武田双雲の半生
2013-2017 最先端を走り続ける。

アメリカ・カリフォルニアで開催した個展。「友人に連れていってもらったご縁で個展を開催したんです。由緒ある建物に60〜70点の作品を展示。地元の方々も受け入れてくれて、毎年訪れるようになりました」
日本を代表する書道家・武田双雲さんが歩んできた道のりに迫る特集《書道家・武田双雲の半生》。第4回はロゴや題字が生まれてい行く背景をうかがった。

成田空港の到着ロビーで、日本に訪れた人々を歓迎する「迎」の書。「海外から帰国したとき、自分でも驚きます。『迎』の前で波動拳をするポーズもはやったとか(笑)」
双雲さんの書は、すべて一発。全神経を集中し、一画一画に念を込め、筆を走らせていく。「“降りてくる”イメージですね。僕はどんな書体でも書けてしまうので、『こういう書にしたら、こういう風に伝わるかな、みんなの心はこんな風に動くかな』と、デザイナー的な考え方をしています」。
頭の中には書におけるマーケティングが詰まっており、緻密な計算を瞬時に行っているという。「ここはかすれ率を1%減らそう、滲み率を1%加えよう、線の太さ、隙間、かすれの数はこれくらいにしようなど、書きながら細かい計算をしています。事前に考えておくのではなく」。

商品のテーマである「夢」の字はテレビCMやポスターで使用。CMのナレーターは野村萬斎さん、曲は久石譲さんというまさに“夢の共演”。商品発表会では書道パフォーマンスを披露
さらにロゴや題字などの仕事では、「自分をゼロ」にしているのだそうだ。「書道家としてのこだわりなんていらないんですよ。僕は人が喜ぶことをしたいから。常にお客さま目線を意識しながら書いていますね。飲食店なら、とがらせずに丸みをもたせ、美味しそうに書く。雑誌の表紙なら、本屋さんやコンビニで並んだとき、人の目に留まる違和感をどこかにつくるんです」。
誰かを思う気持ちが書に反映される。だからこそ双雲さんの書は人の心に響き、共感を呼ぶのだろう。
文=大森菜央
2020年1月号 特集「いま世の中を元気にするのは、この男しかいない。」
1|2001-2008 会社員から書道の世界へ
2|2009-2012 武田双雲の名が知れ渡っていく
3|すべての活動の基盤は「感謝」にあり
4|2013-2017 最先端を走り続ける
5|2018-2019 “楽”を世界に伝える