「九平次」の挑戦
ワインと日本酒の垣根を越えて
《日本酒界の開拓者「九平次」の挑戦》最終回は、久野九平治が目指す3つのことに焦点を当てた。業界の時計を巻き戻し、日本酒離れの打破を図る「九平次」の挑戦はまだまだ続く。
1.酒米を基準に日本酒を選ぶ
ワインの味わいが、ブドウの品種や栽培地のテロワールによって異なるように、日本酒も使っている酒米の品種や産地によって味が左右されるのだ。
「これまで日本酒は、造り=酒蔵にスポットが当たりがちでしたが、原料である米のビンテージやテロワール、セパージュ(品種)に注目して選ぶ時代になってくるでしょう」と久野さんは言う。
九平次で使う酒米は、栽培時期が晩生の山田錦と雄町の2種。「セパージュを体感してほしいので、すべての酒を単一品種で仕込んでいます。ぜひ自分の好きなセパージュを見つけて下さい」。
2.手仕事による酒づくりに立ち返る
九平次の日本酒の仕込みは、毎年11月〜5月。30人のスタッフ全員が酒造りの現場に携わる「職人」だ。
「事務職や営業職に徹するスタッフはいません。昭和のプロダクトから脱却し、手仕事による酒造りに戻したことで、多くの職人の手が必要となりました」と久野さん。
冒頭で触れた杉の甑による蒸米に限らず、麹づくりや発酵タンクへの運搬など機械には頼らない。発酵タンクも目が行き届く1トン仕込み用のものを使ったり、なるべく櫂入れはせずに酵母の力に任せたりと、「自然な造りを心がけています。醸造においては、先人達から学び、現代のフィルターを通した“温故知新“です」。
3.若き職人たちが活躍する活気ある日本酒業界へ
スタッフの平均年齢は28歳と、高齢化が進む日本酒業界において驚くほど若い構成となっている。久野さんは「造り手の世代が変わることも、ワインと日本酒の壁を取り払い、世界のマーケットで勝てる日本酒造りには重要なんです」と笑顔で話した。
文=本間朋子 写真=内藤貞保
2018年1月号 特集「ニッポンの酒 最前線!」
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