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ビジュアルデザインスタジオ《WOW》
地域文化をビジュアルデザインで
再編集して次世代へ【後編】

2026.4.19
<small>ビジュアルデザインスタジオ</small>《WOW》<br>地域文化をビジュアルデザインで<br>再編集して次世代へ【後編】

「2025 大阪・関西万博」のパビリオン『null²』と『BLUE OCEAN DOME』のクリエイターチームへの参画をはじめ、企業のアートワーク、空間のインスタレーション、広告における多様な映像表現など、国内外で幅広く活躍するWOWが、地域とつながり続ける理由に迫る。

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東北地方に伝わる4つの郷土芸能を
デジタルを介して伝える

数多くの郷土芸能が存在する東北地方。『BAKERU』では秋田県の「なまはげ」、岩手県や宮城県の「鹿踊」、山形県の「加勢鳥」、宮城県の「早乙女」をモチーフにしている

『BAKERU』は東北地方に伝わる「なまはげ」、「鹿踊」、「加勢鳥」、「早乙女」という4つの郷土芸能をモチーフに、WOWの解釈を加えてビジュアライズした体験型映像インスタレーション作品である。専用の面をつけてスクリーンの前に立つと、自分のシルエットが「なまはげ」や「鹿踊」などのキャラクターに変身し、自身の動きに合わせて動き出す。「人間ではない何者か」に“化ける”体験を通じて、地域の文化や風土に触れるきっかけを創出しているのだ。

『BAKERU』をきっかけに
次世代へ文化を伝える動きも!

「バケルの学校」の巡回公演の授業は、基本的に2日間の日程で実施される。2日間の場合、1日目は郷土芸能の演舞見学・レクチャーと『BAKERU』のお面づくり、2日目は『BAKERU』の体験とデジタルアート技術の紹介を行う

東日本大震災を経験した仙台オフィスのメンバーらが、「東北で活動する自分たちが表現することの意義」を見つめ直し、導き出された「郷土芸能」、「祭り」というキーワード。そこから構想がはじまったBAKERUは2017年の発表以降、国内外で展示を行い、文化庁「舞台芸術等総合支援事業(学校巡回公演)」にも採択された。2018年よりBAKERUの体験は特別授業「バケルの学校」として全国の小中学校を巡回しており、各地域に息づく伝統を発見する機会を提供している。

東北でしかつくれないものをつくる――。
その思いは、国境を越えて広がっていく

2019年に「ジャパン・ハウス ロサンゼルス」で開催された展覧会「BAKERU: Transforming Spirits」では、『BAKERU』の展示や関連イベントのほか、スピンオフ企画として「鹿踊」の演者と、ネイティブアメリカンの踊り手による共演映像も制作した

仙台オフィスを率いるエグゼクティブ・ディレクターの工藤薫さんは「郷土芸能をインタラクティブな体験に再構築したBAKERUのように、ビジュアルデザインには文化・風習を次の世代に伝えていけるポテンシャルがあるのではないかと感じています」と言葉に熱を込め、ディレクターの高平大輔さんは「バケルの学校は、子どもたちに好奇心の種を渡せていると思うんですね。たとえばデザインやテクノロジーを学ぶ契機になったり、郷土芸能への関心が高まったり。それらの可能性は僕らのモチベーションにもなっています」と希望を抱く。

文化庁による「舞台芸術等総合支援事業(学校巡回公演)」への採択を受け、2018~2025年まで「バケルの学校」として巡回した小中学校の総数は43校。訪れた学校からお便りが届くことも多いという

バケルの学校がどのようなかたちで実を結ぶのかはまだ未知数だ。だが確実に、未来へのバトンをつないでいる。「要となるのは“時間”です。何をするにせよ、成長のスピードは速くありません。時間をかけて対話し、クリエイティブと向き合い、作品を育てていく。BAKERUはもちろん、WOWが2014年にプロデュースした『aikuchi』なども、年月をかけてバリューを変化させていくことでしょう」と、高橋さんは時間に本質的な価値を見出す。

日本刀という伝統文化を
ビジュアルデザインで再編集

2014年に発表したプロジェクト『aikuchi』は、WOWがはじめて企画からプロデュースをしたアートピース。日本が誇る美術品である日本刀に新しい佇まいをもたらそうと、マーク・ニューソン氏をデザイナーとして招聘した

都市と地方を比べると、体感的な時間の流れも異なるだろう。高橋さんは「東京と仙台のメンバーが同じプロジェクトに取り組む機会は多々あるため、コストや時間のパフォーマンスの効率はあまりよくありませんよ」と笑うが、そこをユニークネスととらえ、各拠点のメンバーも「環境の違いから受ける刺激は多く、切磋琢磨し合っています」とメリットとして受け止めているという。WOWの原動力は、都市と地方のどちらにも根を張ることから生まれている。

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目に見えないものから見えるものまで
ビジュアルデザインで伝えていく

デザインの対象は目に映るものすべて。3DCGを軸に、映像、インスタレーション、UI/UX、R&D、アート、プロダクトなど、さまざまな領域を縦横断。コンセプトを重視し、普遍性のある作品づくりを行う

ビジュアルデザインスタジオ《WOW》
前編|テクノロジー×デザインの力で地域文化を見つめ直す
後編|地域文化をビジュアルデザインで再編集

text: Nao Ohmori photo: Kenji Okazaki
2026年2月号「地域を変える企業」

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