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「エネコ軽井澤」スペイン三つ星店が実践するサステナブルレストラン【後編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン

2021.2.20
「エネコ軽井澤」スペイン三つ星店が実践するサステナブルレストラン【後編】<br><small>犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン</small>

どんな小さな店でも、どんな辺鄙な場所でも、『ホンモノ』であれば、必ず人は引き寄せられる。今月も強烈な一店に出合いました!今回は、長野県軽井沢市にあるレストラン、「エネコ軽井澤」についてご紹介します。

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今年、最も話題のニューオープン

左から小林シェフ、マテオシェフ、エネコシェフ、磯島シェフ。日本とスペインを往来し、精度を高める「チームエネコ」。技術と情報を常に共有

軽井沢では、夏が近づくと新しい店が話題になるが、お客の評価も厳しい。中途半端な店はすぐに見向きもされなくなるという。今年はGW直前4月25日に「エネコ軽井澤」がオープンしたというニュースがあっという間に広まった。ランチ5000円、ディナー9500円という価格にかかわらず、たちまち予約が殺到したという。昼、夜とリピートのゲストも多く、どうやら別荘族の評価は「合格」だったようだ。

「エネコ軽井澤」がオープンした場所は、軽井沢駅から車で分ほどの雲場交差点に建つウェディングパレス「ヴィラ・デ・マリアージュ軽井澤」の中。実は「エネコ東京」、「エネコ軽井澤」とも経営は「プリオホールディングス」という、関東を中心に20を超える式場をもつウエディング事業のフロントランナーなのだ。

レストランのゲストはまずグリーンハウスに案内される。ハーブや花にあふれた空間で食前酒を楽しんでいると、そこにピクニックバスケットが届く。中には色とりどりのフィンガーフードが!この心憎い演出に誰もが目を見張り、盛り上がる。その流れでメインダイニングへ。

室内は22席のゆったりとした空間。テーブルにはクロスがなくカジュアルな雰囲気だ。オーダーのとき注意したいのがコース料理のほかに、オプション料理があること。三つ星レストラン「アスルメンディ」のシグネチャーメニュー、有機卵とトリュフ(プラス1500円)や、前ページで紹介した豆料理など追加できる料理もあるのではじめてならば、ぜひ!

エネコシェフの料理は生まれ育ったバスク地方の料理をベースに、繊細で現代的な表現が特徴だ。氏がよく使う表現のひとつに「エマルション」がある。これは2種類の液体が微粒子状になって分散している状態。トマトやハーブなどを乳化させてソースのように使用し、フレッシュな香りを生かしている。だからコースを食べ終えた後もスッキリ。それゆえ幅広い年代に支持されているのも納得する。

ある日のディナーコース

北陸の魚介と信州の野菜をベースに考えられたメニュー。1年目はじっくりと素材探し。豆という新しい素材もテーマのひとつに入っている。今後、徐々に地域性が出てくるのが楽しみ。ディナーは9500円。

【ピクニック】
鰻のブリオッシュ、オレングラ、カイピリーチャ

オレングラはフォワグラとオレンジの組み合わせ。カイピリーチャは、ブラジルの蒸留酒・カイピリーニャでつくるカクテルのバスク版。

【前菜】
小海老、野菜のジュレ、トマトのグラニテ

トマトがテーマの前菜。野菜のジュレの心地よい酸味はトマト本来の味に白ワインビネガーをプラスしたもの。透明に見えるがすべてトマト味。

【オプション】
有機卵とトリュフ(プラス1500円)

地元の新鮮な卵黄から半分中身を吸い取って、トリュフの香りを注入。口に含み軽く歯を立てると、一気にトリュフの香りが爆発!

【温前菜】
バスク風キノコ

陶器で熱々の状態で出るアヒージョもエネコはガラスのうつわに盛りつける。エノキ茸をパスタに見立てフォークで巻いて。黄色のボールは卵黄の天ぷら。

【魚料理】
スズキ ハーブのエマルション 海の泡

グリーンのエマルション(乳化させた液状のもの)はシブレット、海の泡はアサリのジュに、実はウニの香りも加えてある。

【メイン】
牛フィレ トマトのエマルション 松の実

牛フィレの軟らかいこと!トマトのエマルションの酸味・旨みと、唐辛子の辛みのバランスも絶妙。香ばしい松の実がアクセント。

プチフール

ボックスからバジルとヨーグルトのロリポップ、チョコレートのヌーベ、抹茶のボンボン、フランボワーズとミントのマカロン、柚子のゼリー。

【デザート】
苺、マシュマロ、バラ

マシュマロにイチゴのシートをのせたデザートの皿に、バラを香らせて味わう演出付き。ダイニングいっぱいに幸せな空気が広がる。

充実のペアリング!

ワインペアリングはスペイン産と長野産のワインをセレクトして変化のある5種7000円
日本酒は右から、「真澄山花」、「宮坂MIYASAKA」、「大雪渓大吟醸」の3種3500円
お茶3種は「紅焙」、「AWABANCHA」、「TSUYUHIKARI」3000円など、ペアリングは大充実。グラスもそれぞれに用意している

エネコ軽井澤(えねこかるいざわ)
住所|長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢雲場2200
Tel|0570-08-4122
営業時間|11:30~14:00(L.O.)、17:30~20:00(L.O.) ※2019年8月30日までの期間限定営業
定休日|火曜(土・日曜、祝日は要問い合わせ)
料金|ランチ5000円、ディナー9500円(税・サ別)
https://eneko.tokyo/jp/404

【SDGs視点で読み解く】
環境にやさしいエネルギーを作る長野県

2021年3月現在
解説協力:サステナブル・ラボ株式会社

人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール7の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」に注目してみると、長野県は「世帯当たりの太陽光発電設置割合(10kW 未満の太陽光発電設備導入件数/世帯数)」、「太陽光を利用した発電機器がある住宅の割合」がともに全国2位です。

クリーンなエネルギーが日本の中でも比較的普及している長野県は、エネコ軽井澤が掲げるエネコシステムの考え方にマッチする風土が備わっている地域。

エネコの出身地スペインは2020年の自然エネルギー発電率が40%を超え、とくに起伏のある地形を活かした風力発電が盛んな国。一方、日本国内の自然エネルギーの全発電電力量に占める割合は20.8%(2020年)です。自然への感謝と環境への配慮を大切にしているエネコの理念が、今後の日本のサステナブルなレストラン経営にインスピレーションを与えてくれそうです。

詳しいデータはこちら

text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2019年7月号『うまいビールはどこにある?』


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