渋谷パルコ《Aya Ogawa 個展》
新作“Seed”が生活に穏やかさをもたらす
陶芸家・Aya Ogawa(小川綾)さんのうつわは、陶土や釉薬、炎の具合によって予期せぬ景色へと変化。窯変のおもしろさに心惹かれた小川さんが新作「Seed」を発表する。2024年11月2日(土)~10日(日)にかけて、東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.で行われる「Aya Ogawa 個展」で目の当たりに出来る、自然が織りなすありのままの美しさ、新作”Seed”の魅力とは?
Aya Ogawa (あや おがわ)
大阪で陶芸を学ぶ。デンマークで行われたワークショップへの参加などの経験を経て、拠点を東京へ移す。複雑な色や質感の作品が国内外で支持され、「第51回 欧美国際公募 フィンランド美術賞展2019」では優秀賞受賞。
釉薬で表現する
“変化”するおもしろさ
夢の中をふわふわと漂っているような、幻想的な雰囲気――。
Aya Ogawaこと小川綾さんのうつわと言えば、独自の質感で国内外に多くのファンをもつ。以前は「Midnight Stardust(夜空に輝く星屑の光)」シリーズをはじめ、青や白の世界観で人々を魅了してきたが、今回の個展では一転、新シリーズを発表する。
いま、なぜこのタイミングで? きっかけは、アトリエのリニューアルにあった。
「長年使っていたアトリエが手狭になってきたため、年明けから新たな空間で制作を再開しました。稼働するにあたり、あらためて原料を発注したところ、愛用していた陶土が手に入らなくなってしまって……」
陶芸に使う土は、中に含まれる土や鉱物の種類によって、焼き上がりが変わってくる。小川さんはもともと信楽の陶土を使用していたが、以前と同じ配合の土が入手できなくなってしまったため、これまでの作風を再現するのが困難になってしまったのだ。
「アトリエを新装したことだし、ならば新しい原料で再出発しようと。自然な流れでいまの作風にたどり着いた感じです」と小川さん。意識したのは、かつての青や白のイメージから離れ、素材そのものがもつ自然美を大切にすること。
「不慣れな原料をいろいろ掛け合わせ、実験を繰り返していくうちに、うつわが予想外の表情に窯変することに気づいたんです。これはおもしろいなって。意図的に美しさをつくるのではなく、ありのままの美しさを受け入れよう。そう思うようになり、新作『Seed』をつくりました」
深い緑色と錆茶色のグラデーションは、大地や植物の荒々しさを想起させる。釉薬の濃さやかかり具合、窯の温度によって表情が異なるため、つかみどころがない分、見る者を魅了する。
「Seed=種という名には、このうつわをきっかけに、受け取った方の中で何か新しいことが芽生えたら、との願いを込めました」
新作はほかにも霧景色の「Fog」と、色鮮やかな「Spring lights」シリーズも展開。何かと不安定な時代だが、その中で希望を見出し、柔軟に変化し続ける小川さん。次なるステージにも注目したい。
“対話”が作陶のアイデアになる
リニューアルしたアトリエでは、ワークショップを開催。
「生徒さんたちとのコミュニケーションも、創作の原動力になります」。
《Aya Ogawa》新たな世界に浸る
作品ラインアップ
Seed 大鉢 235㎜
存在感のあるうつわは、ホームパーティなど仲間とテーブルを囲むときに活躍する。口が広く、水盤や花入としても楽しめる。
Seed ボウル 80㎜
手のひらにすっぽり収まる心地よい丸み。お茶やコーヒーなどドリンクはもちろん、カップとして、おかず、デザートにも合う。
Seed 花器 rounded
自然の力強さを釉薬のグラデーションで表現。大胆な配色とは対照的に、ゆるやかな口元が優しい雰囲気。季節の草花を愛でたい。
Spring lights マグ
春の光のようなうららかな情景をイメージした作品。鮮やかな釉薬が混ざり合い、流れるさまはアートそのもの。ティータイムの相棒に。
Fog ピッチャー 高さ 150㎜
グレー釉の濃淡が表情豊か。よく見ると、口元部分はうっすら桃色に変色している。幻想的な雰囲気で、窓際に飾っても絵になる。
Fog 花器 Fog Unique
電動ろくろは使わず、手びねりで成形しているため、自由で大らかな風合いに仕上がっている。オブジェとしても楽しめる作品。
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個展作品の一部がオンラインで買える!
公式オンラインショップ
Aya Ogawa 個展
会期|11月2日(土)~11月10日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※初日に整理券配布予定です。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Misa Hasebe photo: Shimpei Fukazawa
2024年11月号「京都」