TRADITION

<世界遺産・仁和寺で特別鼎談 >
日本茶、文化財……
日本文化を未来につなぐ

2019.5.23 PR
<世界遺産・仁和寺で特別鼎談 ><br>日本茶、文化財…… <br>日本文化を未来につなぐ
特別鼎談を行った仁和寺は、平安時代の888(仁和4)年、宇多天皇により創建。醍醐天皇に譲位後、落飾した宇多法皇は904(延喜4)年に仁和寺内に御座所(御室)を築いた。
その後、第30世まで約1000年にわたり皇室出身者が門跡を務め、門跡寺院の中で第一位の格式を誇る

創建時の元号「仁和」を名にもつ仁和寺は1000年超の歴史ある古刹。
悠久の時を感じる雄大な境内で仁和寺第51世門跡の瀬川大秀さん、日本茶インストラクターのブレケル・オスカルさん、伊藤園の倉持公一さんが、日本が誇る茶と文化について語った。

<写真左から>
仁和寺第51世門跡
瀬川大秀さん
愛媛県出身、1963年得度、1970年高野山大学卒業。宗会議員などを経て
2010年仁和寺執行長及び真言宗御室派宗務総長に、2018年第51世門跡及び同派管長に

日本茶インストラクター
ブレケル・オスカルさん
スウェーデン出身。高校時代に日本茶に魅せられ、日本茶専門家を目指し来日。
2014年に日本茶インストラクターの資格を取得し、国内外で日本茶の魅力を伝える

伊藤園 マーケティング本部 緑茶ブランドグループ
倉持公一さん
伊藤園ティーテイスター。すがすがしい澄んだ甘みですっきりした飲み心地の
「お~いお茶」や宇治抹茶を使った「抹茶入りお~いお茶」を開発

鼎談の様子を伝える映像も公開中!

長い歴史、文化を伝える人々の軌跡 その想いを受け継ぐ

倉持 本日は日本で一番早い新茶、種子島で採れた「走り」、その中でも一番早い「大走り」のお茶をお持ちしました。鮮度のよいものを飲んでいただきたくて、浅蒸しのものを。

瀬川 美味しいですね。若葉の香りが素晴らしい。爽やかな感じが伝わり、力もありますね。

鼎談の日に用意されたのは、 種子島産の「さえみどり」 (やぶきたとあさつゆを掛け合わせた品種茶)の大走り新茶。
浅蒸しの茶葉は、 鮮やかな緑色と新芽らしい 爽やかな香りが印象的

ブレケル 強く緑を思わせる香り。ほかの茶種よりも、日本の緑茶は茶の木の自然な香りが生かされているように思います。それを最も感じられる新茶を日本のお水で淹れていただけることが、とてもうれしいです。それも仁和寺で。

瀬川 仁和寺は、日本茶発祥の地といわれる高山寺とも深いゆかりがありましてね。かつてはお茶の木を栽培していたと聞いています。茶室もふたつございます。

倉持 お茶の歴史は約400年ごとに革新的なことが起きているそうですね。800年代に中国からお茶の種がやってきて、1200年前後に京都でお茶の栽培がはじまり、1600年代の江戸時代にいま我々が飲んでいるような煎茶の製法が完成。そして2000年前後に缶入りやペットボトル入りなど手軽に飲めるお茶が生まれました。平成とともに歩んで今年30周年を迎えた「お〜いお茶」は新しいかたちですが、中身は昔と変わらないお茶。子どもさんや忙しい親御さんなどあらゆる方に飲んでいただこうとつくってきたお茶ですが、長いお茶の歴史を想うと、思わず身が引き締まりますね。

瀬川 いまは当たり前のペットボトルのお茶も、生み出すまでには相当の苦労がおありだったでしょう。伝えるには、時代に合ったかたちを考えていくことも大事ですね。お茶をいただくことによって得られる安らぎ。人間としての本質的な部分を与えるとても大切な役目を、お茶は果たしていると思います。科学が進んでも、これは永遠に残っていくのでは。

適温に冷ました湯を急須に入れ、茶葉のエキスを浸出させた「さえみどり」。
美しい水色を見せる茶を倉持さんが丁寧に回し注ぐ
遼廓亭、東南の二畳半台目の茶室。壁は寸莎(すさ)入りの錆壁、天井は棹縁に杉のへぎ板、竹垂木に竹小舞の化粧屋根裏を合わせる

次世代に伝えたい「本質」

瀬川 仁和寺も変わらないもの、変わってはいけない本質的なものを大切にし、守り伝えていきたいと思っております。歴史は文化を運ぶもの。文化を伝えた先人の軌跡・努力を知っていただくために、松林庵(しょうりんあん)という宿泊施設にお泊まりいただき、朝のお勤めや伽藍内のご案内などを通じて、仁和寺に深く触れてもらう文化体験もはじめています。宇多天皇は譲位後に出家し、法皇として仁和寺に入られました。八角円堂建立の願文は「いま仏の子となり善を修し、あまねく他を利する」。つまり今後は人々の幸せのためにだけ祈ると誓われたわけです。1000年の歴史を伝えることは、その思いを伝えていくことだと思います。

ブレケル 今朝はじめてお勤めに参加したのですが、威厳ある金堂に入った途端空気が変わった気がしました。さらにお経を聞いているうちに、周りの世界がまるで存在せず「いまここだけ」というような不思議な感覚に。無になる、というのでしょうか。門やお寺全体にもそんな雰囲気を感じます。

瀬川 仁和寺は非常にゆったりした境内で、建物も非常にシンプルなラインで構成されています。だから見ていて飽きがこない。派手さはないのですが、そこには味わい深い奥行きと洗練があります。国宝中の国宝ともいわれる金堂はもとは御所の紫宸殿(ししんでん)。3代将軍・徳川家光公による仁和寺復興のときに移築されたもので、いまでは日本最古の紫宸殿建築といわれています。

一説に江戸中期の絵師・尾形光琳の屋敷から移築されたという茶室・遼廓亭。
池泉回遊式庭園が奥へと続き自然に抱かれるような趣
桜の木々からのぞく五重塔(重文)は1644(寛永21)年建立。
江戸時代初期の建築らしく五層の幅が揃った泰然たる姿

倉持 広いゆったりした境内に、心も解き放たれますね。宸殿の中からお庭を見たとき、自然につくられたものだろうか? と思うくらい、伸びやかで美しい景色に感動しました。

瀬川 自然と一体となった眺めを目にしますと、昔の方はよく考えたものだと感心しますね。退位後の宇多法皇もここでゆったり過ごされたのでしょう。

ブレケル お茶を中心に、たくさんの人が集まっておしゃべりも?

瀬川 そうでしょうね。この茶室は、もと尾形光琳の屋敷から移築されたものなのですよ。江戸時代、門前には光琳が暮らし、野々村仁清が御室窯(おむろがま)を開き、仁和寺は一大文化サロンとなったようです。

茶がつなぐ「和」の文化

ブレケル この茶室で飲むと普段よりもお茶が美味しい。お茶による安らぎは人間が自然に戻るひとつの手段ですが、街中から離れた仁和寺では本当に心が落ち着きます。紅茶やウーロン茶と比べ日本茶は素直で自然そのもの。繊細な味わいだけに、すぐ「すごい!」とは思わないかもしれませんが、何度か飲むうちにその魅力に気づかされます。素材を大事に、個のインパクトではなく調和を重んじる和食や日本のデザイン、わび・さびなどの考え方も日本茶に投影されていると思います。海外ではなかなかないアプローチですが、だからこそおもしろい。仁和寺にも同じ趣を感じます。

瀬川 日本文化の特質をよくつかんでくださっていますね。ぜひ仁和寺をかわいがり、お守りいただけたら。便利で合理的な世の中では、お茶を飲んでほっとする時間はますます必要になる。こういうところで、ゆったり五感を休ませていただいたらと思います。

倉持 我々もお茶で世界をつないで、皆さんに笑顔になっていただく一助になりたいと考えています。お茶を通じて人と人がつながり、ブレケルさんのように世界の方ともつながる。過去・現在・未来という時間も、つながります。

ブレケル 人は生まれて歳を取り、必ず死んでゆくものですが、こうして何百年前からある建物で何百年も前の人の活動に触れると、自分が死んでも生き残る文化の存在・意味について考えさせられます。自分という存在の小ささとともに、天皇陛下や将軍がかかわったお寺でお茶を飲めることの尊さも。そんなことを感じながら、今日一日を過ごしました。

瀬川 最近若い人が本当にお茶を飲まなくなってきたでしょう。お二人には、ぜひお茶の魅力を伝えていただきたいですね。
倉持急須でお茶を淹れない方が増えていますが、本来のお茶の文化も大切にしたいと社員皆で学んでいます。ティーテイスターという社内資格を取った者は学校や公民館あるいは店舗で、美味しいお茶の淹れ方を伝えたり。一本のお茶の木から緑茶、紅茶、ウーロン茶などさまざまなお茶が生まれます。そして緑茶の中でも煎茶からほうじ茶、玄米茶、抹茶と幅広い楽しみ方があり、お茶を飲めばほっとできたり、リフレッシュしたり。そうしたお茶のもつ豊かな価値を、一人でも多くの方に伝えていきたいと思っています。

瀬川 新元号が「令和」になり、年号をいただいたお寺として重々しく受け止めています。仁和寺の「和」が入ったことはうれしく、「和」はまさに日本の心。決して変わらない、変えてはいけないものを仁和寺も世界に発信していきたいと思っております。そしてお茶を囲み、和をなす文化をともに広めて参りましょうね。

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仁和寺
住所:京都府京都市右京区御室大内33  Tel:075-461-1155
拝観時間:9:00 ~ 17:00(最終受付16:30)、12 ~ 2月9:00 ~ 16:30(最終受付16:00)
拝観料:御殿500円、伽藍特別入山500円、茶室(遼廊亭・飛濤亭)1000円(別途拝観料要、5名以上で7日前までに要予約)

伊藤園では「お~いお茶」が日本文化の架け橋となるプロジェクトが始動!

5月からのイベントに先駆けて、京都・仁和寺でお茶とお菓子を配布。
新元号を祝うスペシャルパ ッケージの「お~いお茶」と、仁和寺御用達の老舗和菓子店「亀屋重久」の麩焼き煎餅「おむろ」が振る舞われた

伊藤園では平成とともに誕生した「お~いお茶」を30年愛飲してくれた消費者への感謝と、新しい「令和」という時代を迎え、さらなる日本のお茶文化の発展を願い、「日本文化を未来につなげよう」プロジェクトを実施する。このプロジェクトでは「日本文化」、「地域密着」、「新時代」、「健康価値」の4つのテーマに沿った企画を複数用意。そのひとつとして、5月から5都道府県(北海道、熊本県、京都府、広島県、東京都)が誇る史跡や名所にて、伊藤園社員自らの手でお茶や地域の銘菓を振る舞っている。

イベントの詳細は下記特設サイトをチェック!
www.itoen.co.jp/oiocha/30th/event19

(text: Kaori Nagano(Arika Inc.),Ichiko Minatoya photo: Sayuri Ono)
※この記事は2019年5月7日に発売したDiscover Japan6月号 特集『天皇と元号から日本再入門』の記事を一部抜粋して掲載しています。

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