TRADITION

陰陽道と暦のつながり
京を守る陰陽師と暦のディープな関係|後編

2023.12.31
陰陽道と暦のつながり<br><small> 京を守る陰陽師と暦のディープな関係|後編</small>
『明治十一年太陽暦』 1877(明治10)年
国立歴史民俗博物館蔵 吉川家文書

天体観測からカレンダーを作成する「暦師」としての顔ももつ陰陽師(おんみょうじ)。明治3年には身分を消滅させられた陰陽師だが、その足跡から暦にまつわる話を見ていこう。

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Q.そもそもなぜ「太陽暦」に変わった?
A.天皇中心の政治にするためだったといわれています

最後の旧暦(太陰太陽暦)
すでに配布されていた、暦師が作成した明治6年の暦。大隈重信らによって秘密裏に進められていた突然の改暦となり、この旧暦が日の目を見ることはなかった
『明治六年暦(旧暦)』 1872(明治5)年
国立歴史民俗博物館蔵 吉川家文書

暦を作成していた陰陽師にとっても寝耳に水だった明治の改暦。「旧暦を使い続けることは、江戸時代の権威が続いていることを意味します。権力の中心が幕府ではなく、天皇に移った新時代を象徴的に示すものこそ暦だったのです。また財政難だった明治政府が官吏の給料の支払いが12カ月で済むよう、うるう月のない太陽暦を急遽採用したともいわれています」(下村)

太陽暦
奈良の暦師であった吉川家は、太陽暦に暦注と呼ばれる占いを赤文字で全面に記載。多くの檀家がいた吉川家は、非公式で陰陽師としての活動を続けていた可能性が読み取れる
『明治十一年太陽暦』 1877(明治10)年
国立歴史民俗博物館蔵 吉川家文書

Q.「旧暦」の名残がある節句や行事って?
A.唯一変わっていないのは中秋の名月です

現代では桃の節句に桃は咲かず、梅雨の時期に七夕が行われるが、これは新暦と旧暦に約1カ月のずれが生じるため。「中秋の名月を太陽暦で観賞してしまうと、満月ではない空を眺めることに。日取りが毎年変わるのは、旧暦から太陽暦での日程を計算しているからなんです」(下村)。「五節句は新暦で考えたらナンセンス。旧暦で受け止めて楽しむものなんですよね」(小池)

Q.「陰陽師・安倍晴明」の逸話がたくさんあるのはなぜ?
A.安倍晴明はいわばスーパースター。

写真提供:晴明神社

藤原道長に対する呪詛を見破ったなど、超人的なエピソードが平安時代末期から記録されている安倍晴明。「今昔物語集や宇治拾遺物語などの説話から神格化されていった晴明ですが、最高権力者である藤原道長をサポートし、80歳を超えても現役で働いていたことも晴明が著名な理由です」(小池)

Q.明治時代になって「陰陽師」はどうなった?
A.身分は消滅。けれども現代でも陰陽道の思想は生きています

『東北院職人歌合』 室町時代
国立歴史民俗博物館蔵 高松宮家伝来禁裏本

旧暦のお盆は7月15日満月で明るいからこそ、夜に盆踊りが行われていた。「現代では帰省の大移動がお盆の風物詩ですが、久々に顔を合わせてご先祖さまを想う時間は、日本人であり続けるための重要な節目。盆踊りや鎮魂の花火を含め、旧暦の季節感を残したお盆は今後も長く残ると思っています」(下村)。「日食や月食は現代でも皆が話題にする現象ですが、江戸時代からその感覚は変わりません。当時は忌み嫌うものだったため、日食や月食の予測は陰陽師の命題でもあったんです」(小池)

Q.京都にも「陰陽師ゆかりのスポット」がある?
A.平安京を災いから守ったことから、陰陽道の神が祀られた神社があります

写真提供=晴明神社

晴明神社
いわずと知れた陰陽師の代表格「安倍晴明公」が祀られている。晴明がつくったとされる陰陽道の祈祷呪符のひとつ「五芒星(晴明桔梗)」が社紋であり、境内の至るところに施されている

住所|京都市上京区晴明町806
Tel|075-441-6460 (9:00〜17:00)
参拝時間|9:00〜17:00
www.seimeijinja.jp

写真提供=八坂神社

八坂神社
陰陽道の“四神相応の地”に基づきつくられた平安京。中でも神仏習合と陰陽道の影響が色濃く残る八坂神社は、東を守る青龍に位置。かつては陰陽道の神「牛頭天王」が祀られていた

住所|京都市東山区祇園町北側625
Tel|075-561-6155
参拝時間|24時間参拝可能、9:00〜17:00(社務所)
www.yasaka-jinja.or.jp

写真提供=大将軍八神社

大将軍八神社
方位を司る陰陽道の神「大将軍」が祀られており、平安時代より崇められてきた。都を守るという重要な役割を担っていたことから、方徳殿には80体の神像や陰陽道関連資料が納められている

住所|京都市上京区一条通御前西入西町48
Tel|075-461-0694
参拝時間|9:00〜17:00
www.daishogun.or.jp

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text: Natsu Arai
Discover Japan 2023年11月号「京都 今年の秋は、ちょっと”奥”がおもしろい」

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