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歴史と文化が息づく町で暮らすようにステイ
「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」
いま訪ねたいせとうち

2020.10.26
歴史と文化が息づく町で暮らすようにステイ<br>「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」<br><small>いま訪ねたいせとうち</small>

瀬戸内海に面した竹原は、江戸時代、塩の一大産地として名を馳せ、沿岸部には塩田が広がっていた。「浜旦那」と呼ばれる豪商たちにより、雅な町人文化も花開き、酒蔵、料亭、邸宅が建ち並ぶ中心地は賑わっていた。全国で100を超える保存地区の中でも、城下町や宿場町はいくつかあるが「製塩町」に種別される唯一の町だ。

時が流れ、都市は近代化され、広大な塩田は新市街地へと変わった。ところがそうした大きな変化が幸いし、往時の中心地は土地開発の波を受けずに済んだ。塩田が生んだ町は、時代をまたぎ塩田に助けられ、江戸期の町区をそのまま維持している。

このエリアに「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」がある。築100年以上の建物3軒をよみがえらせ、2019年8月に分散型ホテルとしてオープン。本瓦をのせた漆喰壁や出格子など、往時の美意識を踏襲する造りと、快適にリノベした空間が迎えてくれる。

地域密着の町づくりを手掛けるバリューマネジメント株式会社が、「暮らすように泊まる」をコンセプトに、全国に展開するブランドで竹原が7拠点目になる。欧州が発祥とされる分散型ホテルは、宿泊やフロント、レストランなどホテル内の設備を分散させる。重要建築物などを再構築し、地域活性にもつながる新しい観光の形として、いま各地に広まっている。

「浜旦那」気分で寛いで
町のもつ物語の一端を体験

MOSO棟103は畳敷きがあり、最大4名まで宿泊可。寝心地のよいベッドは全室サータ社のセミダブル。雪見障子から中庭が眺められる

このホテルを仕切るのは、チーフの塩田光さんだ。町の歴史や観光案内、ホテルの説明を丁寧にしてくれた。「ホテル名の『製塩町』は、地名ではありません。かつてこの町が製塩業で栄えたことに由来します。自分の名前がなのは偶然ですが、何か縁を感じますね」と笑う。

HOTEI棟、MOSO棟、KIKKO棟の3棟の名は、竹原特産の竹(布袋竹、孟宗竹、亀甲竹)にちなんでいる。縁起がよい名前だ。江戸時代から昭和初期まで料亭として使われていたHOTEI棟は、1階がフロントで2階が50席利用できるレストランだ。畳敷きに据えたテーブルに椅子と落ち着いた照明が調和し、朝晩の食事をゆっくり楽しめる空間となっている。

すべての客室が総檜造りの内湯付き。木の温もりに癒される
MOSO棟103の中庭。自然の景色も相まってまるで風景画のよう。左奥の茶室で、ゆっくり日本酒の盃を傾けるのも粋

客室は全10室で、MOSO棟に6室、KIKKO棟に4室。現代の生活にあった利便性を備える室内にリノベーションされている。

MOSO棟の広いエントランスの天井には古い銀行建築の名残がみえる歩廊がある
瞬時に時計の針が戻る感覚になるMOSO棟101

MOSO棟は、HOTEI棟の向かいにある。明治期に銀行として建てられた後、旅館として再構築し使われていた建物だ。エントランスで靴を脱ぎ、棟内を素足で歩くところに旅館の名残を感じるが、中に入ると想像もしなかった空間が広がっていた。ロフトタイプの客室は、洞窟に入ったような気分になる元金庫室の蔵がリビングルームで、階段上のベッドルームは、旅館時の屋根裏部屋。小窓や梁に宿る長い歴史に触れられ、 “古民家”の雰囲気を味わいたい人にオススメだ。ホテル内でもっとも広い部屋は、中庭を挟む縁側と茶室付き。優雅な気分に浸れ、身も心も解放される。2階には3世帯での旅行にうれしいコネクティングタイプの部屋も用意。

KIKKO棟2階の203は、元ビリヤード場。窓からは町並み保存地区が見下ろせる
MOSO棟の風情ある外観

KIKKO棟は、2つの棟から歩いて5分ほど、町並み保存地区の中心の本町通りに面している。こちらは、酒蔵を大正期にビリヤード場にかえたユニークな経歴をもつ建物。客室の天井に走る大きな梁は当時のままで、「よい材料を使ってつくり、きちんとメンテナンスもされ大切に使ってきた証です」と塩田さんはいう。

「ぜひ、ここからの景色を眺めてほしい」と勧められ、窓から見下ろした情緒あるメイン通り。重要文化財の松阪邸独特の波打つ屋根も、ここからならばじっくり眺めることができる。どの部屋もそれぞれ趣が異なり、部屋選びに悩むのも楽しい時間だ。

「人通りが少なくなり、町の風景を独り占めできる早朝や夕暮れ時は、特に味わい深いですよ」と塩田さんが優しいトーンで話す。「その土地の気候や風土が育んだ、時を刻むことでしかつくれない歴史にも触れてほしいです」。今後、塩や海、酒をキーワードとした、「竹原」の土地ならではの体験ができるコンテンツを準備していく予定だという。この先の変化も楽しみな注目のホテルだ。

MOSO棟101のリビング。銀行の金庫室として使われていた蔵で異次元体験。防音なので、色々な使い方ができそう
元酒蔵の趣残るKIKKO棟204は、アプローチに小庭があり隠れ家的

竹原の三銘酒と海幸山幸の絶品マリアージュ

瀬戸内海に面し、三方を山に囲まれた自然豊かな土地ゆえに海の幸、山の幸が豊富だ。また賀茂川が流れ、良質な水系にも恵まれている。この地で育った上質で季節感あふれる食材は、和一辺倒ではなく、フレンチのテイストを取り入れた和食で味わえる。

先付からはじまる料理は、デザートまで8〜9品で構成されるおまかせコース。緩急も巧みに、舌を楽しませてくれる。腕を振るうのは、フランスで7年半の研鑽を積んだ神吉信輔シェフだ。奇をてらうことなくシンプルな味を心掛けているというが、竹炭やレモンジャムを使うなど、一品一品に小さな驚きが潜んでいる。椀の出汁をいただくと、口の中にふわっと旨みが広がった。

「炙った鯵の骨から出汁をとりました。しっかりと旨みが感じられる工夫をしています」という。

そしてもうひとつの主役は、地の日本酒がつとめる。蔵の個性を熟知した塩田さんが推奨する料理と共鳴して、お互いを引き立てあう銘柄。酒蔵がもつストーリーも交え、ここならではのプレゼンテーションでもてなし。旅の醍醐味に酔いしれ、楽しく語り合える特別な時間が過ぎてゆく。

レストランは、宿泊客以外も利用できる(要予約)。ランチ2800円〜、ディナー8000円〜(税サ別)、日本酒ペアリング4種3500円(税サ別)〜。

先付×大吟醸 まぼろし 白箱(中尾醸造)
牡蠣(塩、柑橘)

ブランド牡蠣“オイスターぼんぼん”を竹炭入りの塩パイ生地で包み密閉。ゆっくりと火入れし旨みも凝縮。柑橘の爽やかさに合うきりっと冷えた大吟醸で

御前菜×龍勢 純米大吟醸(藤井酒造)
山海食材、岩崎農園レモン、色菜

太刀魚の卵入り茶碗蒸し、垰下牛の時雨煮、オクラのもろみ和えなど、色彩豊かな山海の幸が集う前菜は、コクがあり香り華やかな龍勢を

お凌ぎ×小笹屋竹鶴 生酛純米吟醸原酒(竹鶴酒造)
イカ墨、フォアグラ

イカ墨のソースで味わう、大根、イカ、濃厚なフォアグラは、口の中でひとつにまとまる。琥珀色に輝く燗にした生酛純米吟醸原酒ががっちり受け止める

椀物×誠鏡 純米雄町(中尾醸造)
茸、葱、吸い物、鯵

ローストしたネギに、茸、鯵のなめろうの椀物は、鯵の骨からとった熱々の出汁を目の前で注いでくれる。旨みと合い口の中にすっと入ってくる「誠鏡」と

焼き物×龍勢 和みの辛口 特別純米(藤井酒造)
太刀魚、冬瓜

表面を軽く炙りレモンジャムを挟んで巻いた太刀魚。下には冬瓜が敷かれ、上には冬瓜のすりおろしを。すっきりした料理にさっぱりしたお酒を合わせた

逸品×清酒竹鶴 合鴨農法米 純米 門藤夢様(竹鶴酒造)
峠下牛ステーキ、磯の薫香

海藻をまとわせグリルした、地元のブランド牛に、醤油ベースのソースを添えて。香りも、味もしっかりした「清酒竹鶴」が、肉の味を引き立てる
焼き茄子と鶏ハムのにゅう麺。さっぱりした鶏ハム、焼きナス、干しシイタケと具だくさんの温かいにゅう麺は、干しシイタケの出汁で
特産品のブドウは、赤ワインで甘さ控えめのゼリーに。和菓子の下の岩塩で、ほんのり塩味を楽しむ

NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町
住所|広島県竹原市本町1-4-16 
Tel|0120-210-289(VMG総合案内)
料金|1泊2食付2万8000円〜(税・サ別 2名1室利用時の1名分料金)
カード|AMEX、DC、JCB、VISAなど
www.nipponia-takehara.com

text: Megumi Sasaki photo: Yuri Yamasaki edit: Tomoko Honma
2019年12月号 増刊「プレミアムせとうち案内」


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