TRAVEL

新潟―佐渡を「大地」でめぐる
|地の利、風土が育んだ食、産業、アート

2022.10.5
新潟―佐渡を「大地」でめぐる<br><small>|地の利、風土が育んだ食、産業、アート</small>
イリヤ&エミリア・カバコフ『棚田』(大地の芸術祭作品)

日本有数の米どころであり、紺碧の日本海の恵みや四季を通じて大地が育む青果、そして国内を代表する銘醸地として名高い新潟県は、広大な県土にまたがる大自然が育んだ食や伝統工芸、大地の芸術祭に代表される里山アート、文化遺産など、多様な文化が根づいている。今回、それらを多面的にひも解くべく、3つのテーマで新潟―佐渡をめぐった。新たな新潟のストーリーを再発見する旅へ――。

出雲崎から望む佐渡島。独自の文化が形成され、日本の原風景が広がる本州最大の離島は、東京から新幹線と高速船で最短3時間30分とアクセスがよく、リピーターも多い。© KUWAYAMA AKIRA /amanaimages

多種多彩な海産物と水平線に沈む美しい夕陽を生み出す日本海、12座の日本百名山がそびえる雄大な山々、悠久の時をかけて肥沃な新潟平野を育んできた大河など、四季折々で表情を変える大自然に恵まれた新潟県。上越・中越・下越・佐渡の4エリアに分かれるこの地は、風土に根づいた多様なカルチャーにあふれている。日本一の生産量を誇るコシヒカリをはじめとする食文化、世界トップレベルの金属加工技術を誇る燕三条のものづくり、ユネスコ世界遺産登録を目指す「佐渡島の金山」や世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」……。

それらはテーマをもって旅することで、連綿と受け継がれている物語を立体的かつ多面的に楽しむことができる。そこで今回、新潟本土―佐渡に息づく魅力を、3つのキーワードでひも解いていく。

工芸や産業、食を育み、アートとも一体となる「大地」、人・モノ・文化が交流する礎を築いた北前船をはじめとした「水」。そして、日本ではじめて世界ジオパークに認定された糸魚川の自然や、佐渡の酒蔵によるサステイナブルな酒造りなど、長期滞在によって得られる深い「学び」。テーマごとにフォーカスすることで、各エリアに点在するスポットは“面”となり、訪れるたびに知られざる新潟の魅力に出合える――。そんな発見に満ちた旅を紹介していく。

山が生んだ生きる芸術をめぐる
(十日町市~燕市~佐渡市)

▼十日町市エリア

現在開催中の「大地の芸術祭」を代表する常設作品のひとつ。展望台から眺めると、美しい棚田の中に農作業をする人々をかたどった彫刻と、季節ごとの稲作の情景を詠んだ詩が立体絵本のように浮かび上がり、心が揺さぶられる。

新潟の“大地”の魅力に触れる上で必ず訪れたいのが「大地の芸術祭」だ。十日町市・津南町からなる越後妻有地域を舞台にした世界最大級の国際芸術祭は、地域住民と国内外の著名なアーティストが共創することで風土の営みをダイナミックに伝えている。今回は300点以上の作品が公開されるなど、至るところで里山アートの世界に触れられる。

イリヤ&エミリア・カバコフ『棚田』
住所|新潟県十日町市松代3743-1 まつだい「農舞台」外構
時間|10:00~17:00(11月13日まで~18:00)
公開期間|~11月13日(日)
休業日:火・水曜(祝日は除く)
www.echigo-tsumari.jp

十日町市博物館
十日町市の多様な歴史と豊かな大地の文化を伝える博物館。日本唯一の縄文土器の国宝・笹山遺跡火焔型土器群を360度方向から鑑賞できる「国宝展示室」や、縄文人の生活の疑似体験、「織物の歴史」や「雪と信濃川」など“体感型”の展示は一見の価値あり。

住所|新潟県十日町市西本町1-448-9
Tel|025-757-5531
開館時間|9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料|一般500円(中学生以下は無料)
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)
www.tokamachi-museum.jp

十日町産業文化発信館 いこて
十日町市の生産者から仕入れる安心安全な食材や伝統的な調味料を現代のアプローチで仕立てた家庭料理が味わえる。雪国の象徴であるかまくらをイメージし、大きな梁とせり出した桁が大きな屋根を支える、新潟の伝統的な「せいがい造り」の空間にも注目。

住所|新潟県十日町市本町5-39-6
Tel|025-755-5595
営業時間|ランチ11:00~14:00(L.O.)、カフェ11:00~17:00、ディナー17:00~22:00(L.O.21:00)
※ディナーは日・水曜休
定休日|月曜
https://ikote.net

▼燕三条エリア

1816年創業。一枚の銅板を鎚(つち)やたがねで打ち延ばし、打ち縮めて仕上げる鎚起銅器の伝統技術を継承する老舗工房。深く艶やかな「紫金色」など独自開発した着色技法でつくる、時代に合わせた製品は、芸術品のような輝きに満ちている。

新潟ならではの土壌は、燕三条を世界有数の金属加工の街へと育んだ。江戸時代、洪水が多い地勢がゆえに、農家の副業としてはじまった和釘生産に端を発し、弥彦山から採れる銅を用いた鎚起銅器の製造が盛んに。その技術を応用し、洋食器などの多様な金物がつくられてきた。世界の目利きも愛用する銅器をつくる「玉川堂」では、200余年にわたり受け継がれる伝統技術を見ることができる。ものづくりの魅力を地産の美食とともに味わいたい人は「Tsubame sanjo Bit」へ。うつわやカトラリー、調度品すべてに新潟の匠のプロダクトを取り入れた空間では、この地の恵みを五感で堪能できる唯一無二の体験が約束されている。

玉川堂 燕本店
住所|新潟県燕市中央通2-2-21
Tel|0256-62-2015
営業時間|8:30~17:30
※工房見学は要問合せ
定休日|日曜、祝日
www.gyokusendo.com

Tsubamesanjo Bit 燕三条本店
燕三条・新潟の魅力を世界に発信する名店。県産食材を多用し、世界に誇る燕三条の匠たちと共創した空間やうつわで楽しむ独創的な美食は、国内外のフーディを魅了する。プロジェクションマッピング映像とともに五感で味わう新感覚の食体験をぜひ。

住所|新潟県三条市須頃1-17 燕三条地場産業振興センター1F
Tel|0256-46-0680
営業時間|ランチ11:30~15:00(L.O.14:30)、ディナー18:00~23:00(L.O.21:30)
定休日|水曜(祝日の場合は翌日休)
https://tsitalian-bit.com/main

▼佐渡エリア

佐渡金銀山のシンボル。山頂から深さ74mまで手掘りされた露頭掘り跡「道遊の割戸」の壮大さに目を奪われる

佐渡島の伝統的工芸品「無名異焼」。佐渡で採れる酸化鉄を含んだ赤土を使用し、独特の窯変美は使用するほどに光沢を増す。

世界文化遺産候補地として注目を集める「佐渡島の金山」は西三川砂金山と相川・鶴子金銀山で構成される。

江戸幕府の天領として奉行所が置かれ、伝統的な手工業で高純度の金を生む生産技術と、高度に専門化された大規模な生産体制が整備された。

原料の採掘と貨幣の製造が同じエリア(地域)で行われた、世界でも類を見ない金生産システムは、明治時代には西洋人技術者を招いて機械化が図られ、日本の近代化に多大な貢献を果たしたもの。

江戸初期に開発された手掘り坑道の一部をめぐる「宗太夫坑 江戸金山絵巻コース」では、手掘りや風送り、測量など『佐渡金銀山絵巻』に描かれた採掘作業を再現

現在も、良好な状態で採掘場などの遺跡や奉行所跡、集落跡が残されているが、それらを訪れる前に見ておきたいのが「きらりうむ佐渡」の映像だ。こちらでは佐渡金銀山の魅力や価値を大型映像やプロジェクションマッピングで紹介し、わかりやすく全体像を把握することができる。その上で、江戸時代に掘られた実際の坑道の一部を公開し、人形や道具を配して当時の情景をリアルに再現した「宗太夫坑」を見学すれば、より理解が深まることは間違いない。

史跡 佐渡金山
住所|新潟県佐渡市下相川1305
Tel|0259-74-2389
営業時間|8:00~17:30(4~10月)、8:30~17:00(11~3月)
※最終入場は30分前
料金|アイランド・ミラージュ/大人3000円、中小生2550円、道遊坑・宗太夫坑/大人900円、中小生450円(共通券は大人1400円、中小生700円)、ガイド付き山師ツアー/大人2400円、中学生1200円(4~11月)
休館日|なし
www.sado-kinzan.com

古民家空間 京町亭
江戸時代の古民家で、佐渡・相川の絶景を一望しながら食事ができるカフェ。飼料にこだわる循環型農場で上質な肉質に育てられた「島黒豚のハンバーグ」や、約1700種の植物が自生する島のハーブを使用したドリンクなど、佐渡の大地の魅力が満喫できる。

住所|新潟県佐渡市相川八百屋町13
Tel|0259-67-7538
営業時間|ランチ11:30~14:30(L.O.14:00)、カフェ14:00~17:00(L.O.16:00)、ディナー18:00~22:00(L.O.21:00)
※ディナーは要予約
定休日|火・水曜(祝日の場合は営業)
http://kyoumachi.xsrv.jp

椿屋陶芸館
1819年に製造がはじまり、島外持ち出し禁止の赤土で作陶する幻の陶器・無名異焼(むみょういやき)を中心に、佐渡で活躍する陶芸家の作品を一堂に集めた陶芸のアンテナショップ。作品の購入はもちろん、無名異焼の手造り体験(要予約)も楽しめる。

住所|新潟県佐渡市貝塚1111-1
Tel|0259-63-5555
営業時間|10:00~16:00(椿茶屋は11:00~15:00)
定休日|水曜、冬季
www.sado-tsubakiya.com

▼大地でめぐるおすすめ紹介

DAY1
「清津峡渓谷トンネル」でアート鑑賞
↓車40min.
「十日町産業文化発信館 いこて」で昼食
↓車5min.
「十日町市博物館」見学
↓車25min.
まつだい「農舞台」及び周辺散策
↓車20min.
松之山温泉郷で宿泊 ~ 「美人林」を散策
新潟県十日町市松之山

DAY2
「Tsubamesanjo Bit 燕三条本店」で昼食
↓車5min.
「玉川堂 燕本店」で工房見学
↓車10min.
「燕市産業史料館」見学 ~ 新潟市内で宿泊
新潟県燕市大曲4330-1 Tel|0256-63-7666)

DAY3
新潟港から両津港へ(ジェットフォイル67min.)
↓車45min.
「古民家空間 京町亭」で昼食
↓車45min.
「きらりうむ佐渡」を見学
↓車10min.
「史跡 佐渡金山」を見学
↓車5min.
「北沢浮遊選鉱場」を散策
↓車10min.
相川温泉で宿泊 ~ 海岸の夕日を見る

DAY4
京町通りを朝散歩
↓車30min.
「佐渡うどん 蒼囲」で昼食
新潟県佐渡市千種乙153-1 Tel|0259-67-7678)
↓車5min.
「椿屋陶芸館」で買い物
↓車20min.
両津港から新潟港へ

 

≫次の記事を読む
 
  

 
 
新潟、佐渡島をもっと知りたい!
 
≫公式サイトはこちら

 

《新潟—佐渡をめぐる》
1|大地でめぐる
2|水でめぐる
3|学びでめぐる

text: Ryosuke Fujitani photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2022年10月号「旅で、ととのう。/西九州新幹線開業!特別企画『九州』」

新潟のオススメ記事

関連するテーマの人気記事