《SKS JAPAN 2023》
食にまつわる価値やパワーを“Unlock(アンロック)”
共創で食の未来をつくる
2023年7月27日(木)から29日(土)の3日間にわたり、米国発のグローバルフードテックサミットの日本版「SKS JAPAN 2023 -Global Foodtech Summit-」が開催された。2017年にはじまった「SKS JAPAN」は、“食×テクノロジー&サイエンス”をテーマに、あらゆる業界の共創によって食の未来を描き実装することを目指している。
タイトルに掲げた「Unlock(アンロック)」には、「事業・プロダクト・サービスの価値」、「食の価値そのもの」、「食に関わるイノベーターの方々のパワー」の可能性を、あらゆる枠を超えて解き放ち、フードテックに関わるさまざまな事業や製品・サービスを進化させたいという想いが込められている。
今年は、食の未来の可能性を探ると同時に、行動・社会実装につながることを強く意識し、新しいフードシステムの実現につなげるためのコンテンツを中心に展開。国内外の多彩な業界のキープレーヤーや専門家など、100名以上による約40のセッションでは、世界のフードイノベーションの動向に加え、日本における最新の取り組みや課題、食の未来などについて語り、想いを共有した。
スタートアップから大企業まで国内外の20を超える企業による体験展示には、新素材・新機能食品や調理ロボット、ヘルスケア向上アプリなど、食の最先端を体感できるフードテックが集結。実食体験はもちろん、オンライン視聴者向けのオンライン展示ツアーも好評を博した。
ラウンドテーブルやネットワーキングイベントなど、各プレイヤーとさまざまなかたちで交流できる体験型企画も開催。国内外のフードイノベーターやオピニオンリーダーたちと参加者とが直接つながり、組織・企業・業界・国といった枠を超えた共創の機会を生み出した。
一日目には、小誌『Discover Japan』統括編集長・髙橋俊宏が、佐賀県・嬉野で循環型酪農を実践するナカシマファームの中島大貴さん、嬉野ティーツーリズムを主宰する和多屋別荘の小原嘉元さんとともに登壇。「地域をUnlockする嬉野モデルの可能性~いかにして地域価値を最大化するか」と題したセッションを行った。
循環・再生型で高付加価値化を実現する嬉野のフードシステムは、前回の「SKS JAPAN 2022」でも注目を集めた。今回は、嬉野の固有の地域文化をデザインし、業種を超えた共創から生まれた嬉野ティーツーリズムに加え、中島さんが掲げる酪農文化の“乳(New)カルチャー”について取り上げた。
ナカシマファームでは、自社の水田で育てた稲を乳牛に与え、乳を搾り、牛が出したフン尿を堆肥化して水田に戻すという循環をベースに、ミルク、チーズなどの最終成果物をつくっている。中島さんにとって“乳カルチャー”は最終成果物を表現する場。「本質がぶれなければ、最終成果物は時代に合わせて変わっていけばいい。大切なのは、もっている資源をどう活用するか」という考えのもと、「持続可能性は新しい文化によって持続化たりえる」ことを発信した。
小原さんは、嬉野茶における生産者、買い手(市場・茶商・旅館・飲食店)、消費者の三角バランスを具体例に、地域資源をビジネスとして花開かせるために欠かせない価値創造のあり方について発信。かつての買い手至上主義から、産業の高付加価値化による現在の持続可能型システム、さらには未来へつなぐための再生可能・価値創出型システムについて紹介した。
セッションで、その土地ならではの地域資源を生かした持続可能な地域づくりの可能性について掘り下げた後、小誌が嬉野地域やシグマクシスとともに企画・開催する、嬉野のリジェネラティブ(自然環境・人・社会の再生と価値創出を目指す考え方)なフードシステムを学ぶ体験プログラムについて髙橋から紹介した。業種を超えて共創する現場の視察や現地プレイヤーとのコミュニケーションを通して、最先端のリジェネラティブフードシステムを五感で体験する同プログラムによって、地域に根差した魅力を再発見・再編集・再発信し、地域価値を最大化する新たなビジネスの種が生まれることを期待したい。
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SKS JAPAN問い合わせ|シグマクシス(f00dtecheyes@sigmaxyz.com)
画像提供:SKS JAPAN 2023 / シグマクシス
Text: Miyu Narita