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「奈良ホテル」明治時代の日本近代化を象徴する美しき迎賓館|後編

2021.4.2
「奈良ホテル」明治時代の日本近代化を象徴する美しき迎賓館|後編

日本観光の黎明期に、日本旅館とは異なる西洋文化を採り入れたホテルという、新たなる経済・文化活動の拠点が誕生。1909年、迎賓館としての役割を果たすべく、華麗なる意匠を施して扉を開けた「奈良ホテル」です。歴史と風格、絶好のロケーション……憧れのホテルで時代に思いを馳せる。こちら、前後編記事にてご紹介します。

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大和路の季節感を込め、
新しさを加えた仏料理

誰もが興味を抱くクラシックホテルでの食事。こだわりの伝統か、それとも斬新なフュージョンかと滞在者は大いに楽しみなはず。

メインダイニングルーム「三笠」では、重厚感に包まれた空間で、“奈良ホテルフレンチ”と称するフランス料理が提供されていた。歴代料理長から継がれたレシピに敬意を払い、また伝統だけに縛られない自由な発想が生かされた格調高い料理が楽しめる。

料理長の西井正芳氏が、自身の料理への思いを語ってくれた。

「大切なのは旬の食材で奈良の季節感を味わっていただくこと。そして奈良ホテル独自の料理提供を心掛けています」と。特に「シェフおすすめの伊勢海老料理」、「ビーフシチュー 奈良ホテル風」などオリジナルのメニューはやはり人気が高いという。

関西の迎賓館として存在し続けてきた歴史の中で、世界中から最高の味を知り尽くしたゲストを多くもてなしてきたホテルとして、食事の歓びを提供するのはホテルの格にも通じる。翌朝、朝食には目覚めの身体に優しい「大和の茶がゆ」を選んだ。薫り高い緑茶で炊き上げた粥に、焼き魚、炊き合わせ、味噌汁や香の物が添えられた奈良の伝統食に身体が歓び、幸せな一日のはじまりとなった。

奈良ホテルフレンチを堪能

右)本日のアミューズ
春らしい色彩の「一口のお楽しみ」は、きびなごムースと生姜ジュレ。驚きの食材のマッチングと絶妙な美味しさが新鮮なコースのはじまり
左)日替わりの冷前菜 その日の仕入れで替わる旬の冷前菜。炙りサーモン、鯛、ボタンエビなど海の幸に、キウイとマヨネーズのフルーティなソースを添えて
右)温製スープ
この日のスープは定番人気のコーンスープ。濃厚でクリーミー、コーンの味が香ばしい正統派スープ。日替わりで愉しめるバリエーション
左)温前菜フォアグラ
フォアグラのポワレに鶏と和風出汁で炊いた大根添え。フォアグラによく合うポルト酒入りのペリグリーソースで薫り高い逸品の皿
伊勢海老料理
シェフ自慢の伊勢エビ料理。グリーンアスパラとアマランサス、マイクロセルフィーユをトップに。バターソースとアメリケーヌソース添え
左) “ひと休み”ソルベ
メインの肉料理の前にさっぱりソルベの登場。レモンライム、柚子、パッションフルーツなど柑橘系で
右)カラフルなデザート
右上は奈良の緑茶と柿のガトー仕立て。中央にメルバ、グラスの中はショウガ風味のバニラのババロア。エキゾチックソースでフルーツ満載
左)主役の肉料理
鹿児島産黒毛和牛フィレ肉のステーキに野生のポルチーニ茸を添えて。ソースは赤ワインソース。風味豊かな野生のポルチーニ茸は貴重!
食後の小菓子
ふたつ並ぶのはイチゴのマカロンと、マドレーヌ。食後のプチフール(小菓子)はメニューには載せないシェフのおもてなし

グラスでいろいろ愉しめる

《ビール》アサヒ生ビール 800円
《白》①リースリング グランクリュ アイシュベルク グラス1500円
《赤》②ASUKA カベルネフランケンゾーエステート グラス4000円
《日本酒》③春鹿 華厳 純米大吟醸原酒1合2500円、グラス1300円

旬の味ごよみ

洋と和が選べる朝食

朝食には3種の定食が揃う。「茶がゆ定食」、「和定食」、そして「洋定食」の選択肢。特に人気の茶がゆは「奈良のうまいもの」で郷土・特産品料理登録商品。その他、アラカルトメニューにフレンチトースト、オムレツ、ホットケーキなど。洋定食はプリフィクススタイル。

バーでオリジナルのカクテルを

明治の趣漂うオールドファッションのバー「ザ・バー」(18:00〜23:00)。人気のオリジナルカクテルの中で、特に人気は写真のカクテル2種。右はロングセラーの緑茶や柚子入りの大和茶ジントニック、左が100周年記念として誕生したシグネチャーカクテルのマントルピース(ともに1782円)。

創業時の雰囲気を残す本館客室

本館は1909年建造。創業時の暖炉や調度品、窓枠などが残る高級感漂う客室はパークサイドの「本館デラックスツインA」(43.7㎡)。世界的女優のオードリー・ヘップバーンも滞在
格天井に御簾、正倉院文様の宝相華をデザインしたじゅうたんなどがある檜づくりの客室は「桃山御殿風づくり」の代表的な雰囲気を残す
創業当時からある“スチーム暖房機”はインテリアとして残る

奈良らしいモチーフのアメニティやお土産

①ステッカー・・・ロングセラーのお土産のひとつ、NARA HOTEL名入りのステッカー。タグともに324円
オリジナルのメモパッド・・・ショップで扱われている昔の広告などで使った絵柄を使った絵はがき。1枚367円
パウンドケーキ3種・・・パティシエが焼き上げたケーキ。松の実(1728円)、オレンジ、フルーツ(各1404円)
タオル・・・高級感のある厚手のタオル類は肌触りがよく水切れもいい。フェイスとバスタオルを用意
バスアメニティ・・・資生堂の「ジ・アメニティ」。右からボディソープ、コンディショナー、シャンプー
オリジナル浴衣・・・昔ながらの模様が懐かしい浴衣。奈良ホテルオリジナルのロゴ入りで販売もしている

奈良ホテル
住所|奈良県奈良市高畑町1096
Tel|0742-26-3300
客室数|127室
料金|1室3万3264円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAほか
チェックイン|15:00 チェックアウト|11:00 
夕食|フランス料理(ダイニング) 朝食|和食または洋食(ダイニング)
アクセス|車/京奈和自動車道木津ICから約20分または西名阪自動車道天理ICから約20分 電車/JR奈良駅からタクシーで約8分、近鉄奈良駅からタクシーで約5分
施設|ダイニングレストラン、バー、ショップ

 
 

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text: Kyoko Sekine photo: Yuichi Noguchi
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