FOOD

《HANA吉兆×一保堂茶舖》
ある秋の日のティーペアリング全品公開

2021.11.27
<small>《HANA吉兆×一保堂茶舖》</small><br>ある秋の日のティーペアリング全品公開

京都で300年の歴史を誇る「一保堂茶舖」のお茶を数種合わせて楽しむHANA吉兆の懐石コース「日本茶ペアリング懐石」。日本茶と日本料理のハーモニーを感じる、ある秋の日の献立を紹介します。

≪前の記事を読む

茶葉や淹れ方を吟味して
味のバランスを整える

HANA吉兆の懐石コースのひとつ、一保堂茶舖のお茶を数種合わせて楽しむ「日本茶ペアリング懐石」。お茶の数や銘柄は時期や料理内容によって異なり、今年の9月は煎茶「芳泉」、玉露「甘露」、くき玉露、くきほうじ茶の4銘柄をセレクト。料理に合わせて淹れ方を変えるなどした5種のお茶でマリアージュを楽しませている。その流れはHANA吉兆の献立を見た一保堂茶舖が、コース内容に合いそうな茶葉を絞り込むところからはじまる。徳岡さんはリストアップされたいくつかの茶の味を一つひとつ丁寧にききながら、その銘柄が合うのかどうか、またそれらを温かい状態で提供するのがいいのか、冷やした方がいいのか、茶器は何を使うのか、つぶさに見ていく。たとえば今年の9月の向付は、よりクリアな風味のお茶が必要と考え、煎茶「芳泉」を水出しで提供。「向付はコース料理のひと品目で全体的にやさしい風味。煎茶は熱湯で出すと渋みを強く感じるので、水出しのほうが向いていると思いました」。造りでは同じ銘柄を熱湯で出している。「白身魚は煎茶の渋味が少し加わることで、美味しさを醸し出すことができます。またお茶だけ飲んで美味しい場合も、料理に合わせるとなると微妙な調整が必要になります。ですので、今回は茶葉の量を半分にしました」。これまでのペアリング経験で最も印象的なのは煮物椀と玉露の取り合わせだったという。「双方の旨みが想像以上にマッチして、これには本当に感動しました」。9月の献立では玉露「甘露」をハモの煮物椀に添えてバランスを整えている。

「日本茶ペアリング懐石」は、日本茶と日本料理がピタッとはまる感覚をお客自らも体感できる。試しに煎茶「芳泉」の熱湯出しを、八寸に合せてみるとよくわかる。すっきりとした風味は造りの方がしっくりくるのだ。ただ「これはあくまで私が感じた提案のひとつ」と徳岡さん。あれこれ試しながら日本茶と日本料理への理解を深め、自分好みを見つけることもペアリングメニューに込めた願いのひとつだと語る。

玉露「甘露」(水出し)×煮物椀

POINT
玉露本来の旨みと甘みを水出しでじっくり引き出し、繊細なお茶の風味を損なわないようガラス猪口を選んでいる
煮物椀
コースのメインディッシュ的位置づけの煮物椀。蓋を開けた瞬間にユズの香りが広がり脂ののったハモには梅肉とインゲンを添えている。出汁と玉露それぞれの旨みが共鳴し合う

煎茶「芳泉」(熱湯)×造り

POINT
熱湯から少し温度を下げた湯で淹れることで旨みも苦みもぐっと上がる。ほどよい苦みが白身魚とマッチしている
造り
鯛とつぶ貝の2種を醤油、もしくは肝醤油でいただく。コクのある肝醤油が淡泊な造りのアクセントになり、料理全体で緩急をつけながら飽きの来ないコースに仕立てている

くき玉露(熱湯)×八寸、焼物

POINT
葉っぱだけの玉露より親しみやすく、さまざまな味の料理に合わせられる。茎の渋みが出過ぎないよう抽出時間を早めている
八寸
華やかな八寸は吉兆の創業の頃からの代名詞。山海のものをあれこれ盛りつけ季節を届けている。この日の献立はホタテ酢、鈴子、栗、海老もろみ、銀杏、きのこ燻製白和え
焼物
昆布出汁に浸してから塩をあてたシイタケを、ハタ科に属し、淡泊な風味が特徴のコクハンアラで挟んで炭火焼きに。黄色味が強く上品な味の馬鈴薯洞爺フライを添えている

くきほうじ茶(水出し)×焚合、御飯/香の物、果物

POINT
水出しにすることで豊かな香りの余韻を長く楽しめる。熱湯出しとは違うまろやかな風味が広がり量を飲む一杯としても好適
焚合
季節の食材を別々に調理してうつわに盛りつける焚合。この日の献立は、里芋、法蓮草、南瓜、木耳、茗荷。食感の違いからくるお茶とのペアリングのおもしろさにも注目したい
御飯/香の物
土鍋で提供される御飯。この日はしめじとマイタケを使ったきのこ御飯を用意。鱧天麩羅を添えて満足感とごちそう感あふれる。香の物にはさっぱりとした水ナスとキュウリが
果物
ピオーネ、ゴルビーのブドウ2種と、鳥取県のブランド梨・新甘泉をゼリー寄せにしたデザート。果物本来の甘みを生かした後口のよさで気持ちよくコースを締めくくる

HANA吉兆
住所|京都府京都市東山区大和町3-2
Tel|075-531-1500
営業時間|11:30〜15:00(L.O.13:30)、17:00〜20:00(L.O.18:00)
定休日|水曜
料金|日本茶ペアリング懐石2万1800円(ドリンク付き)、通常コース1万2100円〜
※アラカルトあり
https://kyoto-kitcho.com

 

≫続きを読む
 

text: Mayumi Furuichi photo: Toshihiko Takenaka
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」

京都のオススメ記事

関連するテーマの人気記事