《HANA吉兆×一保堂茶舖》
ある秋の日のティーペアリング全品公開
京都で300年の歴史を誇る「一保堂茶舖」のお茶を数種合わせて楽しむHANA吉兆の懐石コース「日本茶ペアリング懐石」。日本茶と日本料理のハーモニーを感じる、ある秋の日の献立を紹介します。
茶葉や淹れ方を吟味して
味のバランスを整える
HANA吉兆の懐石コースのひとつ、一保堂茶舖のお茶を数種合わせて楽しむ「日本茶ペアリング懐石」。お茶の数や銘柄は時期や料理内容によって異なり、今年の9月は煎茶「芳泉」、玉露「甘露」、くき玉露、くきほうじ茶の4銘柄をセレクト。料理に合わせて淹れ方を変えるなどした5種のお茶でマリアージュを楽しませている。その流れはHANA吉兆の献立を見た一保堂茶舖が、コース内容に合いそうな茶葉を絞り込むところからはじまる。徳岡さんはリストアップされたいくつかの茶の味を一つひとつ丁寧にききながら、その銘柄が合うのかどうか、またそれらを温かい状態で提供するのがいいのか、冷やした方がいいのか、茶器は何を使うのか、つぶさに見ていく。たとえば今年の9月の向付は、よりクリアな風味のお茶が必要と考え、煎茶「芳泉」を水出しで提供。「向付はコース料理のひと品目で全体的にやさしい風味。煎茶は熱湯で出すと渋みを強く感じるので、水出しのほうが向いていると思いました」。造りでは同じ銘柄を熱湯で出している。「白身魚は煎茶の渋味が少し加わることで、美味しさを醸し出すことができます。またお茶だけ飲んで美味しい場合も、料理に合わせるとなると微妙な調整が必要になります。ですので、今回は茶葉の量を半分にしました」。これまでのペアリング経験で最も印象的なのは煮物椀と玉露の取り合わせだったという。「双方の旨みが想像以上にマッチして、これには本当に感動しました」。9月の献立では玉露「甘露」をハモの煮物椀に添えてバランスを整えている。
「日本茶ペアリング懐石」は、日本茶と日本料理がピタッとはまる感覚をお客自らも体感できる。試しに煎茶「芳泉」の熱湯出しを、八寸に合せてみるとよくわかる。すっきりとした風味は造りの方がしっくりくるのだ。ただ「これはあくまで私が感じた提案のひとつ」と徳岡さん。あれこれ試しながら日本茶と日本料理への理解を深め、自分好みを見つけることもペアリングメニューに込めた願いのひとつだと語る。
玉露「甘露」(水出し)×煮物椀
煎茶「芳泉」(熱湯)×造り
くき玉露(熱湯)×八寸、焼物
くきほうじ茶(水出し)×焚合、御飯/香の物、果物
HANA吉兆
住所|京都府京都市東山区大和町3-2
Tel|075-531-1500
営業時間|11:30〜15:00(L.O.13:30)、17:00〜20:00(L.O.18:00)
定休日|水曜
料金|日本茶ペアリング懐石2万1800円(ドリンク付き)、通常コース1万2100円〜
※アラカルトあり
https://kyoto-kitcho.com
text: Mayumi Furuichi photo: Toshihiko Takenaka
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」