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智積院、妙心寺桂春院、大徳寺真珠庵…
《さまざまな用途で堪能できる、秋の京都の特別拝観》

2021.10.26
智積院、妙心寺桂春院、大徳寺真珠庵…<br><small>《さまざまな用途で堪能できる、秋の京都の特別拝観》<small>

この秋に京都市中を訪れるなら、キーワードは“予約”。一度は訪れたい定番スポットから、いまだから見られる特別拝観まで、事前予約ならゆとりをもって楽しめます。今回は、こんなときだからこそ愉しめる、京都のさまざまな名所をご案内します。

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ひと気の少ない朝におすすめ

京都の喫茶文化は襖絵にも!?
「智積院」

真言宗智山派の総本山である智積院では、開門前の朝の境内を僧侶の案内で拝観できる特別イベントが開催中。通常は非公開の文化財が公開される貴重な機会なので、ぜひ予約して目にしてほしい。注目はやはり「宸殿」の襖絵だ。近代絵画の雄、堂本印象の手による『婦女喫茶図』は一見お寺の襖絵とは思えないモダンさが印象に残る。1958年の作品で、テーブルや椅子といった西洋のモチーフも取り入れられ、京都の喫茶店文化の伝統もうかがえる。ほかにも桃山時代を代表する長谷川等伯の手による絢爛豪華な障壁画も間近に見ることができる。

早朝だからこそ体験できる静かで涼しい時間。江戸初期に造営された庭園は国指定の名勝にも登録されており、「利休好みの庭」ともいわれる美しさで見どころがたくさん。室内や縁側から、ゆったりと眺められる。イベントは限定御朱印付きで、拝観後は宿坊智積院会館で、焼き魚や卵焼きなどの和朝食がいただける

長谷川等伯と堂本印象の絵画で彩られる
智積院 早朝特別拝観
開催日|2021年11月13日(土)〜2022年3月31日(木)の限定日
住所|京都府京都市東山区東瓦町964
Tel|075-541-5361(智積院 教化部教宣課)
拝観料|4300円
拝観時間|8:00〜(所要時間は約2時間)
※参加希望の2日前10:00までに要予約

今秋は見られない街の風物詩がここに!
「平安神宮」

平安神宮の大祭として、毎年10月22日に開催される「時代祭」。京都の三大祭のひとつにも数えられ、明治維新から延暦時代まで時をさかのぼりながら、各時代を象徴するスタイルに扮した京都市民が街を練り歩く。衣裳やヘアスタイル、祭具の一つひとつに至るまで、正確に再現されているのが見どころだ。2021年は残念ながら行列巡行の中止が決定しているが、特別イベントを予約すれば貴重な衣裳や祭具が見学できる。朝の静かな時間帯に神職の案内とともに名勝・神苑や通常非公開のエリアをめぐって、受け継がれてきた歴史の重みを感じよう。

※緊急事態宣言などの状況により、特別拝観の開催を見合わせる場合があります。詳しくは各問合せ先に確認ください。

神職の案内でめぐる
名勝平安神宮神苑と時代祭衣裳・祭具
開催日|終了(9月19日、10月3日)
住所|京都府京都市左京区岡崎西天王町97
Tel|075-761-0221(平安神宮)
拝観料|3000円
拝観時間|9:00〜(所要時間は約1時間半)
※参加希望の2日前10:00までに要予約

幻想的に照らされた夜を過ごしたいあなたに。

まるで貴族!?夜の境内で優雅に遊ぶ
「妙心寺桂春院」

©FUMITO SUZUKI

江戸時代初期に創建された桂春院の見どころは、千利休の流れをくむ茶室と庭園。その魅力を静かに堪能できる夜の時間の特別イベントが開催される。「幽玄の美に触れる夜の拝観」と題したプランは、光の量を抑えた必要最低限のライティングで、夜の境内の美しさが引き出されるのが魅力。桂離宮の作庭者と推測される玉淵坊による名勝庭園もライトアップ。イベントでは京都吉兆の特別松花堂弁当をいただける食事付きのプランもあり、雅楽の生演奏も楽しめるなど、五感をフルに刺激しながら、贅沢なひとときを過ごすことができる。

桂春院の方丈4室にわたって残されている江戸初期に活躍した京狩野の絵師、狩野山雪の筆による障壁画。今回のプランでは代表的な障壁画『松に月図』を背景にし、笙の演奏に耳を傾ける時間も設けられている。ライトアップされた庭園の幻想的な風景と、雅楽の神聖な調べがマッチし、特別な時間となるはずだ

妙心寺桂春院 幽玄の美に触れる夜の拝観
開催日|〜12月5日のうちの金・土・日曜、祝日(休止日あり)
住所|京都府京都市右京区花園寺ノ中町11
Tel|075-231-7015(京都春秋)
拝観料|食事付2万3000円、食事なし1万2000円
拝観時間|17:00〜(食事付)、17:15〜、19:25〜、19:45〜(所要時間は約1時間)
※参加希望の4日前までに要予約

寝坐禅と読経で心身を浄化
「興聖寺」

1603(慶長8)年に虚応円耳(きいんえんに)を開山として創建された臨済宗興聖寺派の本山・興聖寺では、心と身体を浄化する1日10名限定の特別プランが登場。夕方から約3時間、たっぷり時間をかけて読経や坐禅、精進料理が体験できる。単なる見学でなく自ら読経や坐禅を体験することで、お寺の由緒や教えをより深く理解できるようになるはず。精進料理の後には抹茶とお菓子もいただける。プランの最後は、神秘的な苔庭を眺めながらの寝坐禅の体験だ。寝転んだ状態で住職のマントラを聴きながら、よりリラックスして心身を解放しよう。

イベントプランは方丈で番茶をいただくことからはじまる。一服した後は本堂にて般若心経を一巻読経。自ら声に出すことで心も身体も自然と禅宗の世界に入っていける。坐禅体験では基本的な呼吸法について学ぶところからはじめるので、未経験者でも安心だ。食事やお菓子、寝坐禅まで、充実の3時間を過ごそう

臨済宗 興聖寺
苔庭ライトアップと夜坐禅
開催日|終了(9月の第2・4土曜、日曜を除く毎日)
住所|京都府京都市上京区堀川通寺之内上ル
Tel|080-7723-9031(寒松庵)
拝観料|1万円
拝観時間|17:30〜(所要時間は約3時間)
※1日10名限定。前日16:00までに要予約。10月以降、プランを一部変更予定

京都のルーツで疫病退散!

京都有数のパワースポットであらゆる厄災を払う
「上賀茂神社」

正式名称を「賀茂別雷神社」といい、神代の頃に御祭神が降臨されたと伝えられる、京都の神社仏閣の中でも最も歴史のある社のひとつ。御祭神である賀茂別雷大神はあらゆる厄災を払うとされ、祭殿の前に守られた円錐形の立砂は御祭神が降臨された山を模しておりパワースポットとして名高い。古代の豪族であり、御所から長らく京都の水の番人の役割を命じられていた賀茂氏の氏神でもある。特別公開で拝観できるのは、国宝にも指定されている御祭神を祀る「本殿」と常設の仮殿である「権殿」。長らく京都の街を見守ってきたまさに京都のルーツともいえる神社でパワーを感じながら、疫病退散を願おう。

広大な境内に建ち並ぶ、重厚な印象の茅葺きの社殿。ふたつの国宝と41の重要文化財を有し、21年に一度の式年遷宮によって修復が繰り返されてきた。「本殿」は神社建築の典型である流造で、屋根は檜皮葺。「権殿」は式年遷宮などの場合に使われる広大な境内に建ち並ぶ、重厚な印象の茅葺きの社殿。ふたつの国宝と41の重要文化財を有し、21年に一度の式年遷宮によって修復が繰り返されてきた。「本殿」は神社建築の典型である流造で、屋根は檜皮葺。「権殿」は式年遷宮などの場合に使われる

上賀茂神社(賀茂別雷神社)
本殿・権殿 特別公開
開催日|終了(9月13日〜30日の毎日)
住所|京都府京都市北区上賀茂本山339
Tel|075-213-1717(京都市観光協会)
拝観料|一般800円、小学生400円(拝観時間|10:00〜16:30所要時間は約45分)
※空きがあれば予約なしでも拝観可

賀茂氏ゆかりの水のパワーで無病息災を願う
「下鴨神社」

上賀茂神社とともにこの秋訪れたいのが、同じ賀茂氏の氏神を祀る下鴨神社(正式には「賀茂御祖神社」)。神社境内の南に広がる原生林「糺の森」は古くから京都の水源として知られ、賀茂氏はかつて京都の水の番人としての役割を果たし、街の発展に大きくかかわってきた。下鴨神社の境内にある湧水池、御手洗池ではいまでも老若男女が足を浸して無病息災を祈願することもあり、現代に願いたい疫病退散にもぴったりだ。また、京都三大祭のひとつに数えられる上賀茂・下鴨両社の祭礼「葵祭」にも疫病を鎮めるという意味合いがあり、両社はぜひセットでめぐりたい。上賀茂神社とともにこの秋訪れたいのが、同じ賀茂氏の氏神を祀る下鴨神社(正式には「賀茂御祖神社」)。神社境内の南に広がる原生林「糺の森」は古くから京都の水源として知られ、賀茂氏はかつて京都の水の番人としての役割を果たし、街の発展に大きくかかわってきた。下鴨神社の境内にある湧水池、御手洗池ではいまでも老若男女が足を浸して無病息災を祈願することもあり、現代に願いたい疫病退散にもぴったりだ。また、京都三大祭のひとつに数えられる上賀茂・下鴨両社の祭礼「葵祭」にも疫病を鎮めるという意味合いがあり、両社はぜひセットでめぐりたい。

特別拝観では、賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と玉依媛命(たまよりひめのみこと)を祀る東西2棟の美しい流造の「本殿」を間近で拝観できる。また、神社建築としては珍しく、御供物を調理していた「大炊殿」も拝観コースに含まれている

下鴨神社(賀茂御祖神社)
本殿・大炊殿 特別公開
開催日|終了(9月13日〜30日の毎日)
住所|京都府京都市左京区下鴨泉川町59
Tel|075-213-1717(京都市観光協会)
拝観料|一般800円、小学生400円
拝観時間|10:00〜16:30(所要時間は約45分)
※空きがあれば予約なしでも拝観可

神社仏閣でアートを独占!?

釣りバカ日誌やファイナルファンタジーから一変!?
「大徳寺真珠庵」

型破りな禅僧・一休宗純ゆかりの寺院。寺宝の曽我蛇足や長谷川等伯による襖絵の修復を機に、2018年に約400年ぶりに新調された襖絵では制作者に『釣りバカ日誌』の漫画家・北見けんいち氏やファイナルファンタジーのアートディレクター・上国料勇氏を起用し話題に。そして今年修復が完了。現代アートから往時アートへ再びの模様替えを記念した特別公開を見逃すな!

重要文化財に指定されている書院「通僊院」には、土佐光起の筆による『花鳥図』がある。このほかにも曽我蛇足、長谷川等伯による重要文化財の襖絵が修復を終え、特別公開される

重要文化財 方丈障壁画
修復完成記念 真珠庵 特別公開
開催日|〜12月5日(水曜、11月4日を除く)
※11月3日は開催
住所|京都府京都市北区紫野大徳寺町52
Tel|075-231-7015(京都春秋)
拝観料|2000円
拝観時間|9:30〜15:30(所要時間は約45分)
※空きがあれば予約なしでも拝観可

刀剣乱舞でも描かれたイケメンたちに会いに行く
「北野天満宮」

特別拝観で見られる刀の中には、日本刀の名刀を擬人化して描くゲーム「刀剣乱舞」でも描かれ、ファンを増やしたものもあり、髭切は人気キャラクター。ここに行けば、刀界のイケメンに会える!?

全国にある天満宮の総本社であり、学問や芸能の神さまとして知られる菅原道真公を御祭神に祀る北野天満宮。武神でもあったことから多くの刀や鎧などが武士により奉納され、宝物殿に収められてきた。秋の特別公開では名刀約30振を一挙公開。平安時代に鬼を切ったと伝わる「髭切」(上)や金蒔絵の鞘に浅葱色が美しい「恒次」(下)など、伝説の名刀を見逃す手はない。

北野天満宮 宝物殿 特別公開
開催日|終了(9月13日〜30日の毎日)
住所|京都府京都市上京区馬喰町
Tel|075-213-1717(京都市観光協会)
拝観料|一般1000円、小学生500円
拝観時間|9:00〜16:30(所要時間は約30分)
※空きがあれば予約なしでも拝観可

小野小町の人生からモテる秘訣を学ぶ!?
「隨心院」

隨心院は、絶世の美女として有名な平安時代の歌人・小野小町が晩年を過ごしたとされる場所。能の間には、京都の絵描きユニット・だるま商店が小町の人生を描いた襖絵『極彩色梅匂小町絵図』がある。この特別拝観では小町の生涯を追うとともに、僧侶の案内付きで、表書院のだまし絵『四愛図』や本堂に安置されている仏像を拝観できるプランを用意。

僧侶のご案内でめぐる
小野小町ゆかりの隨心院 特別拝観
開催日|〜2022年3月31日(不定休)
住所|京都府京都市山科区小野御霊町35
Tel|075-571-0025(大本山 隨心院)
拝観料|3000円
拝観時間|10:00〜、14:00〜(所要時間は約60分)
※各時間6名まで

 

京都の美しき秋の庭園で心を浄化

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text: Miki Yagi plan: A2WORKS
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」

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