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まちと繋がる畳店《松葉畳店》
日本の伝統文化「畳」の魅力を発信する場所

2022.4.5
まちと繋がる畳店《松葉畳店》<br><small>日本の伝統文化「畳」の魅力を発信する場所</small>

静岡県焼津市にある、創業昭和52年(1977年)から続く「松葉畳店」。開業から約40年を機に、開放的なガラスサッシが印象的なデザインへと一新した。設計を担当したのは、静岡県の建築設計事務所の町秋人さん。“畳やイ草の魅力をさらに伝えていきたい”という想いから生まれ変わった「松葉畳店」とは・・・・・・。

町秋人建築設計事務所
町秋人(まち・あきと)
1985年 静岡県生まれ。2008年、京都精華大学デザイン学部建築分野卒業。2017年、町秋人建築設計事務所設立。http://machi-a.com/

畳文化を五感で。

松葉畳店は、静岡県焼津市にて昭和52年(1977年)に創業した畳店だ。素材にこだわった畳を製作すると同時に、イ草と畳縁を使った生活雑貨を通して畳の魅力を発信している。

「畳屋さんは、畳を製造してくれる工場というよりは実は商店に近いのではないか」と町さんは言う。近所の人が畳の交換に店へ訪れ、店主に相談する。このような光景は、どの地域の畳屋さんでも同じように繰り広げられているだろう。畳店というのは「生産する工場」というよりは、ほかの商店と同じく地域に開いていた存在である。

現代において、「畳」の立ち位置というのはメンテナンスのほぼいらない床材や壁材などとは違い、住み手が継続的に状態を見ながらメンテナンスを続けなければならない今では希少な選択肢の建材だ。わざわざ足を運んで店主に相談したり、家に来てもらって状況を確認してもらったりする「畳」は、現代の建物のなかでは人と人とつなぐ貴重な存在であるとも言える。だからこそ、製品としての「畳」だけを伝えるのではなく、全体を通しての魅力を伝える必要性に町さんは気がついたそうだ。

松葉畳店が新たに建て替えを決めた理由は、「先代が建てた平屋建ての畳作業場が老朽化したこと」と、「畳やイ草の魅力をさらに伝えていく場が必要となった」からである。元々ある畳製作の作業場だけではなく、奥さんが手がけている畳雑貨制作の作業場、そして雑貨を販売する店舗をひとつの建物中に集約することになった。

敷地の形状は開口が狭く、奥行きのある町屋形式である。3つの役割をごちゃまぜに配置してしまうと、それぞれの良さは消えてしまう。けれど、まったく別々に分けてしまうと全体を通してのイ草・畳の良さを伝えたいという想いが伝わらない。それを解決するためにとった手法が、1階の畳作業場と2階の販売店兼雑貨製作の作業場を独立した空間としながらも、ブロックが組み合わさって一体になるかのように縦に積み上がるというシンプルだけれど効果的な構成だ。少しずつ空間をずらしながらゆるく繋がりを生むことで、物理的なつながりだけではなく、精神的なつながりももたらしいと考えた。

 

1階 畳作業場
2階 畳雑貨工房・ワークショップスペース

1階のガラス貼りの作業場では、畳をつくる工程を見学でき、畳を身近に感じてもらえるよう工夫されている。

2階はイ草で作った雑貨や、畳に合うスツールやインテリア販売。無農薬イ草の粉末を使った、バスクチーズケーキなどのスイーツを味わえる。また、雑貨製造やヨガ、筆ペン習字、メイキャップとバラエティ豊かな講座が多目的に使えるワークショップスペースも用意。

居心地の良さを作り出す

日本古来の床材のひとつである「畳」。近年では、フローリングの普及により、畳の空間が減少している。そんな時代だからこそ、松葉畳店は、畳の良さを丁寧に伝えている。

畳の素材となるイ草の産地へ出かけ、農家の方々から生の声、想いを伺い、その想いを製造段階でも1枚1枚に込め、実際に使う人が本当に心地よいと思ってもらえる製品づくりを心がけている。

中2階 SHOP

また畳の普及活動として、触れる機会の少なくなった畳を身近に感じてもらえるよう、イ草を使った雑貨の企画・デザイン・製造・販売を行っている。

サラッとした心地良い肌触り、心を癒やしてくれるイ草の香り、見た目にも美しい新畳の色味と縁のコントラスト、畳の上で転がった時に耳に届くササッと乾いた音。まだまだ知られていないスーパーフードである食用イ草のパウダーをクッキーなどお菓子に。食という分野への新たな試みにより、イ草の可能性をさらに引き出している。

「畳」には柔らかさ、香り、肌触りなどの良さに加え、湿度調整効果という日本の気候に適した働きもしてくれる。構造は畳床・畳表・畳縁の三層に分かれており、現代ではイ草だけでなく、さまざまな材料が用いられるようになった。松葉畳店では、それぞれの材料にこだわりを持って畳を製作している。

10年~15年に一度の畳工事を楽しんでもらうため生産者のわかる国産畳表と約50種類の畳縁を常時用意。畳縁は無地のものや和柄、現代的柄を取り揃え、部屋の雰囲気に合わせたものを選ぶことができる。

左から)親方妻 ひさ江さん、親方 榮さん、畳職人 謙さん、イ草雑貨デザイン製作 知美さん

どこか懐かしく、風通しが良い、オープンな空間づくりで、さまざまな人が引き寄せる「松葉畳店」。畳を作る姿と、その魅力を感じに訪れてみてはいかが。

松葉畳店
住所|静岡県焼津市中新田1005-5
Tel|054-624-9669
営業時間|9:00〜17:00
定休日|日曜・祝日
http://www.matsubatatamiten.jp

Photo:rachishinya

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