel|0258-78-2370
開館時間|9:00~17:00
休館日|水曜(11~3月。祝日の場合は翌日休)、年末年始
www.ryokan-kinenkan.jp

▼水でめぐるおすすめ紹介

DAY1
浜焼きを食べながら周辺散策(新潟県三島郡出雲崎町内
↓車5min.
「北国街道妻入り会館」を見学~妻入りの街並み散策
↓車5min.
「越後出雲崎 天領の里」で昼食~館内見学
↓車10min.
「良寛記念館」を見学
↓車55min.
岩室温泉街で宿泊(新潟県新潟市西蒲区

DAY2
「新潟市歴史博物館みなとぴあ」を見学
新潟県新潟市中央区柳島町2-10 Tel|025-225-6111)
↓徒歩5min.
「湊稲荷神社」を散策
新潟県新潟市中央区稲荷町3482 Tel|025-222-6549)
↓車10min.
新潟港から両津港へ(ジェットフォイル67min.)
↓車65min.
「佐渡国小木民俗博物館」を見学~「宿根木集落」を散策
↓車3min.
「御宿 花の木」宿泊
新潟県佐渡市宿根木78-1 Tel|0259-86-2331)

DAY3
「きらりうむ佐渡」を見学
↓車10min.
「史跡 佐渡金山」を見学
↓車10min.
「持田家・持田鮮魚店」で昼食
↓車10min.
両津港から新潟港へ(ジェットフォイル67min.)

古町・鍋茶屋通りを散策~新潟市内で宿泊

DAY4
「旧小澤家住宅」を見学
新潟県新潟市中央区上大川前通12-2733 Tel|025-222-0300)
↓車3min.
「日和山展望台」で絶景を望む
新潟県新潟市中央区西船見町
↓車5min.
「港料理 魚や片桐寅吉/港茶屋」で昼食
新潟市中央区上大川前通12-2742 Tel|025-201-8082)

信濃川や新潟市街を散策

 

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《新潟—佐渡をめぐる》
1|大地でめぐる
2|水でめぐる
3|学びでめぐる

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年10月号「旅で、ととのう。/西九州新幹線開業!特別企画『九州』」

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