「奈良ホテル」明治時代の日本近代化を象徴する美しき迎賓館|後編
日本観光の黎明期に、日本旅館とは異なる西洋文化を採り入れたホテルという、新たなる経済・文化活動の拠点が誕生。1909年、迎賓館としての役割を果たすべく、華麗なる意匠を施して扉を開けた「奈良ホテル」です。歴史と風格、絶好のロケーション……憧れのホテルで時代に思いを馳せる。こちら、前後編記事にてご紹介します。
大和路の季節感を込め、
新しさを加えた仏料理
誰もが興味を抱くクラシックホテルでの食事。こだわりの伝統か、それとも斬新なフュージョンかと滞在者は大いに楽しみなはず。
メインダイニングルーム「三笠」では、重厚感に包まれた空間で、“奈良ホテルフレンチ”と称するフランス料理が提供されていた。歴代料理長から継がれたレシピに敬意を払い、また伝統だけに縛られない自由な発想が生かされた格調高い料理が楽しめる。
料理長の西井正芳氏が、自身の料理への思いを語ってくれた。
「大切なのは旬の食材で奈良の季節感を味わっていただくこと。そして奈良ホテル独自の料理提供を心掛けています」と。特に「シェフおすすめの伊勢海老料理」、「ビーフシチュー 奈良ホテル風」などオリジナルのメニューはやはり人気が高いという。
関西の迎賓館として存在し続けてきた歴史の中で、世界中から最高の味を知り尽くしたゲストを多くもてなしてきたホテルとして、食事の歓びを提供するのはホテルの格にも通じる。翌朝、朝食には目覚めの身体に優しい「大和の茶がゆ」を選んだ。薫り高い緑茶で炊き上げた粥に、焼き魚、炊き合わせ、味噌汁や香の物が添えられた奈良の伝統食に身体が歓び、幸せな一日のはじまりとなった。
奈良ホテルフレンチを堪能
グラスでいろいろ愉しめる
《白》①リースリング グランクリュ アイシュベルク グラス1500円
《赤》②ASUKA カベルネフランケンゾーエステート グラス4000円
《日本酒》③春鹿 華厳 純米大吟醸原酒1合2500円、グラス1300円
旬の味ごよみ
洋と和が選べる朝食
朝食には3種の定食が揃う。「茶がゆ定食」、「和定食」、そして「洋定食」の選択肢。特に人気の茶がゆは「奈良のうまいもの」で郷土・特産品料理登録商品。その他、アラカルトメニューにフレンチトースト、オムレツ、ホットケーキなど。洋定食はプリフィクススタイル。
バーでオリジナルのカクテルを
明治の趣漂うオールドファッションのバー「ザ・バー」(18:00〜23:00)。人気のオリジナルカクテルの中で、特に人気は写真のカクテル2種。右はロングセラーの緑茶や柚子入りの大和茶ジントニック、左が100周年記念として誕生したシグネチャーカクテルのマントルピース(ともに1782円)。
創業時の雰囲気を残す本館客室
奈良らしいモチーフのアメニティやお土産
①ステッカー・・・ロングセラーのお土産のひとつ、NARA HOTEL名入りのステッカー。タグともに324円
②オリジナルのメモパッド・・・ショップで扱われている昔の広告などで使った絵柄を使った絵はがき。1枚367円
③パウンドケーキ3種・・・パティシエが焼き上げたケーキ。松の実(1728円)、オレンジ、フルーツ(各1404円)
④タオル・・・高級感のある厚手のタオル類は肌触りがよく水切れもいい。フェイスとバスタオルを用意
⑤バスアメニティ・・・資生堂の「ジ・アメニティ」。右からボディソープ、コンディショナー、シャンプー
⑥オリジナル浴衣・・・昔ながらの模様が懐かしい浴衣。奈良ホテルオリジナルのロゴ入りで販売もしている
奈良ホテル
住所|奈良県奈良市高畑町1096
Tel|0742-26-3300
客室数|127室
料金|1室3万3264円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAほか
チェックイン|15:00 チェックアウト|11:00
夕食|フランス料理(ダイニング) 朝食|和食または洋食(ダイニング)
アクセス|車/京奈和自動車道木津ICから約20分または西名阪自動車道天理ICから約20分 電車/JR奈良駅からタクシーで約8分、近鉄奈良駅からタクシーで約5分
施設|ダイニングレストラン、バー、ショップ
text: Kyoko Sekine photo: Yuichi Noguchi
Discover Japan 2018年5月号『東京 再入門』
≫世界一のバーテンダーが奈良から日本のバー文化を押し上げる「LAMP BAR」