ART

現代美術家 菅木志雄
「ものをどう見るかは、人それぞれの問題」
『古典×現代2020時空を超える日本のアート』

2020.7.14
現代美術家 菅木志雄<br>「ものをどう見るかは、人それぞれの問題」</br><small>『古典×現代2020時空を超える日本のアート』</small>
『支空』 /菅 木志雄 1985年 作家蔵 撮影:菅木志雄

姿かたちや色彩など見た目に始まり、所作や言葉など身から出るもの、果ては考え方や心の動きなど精神的なものまで、美はあらゆるものに宿る。それらをまとめ合わせ、目に見えるかたちで表現するとアートになる。つまり、日本のアートをひも解けば、日本ならではの美が見えるはずです。
6月24日(水)から8月24日(月)まで国立新美術館で開催される、「古典×現代2020—時空を超える日本のアート—」の見どころとともに、アートの中に光るニッポンの美の魅力を現代作家さんに聞いた。今回は現代美術家 菅木志雄さんにお話をうかがいました。

菅木志雄(すが・きしお)
美術家。1944年、岩手県生まれ。静岡県在住。1960年代末から1970年代にかけて現れた芸術動向「もの派」を代表し、1978年に日本代表作家としてヴェネチア・ビエンナーレに参加した。海外における評価も高く、2016年、毎日芸術賞。主な個展に「菅木志雄 置かれた潜在性」(2015年、東京都現代美術館)、「Kishio Suga Situations」(2016–2017年、ピレリ・ハンガービコッカ、ミラノ)、「Kishio Suga」(2016–2017年、ディア・チェルシー、ニューヨーク)

 

迷いなく描かれた大きな円。左側には、「これくふて 御茶まいれ」という添え書き(賛)が。「これ食べて、お茶でも飲みなさい」って、この丸いのはお饅頭なの!?
「仙厓って『変な人だなあ』と学生時代から思ってはいたけれど、対で展示されるとは思いもよらなかったな。まあ、『菅は変なことをしているから、変わったのをぶつけてみよう』って担当者が思ったんじゃないの?」と菅木志雄さんはおどけて言う。
仙厓は江戸時代の臨済宗の僧だ。独特の機知に富んだ禅画は現在では「ゆるカワ」、「ヘタウマ」とも評され、人気が高い。《円相図》はその代表作のひとつで、禅において、円は悟りや真理の象徴とされる。
「この人は『こう描く』というかたちが頭の中にまずあって、それを完全に描くことを目指しているよね。子どもが絵を描くのとは技量的にまったく違う。同時代の僧、白隠と比べても線はきれいだし、突き詰め方がこれ以外にはない、って感じがするんですよ」
菅さん自身、「もの」に長い間向き合い、その本質を突き詰めてきた。氏が世に出た1960年代後半から’70年代、日本の現代美術は転換期にあり、既存のスタイルを打ち破る新たな方法論が求められていた。

『円相図』 /仙厓義梵 江戸時代・19世紀 福岡市美術館(石村コレクション)

「それまでの日本の現代美術が土台としていた西洋的論法では『主体』と『客体』のふたつしかなかった。つまり作家が主体で、扱うものは客体というわけ。どうして作家がものを支配的に扱わなくてはならないのか? 石でも、木でも、それぞれの場所があり、場には個々のリアリティがある。それを了解しながら、僕は石や木をちょっと移動させて、場に異なる状況を表しているだけなんですよ」
仙厓の円が饅頭や月に見立てられるように、菅さんも自身の作品を自由に見てもらえばいいと話す。
「だってアートは説明するものじゃない。何を認識するかは人それぞれの問題であって、僕の問題ではありません。『ものは、あるようにある』。存在をあるがままに認めること、 つたなくとも自分で語ることが大事だと思う。それはその人がどう生きるか、ということだから」

菅さんにとっての美とは?
Q.1古典アートのどんな部分に美を感じる?
A.僕はあまり美を感じないな。
重森三玲の庭には埋没したい、ってだけ

Q.2美しいと思われる作家、作品は?
A.三玲の庭は素晴らしい。
見るたびに「くそー、やられたなー」となるね

Q.3 ニッポンの美とは?
A.場の多様性。庭ではものが置かれた場の
中間がきちんと計算されている

 

古典×現代2020ー時空を超える日本のアート
会期|2020年6月24日(水)〜 8月24日(月)
休館日|毎週火曜日休館
開館時間|10:00〜18:00 ※当面の間、夜間開館は行いません。入場は閉館の30分前まで
会場|国立新美術館 企画展示室2E
住所|東京都港区六本木7-22-2
Tel|03-5777-8600(ハローダイヤル)
kotengendai.exhibit.jp

※観覧にはオンラインでの「日時指定観覧券」もしくは「日時指定券(無料)」の予約が必要です。

photo:Kishio Suga
2020年4月号 特集「いまあらためて知りたいニッポンの美」


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≫『古典×現代2020 時空を超える日本のアート』

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