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淺沼組《GOOD CYCLE BUILDING 001》
宮大工のDNAが挑戦 “循環型建築”とは?

2021.10.25
淺沼組《GOOD CYCLE BUILDING 001》<br><small>宮大工のDNAが挑戦 “循環型建築”とは?</small>

寺社造営などの宮大工を起源とし、来年で創業130周年を迎える総合建設会社「淺沼組」。そんな淺沼組が取り組んでいる、SDGs実現に向けた独自の循環型プロジェクト「GOOD CYCLE PROJECT」の一環として、築30年の同社名古屋支店を舞台に環境配慮型リニューアル技術を実現させたビルが完成した。各用途に合わせた空間には、建設残土をアップサイクルした版築ブロックや土壁を使用。そんな環境配慮型リニューアルを終えた淺沼組名古屋支店の新しい姿とは…..。

自然の光や風を取り込み、
オフィスにも住宅のような心地よさを

外観 メインファサード
吉野杉のベンチとウッドデッキ、庇が、木の温もりを感じさせるベランダ空間を創出

外装は、西側のメインファサードを全面的に更新。窓の面を2.5mセットバックし、ベランダ空間をしつらえた。ベランダには、吉野杉の列柱と植栽を植え込んだことで安心して休める半外部空間をつくった。

1F エントランス

1Fエントランスホールは、長手方向に吹抜けとなるように既存スラブを撤去、突き当りの既存壁面を撤去、その先に2階への階段室を増築。階段室の天井全面にはトップライトを設け、自然の光と風を取り込めるようにし、吹抜けを介して1・2階を繋ぐことで、風通しのよい大きな一室空間となっている。

8F イベントスペース

また、7階の既存天井スラブ南側を撤去することで、7階大会議室の天井を南に向かって高くし、冬季の日射を存分に浴びることができる。8階の既存天井スラブ南側を撤去し、トップライトを設けることで外部にいるような明るいイベントスペースもできた。

地産地消の土
建設残土12トンを、アップサイクル

8F 天井

かつては、当たり前のように民家にはその土地の土が使われ、人々にとって身近な材料だった。建設の産業化により、土という自然素材は時代から排除されたものとなった。

このプロジェクトでは、淺沼組の携わる現場から出た建設残土を使用し、内外の床・天井や家具といった様々な用途における土の活用法を試行した。

ユーザーがつくる工程に参加
愛着をもって、建物を使う

ワークショップに参加した浅沼誠社長コメント
自分の手でオフィスの土壁を塗ることが行われて、愛着も湧いてくるだろうし、作業の大変さが分かればこれからの仕事にも反映されてくるだろうと思います。

一つの建物を建てるのに、これだけ多くの人が関わり、時間をかけて大変な苦労をしていることを知ることができてよかったと思います。

この土は、淺沼組の別の現場から出た土で、それも一つの循環となり、縁のあるものが込められて建物ができるのを感じます。

今ある建物を長く活用し、そして自然素材を使って循環させながら建物を利用することで、利用者が自然を感じながら仕事ができるということはとても重要なことだと思います。

リニューアル事業コンセプト『ReQuality』には、これからの世の中で、自然を循環させ、更に皆が健康になれるような社会を作っていきたいという思いで取り組んでおります。

持続可能な林業と関わる
奈良県吉野から木材を積極的に活用

奈良県で創業した淺沼組は、奈良県吉野と深いつながりがある。名古屋支店改修では、吉野の森からの木材を、内部空間の仕上げ材に用いるだけでなく、外観・メインファサードを構成する要素としても使用。そこでは、一本の杉から取れる可能な限り大きな径の丸太を取り付けることで、木材を自然に近い姿で感じることができ、また、材料として将来的に転用することを可能にする。

さらに、今回の試みとしては、丸太を伐採してから時間をおかず「未乾燥」の状態で「取り外し可能」に設えた。これにより、年月をかけて乾燥させるという工程が省かれ、乾燥を終えたところで家具などの材料として新たな使い方が可能になる。

建築家・川島範久さん

今回の吉野杉についての活用方法について、建築家の川島範久さんのコメント
一本の杉から取れる可能な限り大きな径の丸太を取り付けることで木材を自然に近い姿で感じることができ、かつ、将来改修または解体する際、細かく刻まれていない丸太はその後の転用可能性が最も高いと言えます。建築はマテリアルフローの通過点、生態系の循環の一部である、そんなことに意識的になれるような新しい建築の在り方の提案としました。

建築家・川島範久(かわしま・のりひさ)
川島範久建築設計事務所主宰。明治大学理工学部建築学科専任講師。2005 年東京大学卒業。2007 年同大学大学院修士課程修了後、日建設計勤務。2012 年カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。2016 年東京大学大学院博士課程修了・博士(工学)取得。日本建築学会賞(作品)、第7 回サステナブル住宅賞 国土交通大臣賞、住まいの環境デザイン・アワード2017グランプリ、第25 回前田工学賞、2020 年度JIA 環境建築賞グランプリ(JIA環境大賞)等受賞歴多数

丸太は全てナンバリングして、どこに取り付けるかを決定。自然の様々な表情をいかしています。 上の階層ごとに、太さが細くなり、下から見上げると一本の木が聳え立つようにデザイン。 できるだけ端材を出さないように、丸太の径を統一せずに、一本から最大限に活用

名古屋支店の改修で多くの吉野材を納材した
吉野銘木製造販売貝本拓路社長コメント
未乾燥の木材は、乾燥する工程でどうしてもヒビが入ってしまい、見えないところで腐るリスクもあるため構造材としては使用することはできませんが、今回のように非構造材の意匠として使用することで、自然の変化もひとつのデザインと捉えて頂き、乾燥作業も効率化でき、我々も考えつかない可能性を広げて頂きました。

木材の端材をプロダクトにし、
余すことなく資源をつかうこころみ

木材を使用するのにどうしても建材として使用できない端材については、新しいプロダクトとして製品化するクラウドファンディングを実施した。

淺沼組が贈る杉の香りのインテリア「ヨシノチップス」は、6月29日をもって販売を終了し、目標金額の1137%を達成、大きな反響があった。収益は奈良の森林を保護するための活動費として寄付し、持続可能な林業の支援へとつなげていくそうだ。

都会の真ん中に、自然の里山を

8F 改修前から神社があり、屋上庭園は「鎮守の森」のイメージの植栽

太陽の光や、自然の風、土や木、植物などの生命、といった自然とのつながり、そして資源を周辺や他者と分かち合うことを目指し、「ビルを一つの山に見立て、ビルの中で自然の生態系をつくりだす空間にする」というテーマを立てた。

外部の植栽
階層ごとにテーマを変え、社員が楽しめるベランダ空間に。
120~130種類の植物を多種混植し、季節ごとにさまざまな自然風景を楽しめる。西向きのベランダでは生育環境が厳しいため、自然の淘汰で枯れる植物が出る可能性も想定。社員が育てていく中で、どのような植物が適応するかを知り、生き残りやすい植物を新たに加える運用を行う予定だ。

内部の植栽
外部から、内へとつながるインテリアグリーン。
室内の植栽は、水量が可視化できるシステムをつくり、社員が今後育てていくことのできるインテリアグリーンを設置。

今後は病院や公共施設などに知見を展開し、人にも地球にもよい循環を広げていく「淺沼組」に注目だ。

淺沼組名古屋支店 GOOD CYCLE BUILDING 001
住所|愛知県名古屋市中村区名駅南3-3-44
竣工|2021年9月16日(木)
構造・規模|鉄骨造・地下1階・地上8階
建築面積|381.29㎡
問|淺沼組 コーポレート・コミュニケーション部
Tel|06-6585-5500
https://www.goodcycle.pro/

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