ART

武田双雲が現代アーティストに!
Souun♡のアート現場へ潜入

2020.2.3
武田双雲が現代アーティストに!<br>Souun♡のアート現場へ潜入
作品は、半年かけて完成するものもあれば、数日で完成するものもある。いずれにしても「生命が生まれるような感覚。子育てと同じで、どう仕上がるのかは最後までわかりません」

書道家・武田双雲さんが現代アートの世界へ。これまで生み出してきた約500点の作品に共通する概念は“楽”。自分の“楽”で世界中に“楽”を届けることを目指している。双雲さんにとって、その想いを表現する現代アートとは? そして書との関係は? 現代アーティスト・Souun♡の世界観に迫る。

そううん♡
1975年、熊本生まれ。書道家として活躍しながら2018年より現代アート作品の制作を開始。1年半の間に制作した作品は絵画、陶芸など約500点。2020年2月5日から代官山ヒルサイドフォーラムにて「ピカソ、ごめん。」展を開催予定。“楽”という文字をモチーフにした「楽園シリーズ」をはじめ、数百点の作品を販売・展示する

壁に掛けたキャンバスに向かったかと思うとおもむろに刷毛で色を塗り出す。と思えば、チューブを力強く振って絵の具をキャンバスにまき散らす。次の瞬間には、手のひら全体を使って色という色を混ぜ合わせる。その動きには一切のためらいがない。双雲さんは、頭の中でどんな完成形を思い描いているのだろうか。

「何も考えていません(笑)。ただただ、いいエネルギー体になることに集中する。あとは流れに身を任せるだけ。そうすると身体が勝手に動くんです。そのとき、自分が思うのとは逆の方向に進みます。いかに未知の領域に踏み込むか。つまり、自分を裏切り続ける。双雲らしくないを続けた先に、双雲らしさが生まれるんだと思う。アートは、それができるから楽しいんです」。

双雲さんにとって書が“静”なら現代アートは“動”。理性ではなく、本能をもってして作品制作に臨む

“楽しい”を含む“楽”は、書道家として独立した際に掲げた人生におけるビジョン。書道家としてはもちろん、アーティストとしても欠かせないテーマになっている。

「“楽”には、1.自分が楽をする、2.自分が楽しむ、3.人に楽をさせる、4.人を楽しませるという4つのマトリクスがあります。僕が目指すのは、自分が楽で楽しくて、世界中の人にも楽をさせて楽しませること。それを実現するものがアートなんです」。

自身のアトリエでアート作品制作に取り組む双雲さん。完成形を思い描かず、気の流れに身を任せ、身体の動くままに制作を進める

双雲さんがアートに目覚めたのは約2年前。きっかけは、約束を守ったごほうびとして、娘さんが色鉛筆を貸してくれたことだった。

「色鉛筆でカラフルに書いた“魂”という文字をSNSに上げたら、その反響がすごかったんです。『あ、こういうことも許されるんだ』と思って、そこからはまりました」。

絵画でも陶芸でも、刷毛などの道具を使わず、手で作品を仕上げることが少なくない。「書道家としてはあり得ない行為だけど、アートなら許される。色を直に感じる、その感覚が気持ちいい」

実は、双雲さんは、子どもの頃から絵を描くことが苦手だったという。

「いまでも『上手に描きなさい』と言われたら嫌だけど、自由に描くのは楽しい。それに比べると書では、自分を抑えている部分があります。でもアートだったら、リンゴを黒く塗ってもいいでしょう? 僕は、そういう答えのない世界が好き。しかも、それで人に感動してもらえるなんて、こんなに楽しいことはありません。

でも、自由だからこそ、アート作品には、書よりも内面が如実に表れてしまう。だから人間性を高めたいと思っています。それは、いい人間でいるというよりも、気持ちよく、上機嫌に生きるということ。楽しいを極めていれば、自由にしてもいい波動、エネルギーが出てくると信じています」。

「旧字体“樂”の幺部分は神事などで使う鈴を表すから“楽”の字には感謝も入っていると思う。僕は迷ったら感謝する。触れるもの、見るもの、すべてに感謝の無差別攻撃(笑)。世界中に感謝を広げていきたいですね」

そんな双雲さんにとって、書、そしてアートとは?

「書は心を整えるもの。クールで乱れない。それに対してアートはエクスタシー。自分の本性をむき出しにしたらどうなるかという実験に近いかもしれません。たとえるなら、結婚するなら書で、火遊びするならアート(笑)。どちらも自分にとって快感なんだけど、その方向性が真逆。とはいえ共通点もあるし、陰陽のように、お互いがバランスを取り合っている存在でもあります」。

双雲さんのアトリエ。床には、画材だけでなく日用品も無造作に転がる。それらも含め、目についたものを使って作品を仕上げる

アート作品の多くは、“楽”という文字がモチーフで、一連の作品を総称して「楽園シリーズ」という。

「僕は『毎日がパラダイス』と思って生きています。もちろん、楽しいだけの世界があるとは思っていません。つらいことや悲しいことなど、いろんなことを踏まえた上でのパラダイス。戦争とか環境破壊とか、これだけぐちゃぐちゃな世の中だからこそ、僕みたいにポジティブなことを言う人間が必要だと思うんです。

そのために超気持ちのいいエネルギー体になって、人類にそういういい影響を与えられる存在になりたい。そうなるための表現、それが僕にとってのアートです。とはいえアートにこだわっているわけでもないですが、とにかく楽に、楽しく。書でもアートでも人生でも、それが僕の個性であり、オンリーワンの存在になり得る理由だと思っています」。

≫あの方々も双雲に魅せられたコレクター!

文=成田美友 写真=近藤 篤

2020年1月号 特集「いま世の中を元気にするのは、この男しかいない。」

RECOMMEND

READ MORE