ゆふ高原線の風土とつながる列車旅行
D&S列車《かんぱち・いちろく》でゆく九州旅
2024年4月に運行開始した、JR九州のD&S列車「かんぱち・いちろく」。福岡・博多から大分の由布院・別府をつなぎ、「ゆふ高原線(久大本線の愛称)」沿線の魅力を、空間・食・アートに詰め込んで発信! 何よりJR九州の従来のイメージとは異なる、ゆったりとした車内デザインが話題に。いままでにない新しい列車旅を教えてくれる。
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列車の中で、風土に触れ味わう旅。
緑豊かなゆふ高原線を走る黒い列車、その名は「かんぱち・いちろく」。
2024年4月に運行をスタートしたJR九州のD&S(デザイン&ストーリー)列車だ。博多からゆふ高原線を経由して、由布院・別府をつなぎ、月・水・土曜は、博多から由布院・別府へ向かう「特急かんぱち号」、そして火・金・日曜は別府・由布院から博多へ向かう「特急いちろく号」として、1日片道1便、約5時間をかけて運行する。
列車の名は、久大本線の開業に力を尽くした、八鹿酒造の3代目・麻生観八と、旧大分県農工銀行頭取・衞藤一六にちなむ。偉人の想いを継ぎ、ゆふ高原線に新しい風を吹き込むのは、沿線を元気にしたいと願う九州の人々だ。
コンセプトは、「ゆふ高原線の風土をあじわう列車」。1号車は大分・別府をテーマに火山や温泉を思わせる赤を使用。2号車は由布院・日田エリアがテーマの樹齢約250年の杉でつくった一枚板のカウンターが注目のラウンジ杉。3号車は福岡・久留米の平野や山々を思わせる緑と青を基調としている。
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列車に足を踏み入れると、JR九州のこれまでのイメージを一新する、ゆったりとしたデザインに驚く。手掛けるのは列車とは異業種の、鹿児島の住宅デザイン会社「IFOO」だ。大胆に大きく取った巨大な窓から、めくるめく沿線の風景が目に飛び込んでくる。特にプライベート感あふれるソファの座り心地のよさは、うっとりしてしまうほど。旅の楽しみとなる弁当は、福岡・大分の6つの名店が曜日ごとに担当。沿線の旬を織り込んだ料理は見た目も華やかで、滋味深く感動的だ。
さらに列車内には、大分を拠点とするアートNPO法人「BEPPU PROJECT」が監修する24点のアートが点在。ゆふ高原線からインスピレーションを得て生まれた作品が、まるで挿絵のように旅を彩ってくれる。
また、運行中にふたつの駅でおもてなしがあるのもうれしい。ホームで地元の人が旗を振って出迎えてくれ、駅周辺の名産品の販売も楽しめる。
そして車窓に流れる別府湾、由布岳、三隈川など、沿線の景色のなんと美しいこと! 感動にあふれる列車旅になるだろう。
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列車旅で訪れたい福岡の絶景宿
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Rail Data
◎特急かんぱち号
月・水・土曜/博多→(田主丸)→(恵良)→由布院→大分→別府
◎特急いちろく号
火・金・日曜/別府→大分→由布院→(天ケ瀬)→(うきは)→久留米→博多
※()はおもてなし駅。木曜は運休
Train Data
名称|かんぱち・いちろく
車両数|3両編成
席数|60席(ソファ・BOX席、畳個室、車椅子対応座席2枠あり)
施設|ラウンジ
商品概要|食事付き旅行商品
料金|大人1名1万8000円(座席)、2万3000円(畳個室)
※その他料金詳細は公式ウェブサイトをチェック!
お弁当メニュー
特急かんぱち号
月曜|「中洲松」和食(福岡)
水曜|「味竹林」和食(福岡)
土曜|「FUCHIGAMI」イタリアン(福岡)
特急いちろく号
火曜|「Tomo Clover 大久保食堂」フレンチ(大分)
金曜|「裏舌鼓」和食(大分)
日曜|「兎と亀」和食(大分)
text: Nozomi Kage photo: Kousaku Kitajima
2024年10月号「自然とアートの旅。/九州」