《十和田サウナ》
ニッポンのアドベンチャートラベルの真骨頂は“アウトドアサウナ”にあり

コロナ禍において、密を避けて自然の中で遊ぶ登山やキャンプが人気だが、今単純なアウトドア体験の先をいく「アドベンチャーツーリズム」が注目を集めている。

アドベンチャーツーリズムは、自然・異文化体験・アクテビティのうちの2つ以上が構成要素となる旅を意味し、アクテビティを通してその土地ならではの自然や文化の本質を学び、旅を通して自分自身の学びに繋がる体験型観光のこと。

何やら小難しそうに聞こえるが、例えば「アウトドアサウナ」は、シンプルなかたちでそれを体現しているひとつのアクティビティ。そのアウトドアサウナを通したアドベンチャーツーリズムのひとつのロールモデルになっているのが青森県十和田の「十和田サウナ」だ。

十和田サウナ＝ネイチャー体験

「サウナ」ときけば、銭湯や温泉に付随する、汗を流したいおじさんのための施設というのはもう昔話。もはや釈迦に説法かもしれないが、昨年の流行語大賞にもノミネートされた「ととのう」という言葉をキーワードに、20代、30代の間で一大ブームが巻き起こってから数年が経ち、今や余暇を過ごす有力な選択肢の一つとなっている。

80～90℃ほどのサウナ室で身体をしっかり温めてから水風呂へイン。冷えた身体は引き締まって交換神経が優位にたち、その後外気浴があれば申し分なし。身体はぽかぽか温かくなっていくとぎすまされた感覚に——。

昨年春にオープンした十和田サウナは、十和田湖の大自然の中でそのサウナが体験できるというわけだ。

十和田サウナは北東北の奥、青森県と秋田県の県境に位置する十和田湖のほとり、宇樽部キャンプ場内に位置している。奥地というだけあり、東京からは新幹線で約3時間半、さらに車で90分かけてようやくたどり着ける秘境的な要素もある場所。北東北の奥という土地柄、一部地元の間では北奥（ホクオウ）と呼ばれることもしばしばだ。

その北奥の地、十和田湖は約20万年前から続く火山活動を経て形成されたカルデラ湖で、主にブナやミズナラといった落葉広葉樹の森に囲まれた自然豊かな場所。カモシカやテン（もちろんクマも）、アオゲラなどのキツツキ、ゴジュウカラにシジュウカラ、冬はホシハジロやオオバンなどの水鳥、春になるとオシドリが見られることもあり、ネイチャーウォッチングにも抜群の環境でもある。

歴史的には、遅くとも平安以降、山岳信仰の場であったことから、明治に入るまで暮らす人はおらず、手つかずの自然が多く残されていた。1936年に国立公園に指定され、1956年に八幡平、岩手山、秋田駒ヶ岳を含む一帯が追加された。

実際に十和田サウナを体験してみる

温度は80～100℃程度だが完全貸切制なので、好みに応じて管理人が好きな温度に調整してくれる。また、サウナストーンには地元・八甲田の古い火成岩を使用しているこだわりぶり。

十和田サウナでは、爽快感のある香りとして、昔から楊枝に使われたりお茶として飲まれているクロモジという植物を利用した体験も用意。北東北で採取したクロモジのアロマオイルが入った水を熱々のサウナストーンにかければ、身体はロウリュ（フィンランド語で「蒸気」）に包まれて一気にほぐされ、日々のストレスや疲れも吹っ飛んでしまう。

「水風呂は？」野暮な質問はここでは不要。天然の水風呂、十和田湖が待っている。人間の時間軸では計り知れない大自然に入水し芯から解放され自然と一体となる瞬間。このためだけにここまで来る価値がある。

濡れた身体をタオルで拭いて、バスローブを身に纏い、そして、デッキチェアに身をまかせたら、五感はフル回転。森の香り、波や風の音、鳥のさえずり……いつのまにか自然と一体化している自分に出会う。

日本全国、サウナ施設は数あれど、十和田サウナは都心のサウナ施設とは全く違う、国立公園の自然のスケール感を体験する装置なのだ。

自然は守るだけではなく、利用し、共存することで未来へつなげることができる。

365日、1日として同じ体験はないネイチャー体験は、自然の豊かさ壮大さを知り、人間も自然の一部であるという気づきを持ち帰ることができる。

やはり皆様には釈迦に説法だったかもしれない。さあ、十和田サウナというアドベンチャートラベルへ！

十和田サウナ
住所｜青森県十和田市奥瀬十和田湖畔宇樽部 宇樽部キャンプ場内
営業時間｜10:00～12:00、14:00～16:00
※集合時間は30分前
※2時間完全貸切制
料金｜2万2000円（税込）
※1～4名までの貸し切り料金
※5名以上の場合は1名ごとに5500円追加
レンタル｜スモールバスタオル、サンダル、バスローブ（料金に含む）
※冬季期間～3月15日までの利用料金、時間はホームページをご確認ください。
https://towadasauna.com/