那須連山のふもとで多忙な日々に一息を。
戸村亜紀「那須別邸 回」でリセット中
忙しい日常を離れて、自然の懐に身をゆだねる。栃木県、那須連山のふもとに位置する客室わずか9室の日本旅館、「那須別邸 回」。クリエイティブディレクターの戸村亜紀さんが、ひとときの静かな時間を求めて小さな旅に出た全2回の連載前編。
FOLKFOOD代表。墨絵作家として活動後、デザイナーに転向。現在はクリエイティブディレクターとして施設やブランドのトータルブランディングや商品開発などを手掛ける。環境問題や地域産業復興にも取り組む
多忙な日常に打つ、句読点。アクセスのよいリゾート地で得る束の間の休息は、常にフル回転を迫られる環境に身を置くクリエイティブディレクター、戸村亜紀さんに欠かせない時間だ。
「充実した毎日の中でも、いったん、日常をリセットして自分を見つめ直す時間をもちたいと考えています。普段から休みの日に家族や両親と一緒に温泉で過ごすことは多いのですが、美味しいものを食べ、のんびりと温泉に浸かる休日は大切なひとときです」。
ほぼ週替わりで国内外を飛び回り、活動する彼女のスケジュールに空いた2日間。戸村さんは都心から車で約2時間半の栃木県那須町にある温泉リゾート、「那須別邸 回」へと向かった。
高速道路の那須ICを降り、那須街道の坂道を上っていくと、那須岳の中腹に「回」と書いた控えめな看板が現れる。御用邸に連なる約2500坪という広大な敷地に立つ隠れ宿の客室は、数寄屋造りの離れが1棟とスイートタイプの客室が8室のみ。そのいずれもが異なる設えだ。
「スイートタイプの客室は、それぞれにテーマ素材としつらえを決めることからデザインがはじまりました。たとえば『其の壱』は栃木産の大谷石、『其の弐』は漆塗りの壁床というように。『其の四』の客室の主室の壁に使った赤土焼き物の細工は、わずかに残されていた材料を取り寄せてオリジナルで焼いたものです。旅館の客室は宿主の寝室をお客さまにお見せするようなものですから、建築の素材に限らず、マットレスや枕、タオルやシャンプーなどのアメニティに至るまで、私が心地よいと思えるものを選び抜きました」。と6代目宿主の片岡孝夫さん。
戸村さんは「其の四」の客室で、早速、服を着替えてリラックス。リビングから一段下がった場所にある、テラスに面して置かれた大きなソファに腰を下ろして本のページを繰る。リビングの大きなソファだけでなく、ほかの客室では畳敷きの小上がりでゴロリと横になることもできる。
聞こえるのはただ、窓の外のブナやコナラの木々の枝を揺らす風の音。外の自然を室内にいながら感じられる、心地よい開放感がどの客室にもある。
住所:栃木県那須郡那須町湯本206
Tel:0287-76-3180
Fax:0287-76-3080
E-mail:info@sansuikaku.com
客室数:9室
料金:1泊2食付3万5000円〜 4万5000円(税別)
カード:AMEX、DINERS、JCB、MASTER、VISA
IN:15:00 OUT:11:00
夕食:会席料理(部屋) 朝食:和食(部屋)
温泉:大丸温泉(アルカリ性単純温泉/源泉掛け流しではない/加温あり/加水あり/美肌効果、神経痛、関節痛、慢性消化器病、冷え性、筋肉痛など ※妊娠中でも利用可)
風呂:部屋風呂全室(温泉) ※「山水閣」の大浴場、貸切風呂利用可
アクセス:車/東北自動車道那須ICから約15分 電車/東北新幹線那須塩原駅からタクシーで約30分(※那須塩原駅から無料シャトルバスあり/要予約)
館内施設:ラウンジ206、アロマルーム(別棟)
www.bettei-kai.jp
文=森 聖加 写真=山平敦史
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