武田双雲・書道の現場
双雲さん愛用の書道道具。

筆、紙、墨など、書に欠かせない道具の数々。《武田双雲・書道の現場》第2回は、日頃双雲さんが使っている道具の中から、思い入れのあるもの、代表的なものを紹介してもらった。

三重の伝統工芸品である鈴鹿墨の職人・伊藤亀堂さんとともに開発した双雲墨。独特の滲みを生み出す
「弘法 筆を選ばず」。真に才能ある名人は、どんな道具でも使いこなし、立派に仕事を成し遂げる。このことわざは、双雲さんのためにあるといえるかもしれない。

紙によって墨ののり方は変わる。福井の老舗和紙問屋・杉原商店の杉原吉直さんが取り扱う越前和紙を愛用
「もちろん愛着のある道具はあるけれど、筆、紙を含め、こう使い分けようといった基準はありません。本当に気まぐれ。その場にあるもの、ふと手に取ったものを使って書く。書の道具に限らず、僕の人生は探さない人生。
何事も一期一会。そのとき出会った人や物に感謝し、大切にする。というより、ここぞというタイミングでこれという人や物に出会う運が強い。僕に天才性があるとしたら、この運の強さでしょうね。とにかく僕の周りは幸せの青い鳥だらけなんです(笑)」。

熊本の伝統工芸品である肥後象嵌の文鎮。母であり、書の師である武田双葉さんから贈られたもの

硯そのもの、そして墨をする音と感触を楽しむ。写真は熊本の硯職人・中村広和さんによる長崎・対馬の石の硯
文=成田美友 写真=近藤 篤