香川の風土をたどる
名建築・アートの旅へ
後編|アート文化を名建築で愉しむ
うどん県として親しまれる香川は、多様な表情を有している。そのひとつがアート県としての一面だ。各地に美術館があり、名建築も多数。「アート県かがわ」に至った背景とともに、おすすめのスポットを紹介していく。
line
地域に根づくアート文化を、
建築と愉しむ
《丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)》
街の暮らしとアートをつなぐ美術館

photo: Yoshiro Masuda
丸亀市は1991年、市制90周年記念事業として丸亀駅前に「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」を開館。猪熊と懇意な間柄の建築家・谷口吉郎の息子、吉生が設計を担い、猪熊は「街との一体化」、「おおらかな空間」、「子どもの感性が育つ場所」をかなえる美術館を希望した。猪熊と吉生の対話により設計は進められ、完成した建物は「作品は建築によって引き立てられ、建築は作品によって美しさが与えられる」と語る吉生の言葉を見事に体現している。

70年以上もの間、絵画における「美」と新しい表現を追求してきた画家・猪熊弦一郎。猪熊の残した絵画やドローイングなど約2万点の作品に加え、多数の資料を所蔵している。常設展や企画展で猪熊の活動を紹介するほか、現代美術の美術館としての顔ももち、マリーナ・アブラモヴィッチや杉本博司、塩田千春、中園孔二といった国内外のアーティストの企画展も開催。アート教育にも注力し、子どもが体験的に学べる場を提供する。猪熊の「美術館は心の病院」という意思を受け継ぎ、訪れた人の心が元気になる美術館であり続けている。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)
住所|香川県丸亀市浜町80-1
Tel|0877-24-7755
開館時間|10:00〜18:00(最終入館17:30)
休館日|月曜(祝日の場合は翌平日休)
料金|常設展300円 ※企画展は展覧会ごとに異なる
www.mimoca.jp
line
《香川県立東山魁夷せとうち美術館》
瀬戸内の原風景に出合う、
アートを引き立てる谷口吉生建築

瀬戸大橋を望む坂出市沙弥島に建つ「香川県立東山魁夷せとうち美術館」も、吉生の建築だ。魁夷と吉郎の親交を通じ、その絵画を理解していた吉生。魁夷の代表作『道』を彷彿とさせるアプローチからはじまり、作品とじっくり向き合った後、階段を下りた先の1階ラウンジに広がる瀬戸内海の景色は、魁夷が描き続けた美しい風景への憧憬をかき立てる。

清澄な風景画を描く日本画の巨匠・東山魁夷の祖父が坂出市櫃石島の出身であることから、約300点の版画作品等の寄贈を受けて2005年に開館。櫃石島を正面に望むように建ち、天然石「バーモント・グリーン」を用いた外壁の建物は、瀬戸内海の風景と調和するように佇んでいる。階段でつながるふたつの展示室では、所蔵作品の一部を年4回のテーマ作品展で紹介。作品鑑賞後、1階ラウンジに突如として現れる静穏な景色に思わず息をのむ。ここに併設されたカフェで、魁夷の絵画の余韻にゆっくりと浸りたい。

香川県立東山魁夷せとうち美術館
住所|香川県坂出市沙弥島字南通224-13
Tel|0877-44-1333
開館時間|9:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)
料金|テーマ作品展400円、特別展800円
www.pref.kagawa.lg.jp/higashiyama
line
《ジョージ ナカシマ記念館》
木と対話し生かすものづくりの
真骨頂を見て、体験する

注文家具やジョージ・ナカシマの家具を製作する、桜製作所の工房に隣接する「ジョージ ナカシマ記念館」。2階展示室にはジョージ・ナカシマがはじめて手掛けた椅子や日米でつくられた家具、代表作『コノイドチェア』シリーズなど約60点の作品群がズラリと並び、1階のカフェではナカシマの家具で寛ぐことができる。木を愛し、自らを「ウッドワーカー(木匠)」と呼んだジョージ・ナカシマ。彼の作品を通じ、彼の生き方やものづくりの考え方を広く届けている。

ジョージ ナカシマ記念館
住所|香川県高松市牟礼町大町1132-1(桜製作所内)
Tel|087-870-1020
開館時間|10:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日|日曜、祝日
料金|一般1000円、中小生 300円
www.sakurashop.co.jp/visit/george-nakashima-memorial-gallery
「デザイン知事」と呼ばれた金子や「香川のアートディレクター」の役割を果たした猪熊の功績は、数々の建築・アートスポットを有し、瀬戸内国際芸術祭を開催する、現在の香川に続いている。ここでしか出合えない芸術は無数にある。瀬戸内の穏やかな気候に身をゆだね、「アート県かがわ」の魅力に触れる旅へ、いざ行かん。
line
text: Nao Ohmori photo: Mariko Taya
2026年2月号「訪ねる建築暮らす建築」


































