福岡・みやま市《筒井時正玩具花火製造所》
線香花火から広がる観光と伝統
|九州観光まちづくりAWARD2024 金賞 ものづくり部門
2024年、2回目を迎えた、JR九州が主催する「九州観光まちづくりAWARD」。食・ものづくり・賑わいなど、風土と人を生かしたさまざまな取り組みに触れることは、心震わせる感動の連続! 今回は、九州観光まちづくりAWARD2024 金賞 ものづくり部門受賞者「筒井時正玩具花火製造所」。95年以上、花火をつくり続け、熟練の職人による天然の素材だけを用いる線香花火づくりが、米づくりや宿運営にもつながっていく驚きの取り組みを追った。
“花火”が地域活性化のカギになる!?
福岡県みやま市は、国内20社ある花火製造会社のうちの4社がある、日本有数の花火の産地だ。そのひとつである「筒井時正玩具花火製造所」は、1929年の創業以来、現在は3代目・筒井良太さんが継承し、95年以上花火をつくり続けている。
同社は、火薬の製造も海外輸入に頼らず、天然の素材だけを使い、一貫して自社で製造しているのがこだわりだ。西日本に伝わる線香花火「スボ手牡丹」の国内最後の製造所であることでも知られている。
実は現在、線香花火の99.9%は中国産。花火の柄の部分となる藁が仕入れ先の廃業で手に入れられなくなる現況を受け、筒井さんはなんとか日本のものでつくりたいと、9年前に新規に就農。なんと「花火のための米づくり」をはじめたのだ。
さらに最近は公園や海岸が規制され、花火ができる場所が少なくなったことから、思いきり花火ができる宿「川の家」をオープン。また、花火を含む日本の原風景を伝えていきたいと新たな宿「山の家」も2023年に誕生した。
「ないならつくろう!」という筒井さんのバイタリティに、審査員一同圧倒されるばかり。ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんは、「線香花火を軸に、素材づくりのための米づくり、宿の運営など、こんなに広がっていくのかと感動しました」と賛辞を送った。
20年、30年経っても劣化することなく、熟成してさらにきれいな火花を放つ線香花火。筒井さんの情熱がどんな美しい火花を見せてくれるのか、これからの活動からも目が離せない。
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筒井時正玩具花火製造所
住所|福岡県みやま市高田町竹飯1950-1
Tel|0944-67-0764
営業時間|7・8月/11:00~17:00、1~6月、9~12月/13:00~17:00
定休日|7・8月/水曜、1~6月、9~12月/水・土・日曜、祝日
https://tsutsuitokimasa.jp
山の家
住所|福岡県みやま市高田町飯江1170
Tel|0944-67-0764(9:00〜17:00)
料金|1泊朝食付3万4300円~(4名利用時の1名料金、税込)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、VISA
IN|15:00
OUT|10:00
営業時間|Feuille/11:00~17:00(水・日曜休)、Nuit/18:00~22:00(要予約、水曜のみ営業)、山の家 鍼灸所/15:00~18:00(要予約、水曜のみ営業)
https://yamanoie-miyama.com
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4|大分・臼杵市「陶芸家・宇佐美裕之、料理家・宇佐美友香」
5|福岡・宗像市「ひのさと48」
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text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
Discover Japan 2024年10月号「自然とアートの旅。/九州」