ART

デザイン大国デンマーク発!
地域をデザインする意味とは?
【サインデザイン編】

2021.3.25
デザイン大国デンマーク発!<br>地域をデザインする意味とは?<br>【サインデザイン編】
1階から2階への吹き抜けが気持ちいい。ソファにはヤコブセンの作品集が置かれていた

地域をデザインし、ブランド化することは、なぜ必要なのか?デンマーク政府や世界一のレストラン「noma」等のロゴデザインを手掛け、日本の企業とも縁が深い、デンマークのブランディング企業「コントラプンクト」のデザインディレクターであるボー・リネマン氏に、海外目線で語っていただきました。そのこだわりや歴史について、前後編記事にてご紹介します。

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「地域の個性をわかりやすく伝え、
住民が誇りをもてるようなデザインが必要なのです」

TASAKI
世界的なジュエリーブランド「TASAKI」の品質・高級感・洗練された印象を表現するため、英字をシンプルに並べたロゴに変更。カラーパレットに白・淡い緑・シルバーを選び、タイプフェイスは書道からインスパイア。日本の誇りを表現

──ボーさんは「日本サインデザイン賞」の審査員もされていますね。

ボー・リネマン(以下、BL) サインデザインはとても大切です。公共スペースのサインは目立ち過ぎず、必要なときには役割が果たされなければならない。大きな責任を伴います。そういう意味では、日本サインデザイン協会があるのは素晴らしいことです。デンマークにもこういう組織があれば、もっとよくなるはずです。日本のサインデザインは世界的に見ても、かなりレベルが高いです。サインデザインに限らず、日本の文化で興味深いのは、禅のように静謐で簡潔なものから、雑多で視覚的にクレイジーなものまで、バランスよく共存していることです。デンマークのデザインは、ちょうどその中間あたりで、そこそこにまとまっています。日本は雑多でクレイジーなものでさえ、非常に品質が高い。世界でも稀に見る文化です。

──今回の受賞作についてのご意見をお聞かせください。

BL 「渋谷サインプロジェクト」についてですが、毎日、何百万人も通過する渋谷駅には、明確なサインは不可欠です。このサインシステムは、私が見た中で最も優れた解決策のひとつです。特に、ピンをアイコニックな役割とする、地上案内標識がわかりやすく、好感をもちました。必要とする人には見え、必要としない人には気になりません。公共デザイン及び公共施設におけるサインデザインのロールモデルと言えましょう。

次に、「カタチとくらし」は、ユニークで、少しクレイジーです。 生物を自然の生息地から取り除き、不自然で様式化された環境に移動させることは人工的ですが、水中生物の美しさ、色彩、ダイナミックな造形と動きなど、有機的な要素が際立っています。

──「富山駅路面電車」についてはどうでしょうか?

BL 非常にシンプルなアイデアがベースの卓越したプロジェクトですね。東西と南北をつなぐ電車を青、ふたつが交差する駅を赤にして、強いアイデンティティを示し、パターンやテクスチャーを用い、ダイナミックで象徴的な表現を追加するコンセプトはとても好きです。

──最後に、デザインへのアプローチについて日本とデンマークを比べたとき、どう思われますか?

BL いくつかの共通点があります。たとえば、シンプリシティ。そして、丸や四角形などをベースに、明快で鮮明なかたちをつくるという、共通するデザイン哲学があります。だからこそ、日本の人々はデンマークデザインに親しみを感じるのかもしれません。日本もデンマークも長い歴史をもつ国です。伝統を否定せずに新しくチャレンジするという、新旧を融合させたストーリーで、国内外にアピールするのが、私たちのやり方だと思っています。

コントラプンクト社が手掛けた
行政のデザイン

CROWN(クラウン)

デンマークの省庁や公的機関のロゴマークのほとんどはコントラプンクト社のデザインによるもの。デンマーク王室の王冠をモチーフにして、省によってデザインをアレンジ。たとえば教育省(上段左から3つ目)の王冠マークの中には、小さな本が見えたり、財務省(上段左から2つ目)の王冠の中には金庫の鍵が見えたり、その省の特徴がモチーフに表されている。眺めるほど特徴が浮かび上がるのがおもしろい。

FOLKETINGET(フォルケティング)

フォルケティングとは、デンマークの立法府、あるいは国民議会。コントラプンクト社が、2018年に新しいヴィシュアル・アイデンティティやデザイン・ガイドラインを担当した。デジタルでも適用できるように、アイデンティティを再構築し、長い歴史をもつデンマークの議会のルーツに敬意を払いながらも、モダンなデザインにアップデートした。

ボーさんが注目したのは、日本のサインデザイン

「駅、街をつなぐ“渋谷サイン”プロジェクト」
竹内デザイン|竹内 誠
日本サインデザイン大賞・経済産業デザイン賞・経済産業大臣賞

鉄道4社8路線が集中する大規模ターミナル・渋谷駅。立体的で複雑な構造を愛着がわく「渋谷サイン」として整理。駅で見たサインが街の中でも同じデザインで展開され、駅と街との一体感も生んだ。

「富山駅路面電車南北接続 開業記念事業のプロモーション・サイン」
GK設計|西川 啓
金賞/諏訪光洋賞/高橋俊宏賞

南北に分断されていた路面電車が、富山駅でつながった。街がひとつになることを「つながる、ひろがる。」という表現と、汎用性の高いデザインで展開し、期待感と愛着も醸成。

「カタチとくらし」
hokkyok|藤井北斗
金賞/ボー・リネマン賞

生物の個性的な生き方を伝える水族館の企画展示。環境を単純化することで、生命の動きが際立つ「住まい」に。解説板がなくても、水槽を見れば生物の暮らしぶりがわかる。

ヤコブセンのスピリットを
風力発電の企業デザインに反映

オーステッドは、グリーン・エネルギーだけで稼動する世界を創りあげる、というビジョンをもった国際的企業。デンマークのデザインの伝統と機能美が、オーステッドブランドのインスピレーションの源にもなっている。その結果、独創的・楽観的・大胆なブランドが生まれた。近年ではブランドの再構築も行い、リニューアルから3年以内の2020年には、世界で最も持続可能な企業として選ばれている。

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text: Chieko Tomida, Discover Japan photo: Jesper Palermo
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