FOOD

あれも発酵、これも発酵①
発酵で日本のいまが見えてくる

2019.12.4
<b>あれも発酵、これも発酵① <br/>発酵で日本のいまが見えてくる</b>

発酵とは、目には見えない微生物が有機物を分解し、人間にとって有用な物質をつくり出すこと。日本人は、古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきた。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに発酵の魅力を教えてもらいました。今回は、発酵が人間に役立つ微生物の生命活動の賜物であり、さまざまな領域でその可能性が注目を集めている理由を探っていく。

小倉ヒラクさん
発酵デザイナー。山梨県甲州市を拠点に全国の醸造家との商品開発、絵本・アニメの制作、ワークショップなどを行う。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎)、『日本発酵紀行』(D&DEPARTMENT)

いろいろな領域で
発酵というキーワードが広まっている

今年、約5万人が来場して話題となった展覧会「Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅〜」。その名の通り、テーマは発酵。発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがキュレーターとなり、47都道府県のローカル発酵食品を通して、日本の地方文化の多様性をひも解き、日本の個性を再発見しようというもの。

「5万人の中にはビギナーもいればハードコアな発酵マニアもいたし、まちづくりにかかわる人や自治体・食品団体の視察で来た人もいれば、発酵には興味がないけど通りがかりに気になったからという人もいました。10〜20代の若い人も多かったですし、来場者の2割くらいは海外からのお客さん。もうカオスです(笑)。それくらい、発酵は文化としての幅の厚さがあるということ。最近は、ヒップなカルチャーになってきていますが、ブームじゃなくて何百年の歴史をアーカイブした地層みたいになっている。新陳代謝すると同時にぶつかり合うわけでもなく、いろいろな領域で発酵というキーワードが広まっていると思います」

そう語る小倉ヒラクさんが自身の経験を踏まえ、発酵を取り巻く現況を「発酵ムーブメントの見取り図」として整理したものが上の図。実にさまざまな領域で注目されていることがわかる。今回は、この中から特に「食」にフォーカスし、発酵を手掛かりに日本の食文化のおもしろさ、奥深さを見ていく。

「日本の発酵文化のキーポイントはとにかく麹。そして麹は和食ならではの旨みを支えるもの。和食のユニークさは発酵によって支えられているともいえます。発酵はその土地の記憶を保存するもの。その記憶を掘り起こすことで、その土地の歴史や風土、そこで暮らす人々の暮らしが見えてきます」

Alternative / Culture
発酵はカルチャーやライフスタイルとしても注目が集まる。「ローカルカルチャーの再認識とともに、パーマカルチャーに代表される農的ライフスタイルや政治意識の強い対抗文化に関心のある人たちをアツくさせる何かが発酵にあるようです」Technology / Innovation
ITの次なるトレンドとして注目されるのがバイオテクノロジー。「ITのリテラシーで生物学のハッキングをする“バイオハック”や“バイオパンク”の流れが日本でもはやるかも!?」。また発酵食品をDIYに回帰させようという流れも起きているOrganic / Spiritual
マクロビオティックやヴィーガンを実践する人たち、目に見えないものを重視し精神性の高い生き方を求める人たち、伝統文化の継承に関心のある人たち。「発酵が“未来の方向性を示すもの”または“足元の文化を見直すきっかけ”と捉えられています」Health / Beauty
発酵をサプリメントや美容法の延長線上にあるものとしてとらえ、発酵食品を食べていつまでも美しく健康でありたいと願う人たち。「技術が進歩したことによって、微生物によって体質をコントロールできる可能性が見えてきました」

日本は、土地に根ざしたローカル発酵食の宝庫。それぞれ、その土地の自然や気候、文化の中から生まれ、受け継がれてきた。地方の食文化の礎にローカル発酵食あり。そして地方の食文化は日本の食文化の多様性の源でもある。つまり発酵文化をひも解くことが日本の食文化の再発見につながる。

Discover Japan 11月号「すごいぜ!発酵」

文:成田美友、編集部 写真=山平敦史、夏目圭一郎

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