至福の島時間と伝統文化に親しむ
《星のや竹富島》
歌人・穂村 弘さんが竹富島・沖縄本島でリゾートホッピング
「夢中になるという休息」をコンセプトにした「星のや」。実は異なる文化背景がある八重山諸島と沖縄本島にある「星のや竹富島」と「星のや沖縄」を訪れるホッピング旅で、歌人の穂村弘さんに土地ごとの魅力を体験していただいた。まずは石垣港からフェリーで竹富島に渡り、「星のや竹富島」へ。
穂村 弘(ほむら ひろし)
歌人。1962年、札幌市生まれ。’90年に歌集『シンジケート』でデビュー。『短歌の友人』で伊藤整文学賞、『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。歌集、エッセイ集以外にも、詩集、対談集、評論集、絵本、翻訳など著書多数
「天国みたいなところだな、と思って」
抜けるような青空に、琉球赤瓦屋根が映える。「星のや竹富島」に到着した穂村弘さんを待っていたのは、時が止まったような島の原風景だった。石を積んで築いたグックと呼ばれる塀、まばゆい白砂の道。十数年前にはじめて訪れた竹富島に魅了され、以来、何度か旅しているという穂村さん。「天国みたいなところだな、と思って」と語る。
今年で開業10周年を迎える星のや竹富島。約6万6000㎡もの敷地に並ぶ48室の客室はすべて戸建で、島の伝統建築基準に沿って築かれた集落を形成している。注目すべきは、建築や家並みといった様式だけではなく、そこに息づく文化をも継承していることだ。
たとえば、夏季に実施される「海のカフー滞在」。「カフー」とは、「幸せ」を意味する島の言葉。アクティビティを通して海と密接にかかわってきた島の暮らしに触れ、海の恵みを体感する。マリンシューズに履き替え、竹富島シートレッキングへ。島で生まれ育った海人とともに浜辺や岩場を歩き、海や生物にまつわる話を聞く。「パイナップルに似た実はアダン。葉は籠編みに使います」。「流れ込む川がないし、ナマコが海水を浄化してくれるから、海がきれいなんですよ」。案内してくれた海人・上勢頭輝さんの言葉を通して、景色がいっそう鮮やかになる。古くから移動や漁に使われていた木造帆船「サバニ」にも今回特別に乗船させてもらった。
「星のや竹富島」の敷地内を散策すると、青々とした畑が広がっていることに気づく。2017年秋に畑づくりがはじまり、伝統的な農作物が大切に育てられているのだ。スコップ状の道具「ピラ」でそっと掘り返せば、ピン(島にんにく)やダッキョ(島らっきょう)が顔をのぞかせた。豊潤な実りが、島の食文化を明日につなぐ。
竹富は芸能の島でもある。熟練の演者を客室に招き、三線を手ほどきしてもらえるのは、ここならではの贅沢だ。島言葉で歌われる民謡「安里屋(あさどや)ユンタ」に耳を傾けながら、お囃子の「サァ ユイユイ♪」を一緒に口ずさむ穂村さん。窓を開け放った客室を南風(ぱいかじ)が吹き抜け、穏やかな午後のひとときが過ぎてゆく。
竹富島での最終日は、少し早起きを。朝焼けを見ながら浜辺で「よんなー深呼吸」を体験し、心身を整える穂村さん。「ここで毎朝体操していたら、100歳まで長生きできそうだなぁ」とつぶやき、“天国”の島を後にした。
穂村弘さん 星のや竹富島での一首
「花の数、蝶の数、光る波の数、神さまだけが知っている数」
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星のや竹富島
住所|沖縄県八重山郡竹富町竹富
Tel|0570-073-066(9:30〜18:00 星のや総合予約)
客室数|48室
料金|1室11万2000円〜(税・サ込)
カード| AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00 OUT|12:00
夕食|洋食・和食(レストランまたは部屋)朝食|洋食・和食(レストランまたは部屋) アクセス|竹富港から送迎あり
施設|プール、ラウンジ、レストラン、スパ
text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
2022年7月号「沖縄にときめく」