香川県東かがわ市
巴堂の「ぶどう餅」
《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は香川県東かがわ市にある老舗和菓子屋・巴堂の「ぶどう餅」をご紹介。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中。

今秋、香川旅行を計画中の方へ。かの地で見逃せないものは、アートとデザインです。民藝の思想を取り入れた作風で地元産業のブレーンとなった和田邦坊所縁の菓子舗巡礼もおすすめ。邦坊は香川出身の才人で、後年は讃岐民芸館の初代館長に就任。香川の物品のプロデュースを多く手掛けました。
大きな功績のひとつが、「巴堂」と邦坊の協業です。二者がともに取り組んだ成果が、東かがわの名物となった「ぶどう餅」です。ぶどう餅は小豆こしあん入りの蒸し菓子。皮越しに中のあんが薄紫色に透けて見えることもあり、名前の由来はブドウと思われがちですが、もともとは戦国の昔、武士たちが武運と身の安全を祈り、氏神の白鳥神社に供えた戦力餅が「武道餅」のはじまりだそうです。そう、ブドウではなく武道なのですが、かたちや大きさもブドウの粒に似ていることからいつしか「ぶどう餅」と呼ばれ、郷土名物として愛されています。つるりとのど越しよく、もう1本とつい手が出てしまい、スルスルとお腹に収まるこれは最強のお茶泥棒です。
line

巴堂 本店
住所|香川県東かがわ市三本松1152-7
Tel|0879-25-3115
営業時間|9:00~18:00
定休日|木曜
https://tomoedo.net/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2025年9月号「木と生きる2025」



































