ウッドデザイン賞とは?
2025年最優秀賞(環境大臣賞)受賞
「カヌーパークみさと カヌーレIMAI」
暮らしと社会を豊かにする木の活用を目指し、10年前に創設されたウッドデザイン賞。時代とともに歩んできたアワードを振り返ります。
今回は、ウッドデザイン賞の制度など簡単な概要からはじまり、2025年最優秀賞(環境大臣賞)を受賞した「カヌーパークみさと カヌーレIMAI」をご紹介する。
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ウッドデザイン賞とは?

「ウッドデザイン賞」とは、木のよさや価値をデザインの力で可視化し発信することを目的に、2015年に創設された、優れた建築や製品、活動などを評価し表彰する制度だ。
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2025年最優秀賞(環境大臣賞)を受賞した
地域とスポーツをつなぐ新拠点!

屋根はバリ伝統のカヌー・ジュクンを上下反転させたような独特の形状。夕暮れ時に凪いだ川面に反射すると、周辺の景色とともにカヌーの姿が浮かび上がるよう計算されている
2025年に最優秀賞(環境大臣賞)を受賞したのは、島根県の江川水系県立自然公園内に位置する美郷町カヌー艇庫「カヌーパークみさと カヌーレIMAI」。島根県産の杉材を躯体に使うなど、地域資源を活用しつつ、スポーツを中心とした地域活性化を推進した点が高く評価された。地元中高生のカヌー部の部室となっているほか、大学の合宿地としても利用が広がっている。

ジュクンを逆さにしたような形状の屋根には、屋外での優れた耐久性をもち、経年変化も楽しめるアコヤを使用。デザイン面だけではなく、谷の多い地形もバリと共通しているそう
美郷町は、町を貫く江の川を生かし「カヌーの町」としての発信を進める中で、カヌー文化をもつインドネシア・バリとの交流が約30年前からスタート。「沿革を踏まえ、寺院で見られる割れ門など、バリ由来のモチーフを随所に取り入れています」と建築家の中本剛志さん。

主屋の2階は木船の船底を想起させる「船底トラス」、下屋の屋根と深い軒を支えるのは、カヌーを漕ぐ姿からイメージを得た「パドルトラス」。意匠と強度を両立した緻密な設計
カヌー競技の会場のみならず、国際文化交流の場にも。現地の伝統芸能や食を楽しむイベント「美郷バリフェスティバル」を開催するなど、地域に新しい風を運ぶ。
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10月の「美郷バリフェスティバル2025」では、屋外練習場の一画がガムラン演奏やバリ舞踊、地元伝統の石見神楽が上演されるステージに。清流と山をバックにした舞は幻想的だ

正面階段の両脇には、バリ島の職人が制作した割れ門を設置。現地の寺院などでよく見られ、魔よけ

山に挟まれた地形で横風を受けにくく、全国でも数少ない1000 mの直線コースが確保できるとあって、インターハイなどの会場としても利用され、島根県内外から練習に訪れる学生も多い
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〈施設DATA〉
美郷町カヌー艇庫
カヌーパークみさと カヌーレIMAI
2024年10月竣工。130艇を格納できる艇庫やトレーニングルーム、屋外練習場などを備え、合宿や全国規模の大会にも対応する。高耐久化天然木材葺きの屋根は周囲の山に沿わせた勾配で、自然と調和する佇まいに。
住所|島根県邑智郡美郷町信喜141
問|美郷町教育委員会
Tel|0855-75-1217
〈建築DATA〉
竣工|2024年
設計|STUDIO YY
構造|山田憲明構造設計事務所
設備|総合技研設計
施工|今井産業・福間工務店特定建設工事共同企業体
敷地面積|5115.42㎡
建築面積|1035.66㎡
延床面積|944.99㎡
構造|木造、地上2階
用途|スポーツ施設
01|2025年最優秀賞(環境大臣賞)受賞作品に迫る!
02|前編|地域のロールモデルとなった受賞作品
03|後編|“技術”を用いた木造建築の受賞作品
04|世界が注目!日本の地域発のウッドデザイン
05|杉のプロダクト最前線!
text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」



































