発酵のチカラを生かした
モダンフレンチ《TOUMIN》
“冬眠”が引き出す旬の食材のピュアな味わい|後編
吟味した食材に手間暇をかけることで、産地で食べるよりも美味しいひと皿に。旬の食材本来の味わいを引き出す井口さんの驚きのある料理の数々を紹介しよう。
現地で食べる感動を超え、東京だからこそ生まれる料理をつくるため、井口さんが導き出した方法のひとつが発酵。トマトや栗や里芋など、さまざまな食材を乳酸発酵や塩漬けに。店名の由来である“冬眠”をさせて素材の力を増幅してから使うことで、旬の食材のピュアな味わいを引き立て、驚きのあるひと皿に仕上げている。
「発酵させると香りの余韻が長くなり、フランス料理らしい重層的な足し算の味わいが表現できます。春に漬けたホワイトアスパラガスを、秋になってサンマと合わせるなど、本来出合うはずのない食材を組み合わせられるのも発酵の魅力。それは意味のある時間を過ごしてきたものだから、冷凍したホワイトアスパラガスを使うのとは違います。発酵には正解がないし、毎回完成形が違うところもおもしろいのです」
ノンアルコールペアリングのドリンクも菌や酵母の力を拝借。月桃緑茶でつくった自家製コンブチャに、洋梨とブドウの枝を煮出した液体やかりんシロップ、炭酸ガスを合わせてシャンパン風にするなど、想像を超えるものばかり。普段はアルコールを嗜む人まで魅了しているそう。
「まだオープン間もないので発酵期間が短いものが多いですし、これから時期を迎える食材を発酵させて、さらにオリジナリティを出していきたい」と意気込む井口さん。次は何が出てくるのだろうと好奇心をかき立てるTOUMINの料理。時間が経過し熟成が進むほどに、唯一無二の味わいへと進化していきそうだ。
発酵ノンアルコールか、国内外の酒か。
魅力的なペアリング
食感の変化が楽しいデザート
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TOUMIN
住所|東京都港区西麻布2-24-14 バルビゾン73 2F
Tel|03-6451-1718
営業時間|火〜金曜18:00〜・19:00〜、土曜12:00〜・18:00〜
定休日|日・月曜
料金|コース1万7600円(税込)、アルコールペアリング付2万8600円(税込)、ノンアルコールペアリング付2万4750円(税込)
text: Rie Ochi photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」