島根県・松江市《界 玉造》
奈良時代から続く名湯でカニと日本酒を味わい尽くす
2022年11月にリニューアルオープンした「界 玉造」。玉造温泉の美肌の湯に加えて、日本酒発祥の地・島根の地酒を松葉がにと満喫できるのは、この時季だけのお楽しみだ。
日本最古の美肌の湯で、
土地の恵みを享受
穏やかな玉湯川が流れ、温泉街の情緒あふれる島根県の「玉造温泉」。奈良時代に編纂(へんさん)された『出雲国風土記』にも記される、美肌の湯として名高い温泉だ。触れて祈ると願いがかなうという「願い石」のある玉作湯神社(たまつくりゆ)をはじめ、パワースポットも多いことから、近年は若い女性からも人気を集めている。
この温泉街の中ほどにある、風格漂う和風建築の宿が「界 玉造」だ。星野リゾートが全国で展開する「界」ブランドの温泉旅館で、11月に出雲ひのみさき温泉の「界 出雲」の開業とともに、名前も新たにリニューアルオープンした。コンセプトは「いにしえの湯と出雲文化を遊ぶ宿」。大浴場に加え、全室に備わる客室露天風呂でも美肌の湯を存分に満喫できる。
また、日本庭園が眺められる太鼓橋の渡り廊下など従来の和の趣を生かしつつ、客室を和モダンな洋室に全面改装。「3タイプの客室すべてがご当地部屋『玉湯の間』となり、より深く出雲らしさを感じられるようになっています」と総支配人の岡本昌裕(まさひろ)さん。特産の勾玉がモチーフの襖戸や、長い木と短い木の組み合わせが特徴的な「出雲格子」、さりげなく壁を彩る「湯町窯」のタイルなど、随所にこの地の豊かな文化を伝える意匠がちりばめられている。
島根らしさが凝縮した客室でも湯を愉しむ
日本酒発祥の地・島根の地酒と味わう
松葉がにのフルコース
温泉やご当地部屋のほかにも、食や体験を通して地域文化を感じられるのが「界」ブランドの魅力であり、「界 玉造」でも多彩に地域性が取り入れられている。特に酒好きにたまらないのが、日本酒発祥の地・島根ならではの地酒。全国の「界」で唯一の日本酒BARがあり、稀少なものも含め42種から好きな酒の飲み比べもできる。
食事にもご当地食材が豊富。大きなシジミや高級魚のノドグロなども特徴的だが、なんといっても秋冬の味覚の王さまは山陰特産の松葉がに。遠方からのリピーターも多いという「タグ付き活松葉蟹づくし会席」は、一人あたり1・5杯もの松葉がにを使用。お造りや焼き、蒸し、鍋まで、松葉がにで満腹になる贅を極めたコースだ。さらに、それぞれの味わいを引き立てる島根の地酒のペアリングコースも用意。会席料理とともに味わえば、食中酒としての島根の酒のポテンシャルの高さも実感することができる。
「島根の日本酒は、旨みは豊かですが、食事をじゃましないものが多いんです。日本酒BARでは少し癖のある個性的なお酒も揃えているので、会席のペアリングと日本酒BARの両方でバリエーションに富んだ島根の地酒を楽しんでください」と、地酒を愛するマネージャーの鈴木奈美さん。
2軒目気分で日本酒BARへ!
飲み過ぎた身体にもやさしいフグやシジミの郷土朝食
酔い覚ましには大迫力の石見神楽を観劇
伝統芸能や伝統工芸を体験できる「ご当地楽」も充実。ロビーでは、島根県西部の伝統芸能「石見神楽」を毎晩上演。ヤマタノオロチ伝説を題材にした神楽は大迫力だ。演目中にはヤシオリノ酒も登場し、出雲と日本酒の歴史の深さも感じられる。離れの茶室では、出雲に家元がある「三斎流」の茶道体験を。菓子処・松江の菓子をいただきながら、出雲の茶の湯文化について亭主の影山勉さんに話をうかがうのも楽しい。
県西部の伝統芸能「石見神楽」を毎晩上演。神楽団から指導を受けたスタッフが、スサノオノミコトがヤシオリノ酒を飲ませてヤマタノオロチを退治する演目「大蛇」を披露。大蛇が間近で暴れ回り、迫力に思わず歓声!
日本酒だけじゃない! 茶の湯文化も
温泉に入り、美味しい料理や酒を味わう。それだけでもすてきな旅になるに違いないが、歴史深い出雲ならではの伝統や文化まで体感することで、その旅はずっと忘れられないものになるだろう。
界 玉造
住所|島根県松江市玉湯町玉造1237
Tel|050-3134-8092(界予約センター)
客室数|24室
料金|1泊2食付3万8000円~(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00
OUT|12:00
夕食|日本料理(食事処)
朝食|和食(食事処)
アクセス|車/山陰自動車道松江玉造ICから約15分、電車/JR玉造温泉駅から車で約5分
施設|大浴場、食事処、日本酒BAR、ライブラリー、茶室、ショップ
text: Miyo Yoshinaga photo: Asami Endo
Discover Japan 2023年1月号「酒と肴のほろ酔い旅へ」