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ウッドデザイン賞から見えてくる
「木と社会のいい関係」
前編|地域の優れたロールモデルとなった受賞作品

2025.12.21
ウッドデザイン賞から見えてくる<br>「木と社会のいい関係」<br><small>前編|地域の優れたロールモデルとなった受賞作品</small>

10年という節目を迎えたウッドデザイン賞。ジャンルも規模もさまざまな受賞作品を振り返ると、木とともに生きるヒントが詰まっていました。

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密接に関わる
“木と地域社会”

国土の3分の2を森林が占める日本にとって、木は人々の暮らし、ひいては地域社会と密接にかかわっている。「ウッドデザイン賞の評価軸においても、“技術”と並んで“地域”が重要なキーワードとなってきました」と日本ウッドデザイン協会常任理事の高橋義則さんは話す。

ウッドデザイン賞がはじまった2015年に最優秀賞に輝いた「西粟倉・森の学校」。岡山の西粟倉村で伐採された原木を地元で買い取り、製材・加工・流通まで一貫して自分たちで行うことで付加価値を高め、雇用も創出する取り組みだ。若者を中心に移住や起業が増加し、地域の森林資源と共生するロールモデルとなった。

地域振興とひと口にいっても、アプローチはさまざま。「SANU 2nd Home」は地域観光、「森tebaco」は林福連携、そして「カヌーレIMAI」はスポーツを通して地域活性化に寄与してきた。

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「地域」の優れたロールモデルとなった
ウッドデザイン賞受賞作品

〈2015年〉
西粟倉・森の学校

岡山・西粟倉村が手掛けた、
木による六次産業化

森を育てた人と暮らしをつくる人をつなぐ材木のダイレクトマーケティングにより、新たな市場を開拓する取り組み。材木規格の再定義や半完成品のプロダクトなど、消費者視点での製品開発、木材購入ができる仕組みを構築した。

 

〈2017年〉
ノーザンステーションゲート秋田

駅を木のチカラで人々の集まる拠点にした
JR秋田駅を中心とした中心市街地において、駅、自由通路、待合ラウンジなどを県産材による統一したデザインで木質化。観光客は林業県の秋田らしさを体感し、地元住民が居心地のよさから滞在したくなる場所の創出を目指した。

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〈2021年〉
URASHIMA VILLAGE

地域の協働でエリアの魅力を発信する宿泊施設
讃岐の山々と瀬戸内海を望む全3棟の一棟貸し宿泊施設。地元の11の事業者が連携することで、地域の資源と文化を生かし、観光、ワーケーション利用など付加価値を高める地域のビジネスモデル。エリア内外の人々が交流するハブ施設機能も。

 

〈2022年〉
「SANU 2nd Home」

地域の森を守るサステイナブルな宿泊施設
木と調和した保養滞在の魅力を訴求し、「自然の中にあるもう一つの家」を提供する宿泊サービス。国産材使用に加えて、釘やビスを極力使わず解体しやすい工夫、収益の⼀部で植林を⾏うなど、⾃然への負荷を最⼩化したサーキュラー型建築を実現。

〈2023年〉
「森tebaco」

業×福祉で協業!
新しい木製品のデザインにより森林資源の付加価値を高め、障がい者の雇用や誇りをもって働ける場をつくる林業×福祉の連携プロジェクト。埼玉県比企郡の森から切り出された檜材で、障がい者の個性を生かすものづくりを目指した。

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【後編】
優れた“技術”を用いた受賞作品をご紹介!

 
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木に関する社会的なニュース

2015年 ウッドデザイン賞スタート。
農林水産大臣賞、林野庁長官賞を授与

COP21において、パリ協定を採択。
温室効果ガス削減への取り組みが進む

2017年 国内初の木造による3時間耐火構造が国土交通大臣認定を取得
2018年 建築基準法改正。木造建築の規制緩和が進む
2019年 森林環境税、森林環境譲与税の創設
2020年 2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す「カーボンニュートラル」を宣言

新型コロナウイルスの感染拡大。テレワークが普及する

2021年 「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(都市の木造化推進法)の施行

日本ウッドデザイン協会設立

2022年 ウッドデザイン賞の最優秀賞が、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞の4点に

世界の生物多様性の3分の1を保護することに合意

2023年 「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)の一部改正
2024年 能登半島地震

JWL(Japan Wood Label)とWCL(Wood Carbon Label)の運用開始。木材の利用促進と環境意識の向上を目指す

2025年 高さ100ⅿの木造超高層ビル「(仮称)東京海上ビルディング計画」着工(2028年竣工予定)

text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」

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