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発酵のチカラを生かした
モダンフレンチ《TOUMIN》
“冬眠”が引き出す旬の食材のピュアな味わい|後編

2024.4.15
発酵のチカラを生かした<br>モダンフレンチ《TOUMIN》<br><small>“冬眠”が引き出す旬の食材のピュアな味わい|後編</small>

吟味した食材に手間暇をかけることで、産地で食べるよりも美味しいひと皿に。旬の食材本来の味わいを引き出す井口さんの驚きのある料理の数々を紹介しよう。

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シェフの地元・兵庫から仕入れた甘海老を、乳酸発酵させたビーツと真薯仕立てに。Ome Farmの品川カブ、比内地鶏と生ハムの出汁のすり流しは優しい甘みで身体にスッと染み渡る
⚫︎うつわ|野口悦士(鹿児島)

現地で食べる感動を超え、東京だからこそ生まれる料理をつくるため、井口さんが導き出した方法のひとつが発酵。トマトや栗や里芋など、さまざまな食材を乳酸発酵や塩漬けに。店名の由来である“冬眠”をさせて素材の力を増幅してから使うことで、旬の食材のピュアな味わいを引き立て、驚きのあるひと皿に仕上げている。

ミルキーな味わいの後藤水産の鳴瀬牡蠣が主役。ニンジンペーストの甘み、大徳寺納豆の塩気、発酵ザクロドレッシングで和えたハーブの酸味が口の中で混然一体に
⚫︎うつわ|釋永 岳(富山)

「発酵させると香りの余韻が長くなり、フランス料理らしい重層的な足し算の味わいが表現できます。春に漬けたホワイトアスパラガスを、秋になってサンマと合わせるなど、本来出合うはずのない食材を組み合わせられるのも発酵の魅力。それは意味のある時間を過ごしてきたものだから、冷凍したホワイトアスパラガスを使うのとは違います。発酵には正解がないし、毎回完成形が違うところもおもしろいのです」

グリーンバスケットジャパンから仕入れた紅はるかを3〜4時間低温ローストしてから天ぷらに。濃厚な甘みを堪能した後は、かんずりと温泉卵を合わせたソースで味に変化を
⚫︎うつわ|野口悦士(鹿児島)

ノンアルコールペアリングのドリンクも菌や酵母の力を拝借。月桃緑茶でつくった自家製コンブチャに、洋梨とブドウの枝を煮出した液体やかりんシロップ、炭酸ガスを合わせてシャンパン風にするなど、想像を超えるものばかり。普段はアルコールを嗜む人まで魅了しているそう。
 
「まだオープン間もないので発酵期間が短いものが多いですし、これから時期を迎える食材を発酵させて、さらにオリジナリティを出していきたい」と意気込む井口さん。次は何が出てくるのだろうと好奇心をかき立てるTOUMINの料理。時間が経過し熟成が進むほどに、唯一無二の味わいへと進化していきそうだ。

コースで毎回登場するエチュベ。Ome Farm、53farmなど関東近郊の野菜を中心に約20種類使用。焼きナスピューレやニンジン葉のムースなど、ソースも季節に応じて移ろう
兵庫県柴山港から届くサワラのムニエル。発酵したミカンの皮と白味噌のペーストは苦みと甘みのバランスが絶妙。インカのめざめと菊芋の塩気を利かせたソースも味の変化が楽しい
⚫︎うつわ|中里花子(佐賀)
青森県新郷村で育った銀の鴨の炭火焼き。力強い肉の味を押し上げるソースは鴨ガラや昆布、新鮮なレバーを使用。付け合わせは素揚げブロッコリーのニラ和えとニンジンのぬか漬け
⚫︎うつわ|渡邊翔士(ロサンゼルス)
食事の締めくくりは炭火で焼いたOme Farmのケールと白子をのせたリゾット。momoGファームのミルキークイーンを発酵きのこのジュースで炊き上げ、酸味と旨みをぎゅっと閉じ込めている
⚫︎うつわ|野口悦士(鹿児島)

発酵ノンアルコールか、国内外の酒か。
魅力的なペアリング

アルコールペアリングでは料理に調和する国内外のワインや日本酒をセレクト。ノンアルコールペアリングはビーツと中国茶でつくったコンブチャとほうじ茶を合わせた赤ワイン風ドリンク、乾燥した野菜の皮を煮出したドリンク、高千穂の和烏龍茶など、ソムリエ・島村滉輝さんによる斬新な組み合わせが堪能できる

食感の変化が楽しいデザート

デザートはパティシエ・野澤倭歌菜さんが担当。パンとシナモン入りのアイスにドライフルーツジャムを組み合わせ、マンゴービネガーでさっぱりとした後味に
⚫︎うつわ|安藤由香(兵庫)
岩手サンファームのリンゴ紅の夢と塩気のあるサブレを合わせ、タルトタタン仕立てに。フレッシュな月桂樹の香りを移したミルクアイスは凛とした味わい
⚫︎うつわ|野口悦士(鹿児島)
ハーブティーと供されるお茶菓子。ほろほろとした食感のきなこのブールドネージュ。野澤さんが得意とする生チョコにはハーブの香りを忍ばせている
⚫︎うつわ|ハタノワタル(京都)
エントランスには群馬の染色工場KIRISENで染めた暖簾がお出迎え。知識豊富なシェフやソムリエと交わす会話もTOUMINの醍醐味のひとつといえる

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TOUMIN
住所|東京都港区西麻布2-24-14 バルビゾン73 2F
Tel|03-6451-1718
営業時間|火〜金曜18:00〜・19:00〜、土曜12:00〜・18:00〜
定休日|日・月曜
料金|コース1万7600円(税込)、アルコールペアリング付2万8600円(税込)、ノンアルコールペアリング付2万4750円(税込)

text: Rie Ochi photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

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