FOOD

《五ツ星お米マイスター》が厳選
2024年度、食べておきたい新米!【前編】

2024.12.23
《五ツ星お米マイスター》が厳選<br>2024年度、食べておきたい新米!【前編】

米の最前線で活躍し、あらゆる銘柄を知り尽くした「五ツ星お米マイスター」の4人が、2024年食べたい新米を厳選!

全国各地の生産者とコミュニケーションを取り、米の“いま”をキャッチしながら消費者に発信するエキスパートたちが食文化としての米の魅力について熱く語り合った。美味しい米の見極め方や業界の現状と未来とは?

今回お話しを聞いた
「五ツ星お米マイスター」

〈お米マイスターとは?〉
日本米穀商連合会が認定する、米に関する専門職経験がある人にのみ受験資格のある“米の博士号”。米に関する幅広い知識をもち、米・ブレンド・炊飯特性を見極め、米の魅力を多方面で発信。五ツ星はその最高位の資格。

吉田屋 5代目 小林健志さん
1885年創業の「吉田屋」5代目。幼少の頃から米店を遊び場として育つ。2013年、五ツ星お米マイスターを取得。飲食店向けには多種多様なニーズに対応するべく、品種の提案から精米圧力・調製まで幅広くアドバイスできるように努めている

吉田屋
住所|東京都台東区浅草橋1-22-13 吉田屋ビル1F
Tel|03-3851-5484
営業時間|8:30〜18:30
定休日|土・日曜、祝日
https://kome-yoshidaya.com

隅田屋商店 店主 片山真ーさん
1905年創業の老舗米穀専門店オーナー。五ツ星お米マイスターの資格を取得し、香り・味・粘り・食感・外観の5項目で求めに応じた最高のブレンド米を提供。炊飯技術に特化したおむすびやブレンド米を麻布台ヒルズ「お米とごはん 隅田屋」で展開

隅田屋商店
住所|東京都墨田区東駒形1-6-1
Tel|03-3626-1135
営業時間|9:00〜18:00
定休日|日曜
http://sumidaya.jp

米処 結米屋/シブヤ代表 澁谷梨絵さん
数多くの田んぼに足を運び、探し出した米や雑穀を「米処 結米屋」で販売。五ツ星お米マイスターをはじめ、7つの穀物の資格を取得。農林水産省食糧部会の審議委員としても活動。保育園や幼稚園の給食にレシピ提案をする食育や講演活動も

米処 結米屋 阪急百貨店 大井食品館店
住所|東京都品川区大井1-50-5
Tel|03-3778-5479
営業時間|10:00〜20:00
定休日|なし
https://ameblo.jp/rie-shibuya

小池精米店 店主 小池理雄さん
2006年、小池精米店を継ぐ。2013年には五ツ星お米マイスターの資格を取得。「楽しくなければお米ではない!」を合言葉に、イベントやワークショップを開催、メディア出演も精力的に行う。「お米の新しいあり方」を常に模索し続けている

小池精米店
住所|東京都渋谷区神宮前6-14-17 こくや1F
Tel|03-3400-6723
営業時間|9:00〜18:00
定休日|土・日曜、祝日
https://komeya.biz

プロが考える〝いい米〟とは

「新しい米の美味しさに出合うには専門店がベストです」と語る澁谷さん

――まず、皆さんが米を見るときのポイントを教えてください。
小池 精米する前の玄米は、表面にてかりがあってつるつるのものがよいもの。それに加えて精米したときに割れずにきれいに流れるものは良質な白米だと判断します。

澁谷 専門用語で米の見た目を「見面(みづら)」というのですが、感動する見面の玄米ってありますよね。ただ、それが必ずしも美味しいとは限らないので、皆さんもそうでしょうけれど、必ず炊いて食べてから判断します。

小林 確かに見面は大事。僕はそれに加えて食感を重要視しますね。噛み応えのある弾力で、ほどよく歯離れがよいものが理想です。

片山 うちは特殊で、取り扱う米はすべてオリジナルブレンドで大半が業務用。お客さまにとって先月と今月の質が違うと困るので、安定した品質が一番大事です。一年を通して同じ水分量と食感が出るように、少しずつブレンドを調整しています。

――なるほど。わかりやすく「よい見面」ってあるのでしょうか?
小林 ひとつの基準としては、精米した後に半透明でぷっくりしていて、猫の目ような線が数本はっきり入っている米です。

澁谷 張りがあるほうが、デンプンがしっかり詰まっていますね。

片山 そもそも大前提として、いまの日本で極端にまずい米はなく、アベレージのレベルが高い。その中で、僕がいつも言っている「米の美味しさ」を決める要素は、原料3割、精米3割、炊飯4割。どんなに上質な原料でも、コイン精米でやると美味しさが半減しますし、よい精米をしても適当に炊いたら魅力がなくなります。

小林 その通りで、生産者から食べ手の口に入るまでの工程はF1マシンと変わらないくらい多く、さまざまな要素が合わさっています。消費者はどうしてもブランドや産地だけに目を向けがちですが、米店で精米の違いを試してほしいですね。糠の残し具合や削りの強弱で同じ米でも表情が変わるので。

――米の専門店で購入するのは、知識がないとハードルが高く感じる人も多いと思います。
小池 専門知識はまったく必要ないですよ。普段食べている米と好きな料理を教えていただければ、さまざまな提案ができます。

小林 ブランドではなく硬さ、甘みなどの好みを伝えてください。

澁谷 細分化が進んでいるいまは、特に若い人はいろいろ食べて選ぶ方が多いですね。米店に行けば新しい美味しさに出合えるので、嗜好品のように楽しんでほしいです。

「高温対策米や多収米など日本の米は進化し続けています」と語る片山さん

――現代の米はどういった傾向がありますか?
小池 外側が硬くて食感がよく、中が軟らかくてちゃんと旨みがのっている「外硬内軟」の米が定着していますね。

小林 わかりやすく言えばいくらのような食感です。

片山 まさにそう。粒感があって歯離れがよい米ですね。ここ数年の傾向でいうと、地球温暖化の影響が大きい。本来、稲作は冷害との戦いなのですが、いまは逆に高温との戦いになっていて、各県の農業試験場はそれを計算して、上質な高温対策米が出てきています。あとは採れる量の多い多収米もよく見受けられます。

澁谷 高温対策米は10年以上かけて開発されているので、上質なものが多いですよね。

2024年は米の「大当たり年」!?

――2024年度の新米はいかがでしょうか?
小池 山形や新潟で長雨があったこともあり、農家の方に聞くと全国的に収量は多くないですね。

小林 フェーン現象で熱い風が日本海側に直撃したので、そのエリアは大変でした。

片山 収量は落ちていますが、農協などに聞くと、今年は去年より圧倒的に質がよい。大当たり年になる可能性があります。その背景には、田植えや収穫の時期を例年よりずらしたり、水の管理や圃場管理で高温対策をしたりした結果が実ったことがあると思います。

澁谷 特に宮城など東北はすごく採れていると聞きました。ただ、今年は「令和の米騒動」があって価格がすごく上がっていますが、収量が減っている影響で農家の方々の収益も減っている部分は心配ですね。私たちがもっと魅力を伝えていかなければならないと感じています。

line

 

王道から稀少銘柄まで、注目の米とは?
 
≫次の記事を読む

 

text: Discover Japan
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」

RECOMMEND

READ MORE