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ウッドデザイン賞から見えてくる
「木と社会のいい関係」
後編|優れた“技術”を用いた木造建築の受賞作品

2025.12.21
ウッドデザイン賞から見えてくる<br>「木と社会のいい関係」 <br><small>後編|優れた“技術”を用いた木造建築の受賞作品</small>

10年という節目を迎えたウッドデザイン賞。ジャンルも規模もさまざまな受賞作品を振り返ると、木とともに生きるヒントが詰まっていました。

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技術や建材の進化による
木造建築の進化とは?

技術や建材の進化も木造建築のあり方を変革させている。木質パネル建材「CLT」の活用や、耐火集成材の耐火時間延長などが、木造建築の大規模化の後押しとなっていった。

「PARK WOOD 高森」は、日本初の高層木造ハイブリッド建築。⼯期短縮や国内の森林資源循環に貢献する工法は、木造建築に新たなフェーズをもたらした。2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されたことも、都市部の木造・木質化が大きく前進する契機に。その後のウッドデザイン賞においても中大規模の木造・木質化建築が上位賞を受賞するようになった。

2019年受賞作品の「PARK WOOD 高森」。CLTを床と耐震壁、耐火集成材を柱として使用

2024年の能登半島地震の被災地に建設した「DLT恒久仮設木造住宅」は、木材同士に木ダボを貫通させたパネル「DLT」を採用。自然災害への対策は大きな課題であり、社会提案性が認められたエポックメイキングな作品だ。

最新の技術を世界へ発信する機会でもあるのが国際イベント。「東京2020オリンピック・パラリンピック」のために建設された「有明体操競技場」や、記憶に新しい「2025年『大阪・関西万博』大屋根リング」は、いずれも日本が誇る木造建築。日本が長年蓄積してきた木の知見をアピールし、世界の木造の在り方にも影響を与えていくだろう。

「木を利用することで、社会課題の解決へ!」
日本ウッドデザイン協会 高橋義則さん

高橋さんはこう振り返る。「ウッドデザイン賞を語る上で技術と地域という要素は複合的にからみ合っています。木と社会を取り巻く時勢を、作品が映していますね」

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優れた“技術”を用いた
木造建築の受賞作品

〈2018年〉
江東区立有明西学園

学びの場を木でデザインした
区内初の小中一貫9年制の公立学校で、都市部では困難だった大規模な学校施設の木質化・木構造化を実現。古くから木を扱う木場の文化を発信するシンボル的な施設でもあり、教室の床や柱、梁などに木の温もりを感じながら学習できる。

 

〈2019年〉
PARK WOOD 高森

高層都市木造住宅の
パイオニア

2時間耐火集成材「燃エンウッド®」を採用した、日本ではじめての都市木造10階建て賃貸集合住宅。軽量で加工性に優れたCLTを、床及び耐震壁に活用することで、工期短縮とそれに伴う経費削減も実現した。

 

〈2020年〉
有明体操競技場(現・有明GYM-EX)

大規模木造建築も都市に登場
東京2020オリンピック・パラリンピックなど国際的な競技会の施設として建設。天井の木架構の現しなど、質素で潔い建築が圧巻。カラマツ、杉など日本各地から調達した木材を約2300㎥使用。現在は改修を経て展示場として転用されている。

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〈2024年〉
DLT恒久仮設木造住宅

仮設住宅が恒久使用できるように
能登半島地震の被災地に建設した、木造による応急仮設住宅。木材同士に木ダボを貫通させたパネル(DLT)を、箱型にして千鳥に積むことで、短期間での建設を実現。仮設住宅の期間終了後も解体せずに、恒久的に公的住宅として利用できる。

 

〈2025年〉
2025年『大阪・関西万博』大屋根リング

世界をひとつに囲んだ巨大建築
大阪・関西万博会場のシンボルとなった世界最大の木造建築物。神社仏閣などに使用されてきた貫接合に、現代の工法を加えて建てられた。会場の主動線として円滑な交通空間であると同時に、雨風や日差しを遮る快適な滞留空間として利用。

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世界も注目する
日本の地域発のウッドデザイン

 
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text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」

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