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料理ごとに選ぶ!冬野菜の王様、大根大研究【前編】

2020.12.6
料理ごとに選ぶ!冬野菜の王様、大根大研究【前編】

冬に食べ頃を迎える野菜で、真っ先に思い浮かぶのが大根。実は日本各地にこんなにたくさんの種類があるって知ってましたか?品種で選ぶ楽しみを、前後編記事にてお教えします。

まさに“冬野菜の顔”というべき存在の大根。その起源は、日本から遠く離れた地中海や中東アジアとされ、弥生時代に渡来人によって伝えられた。もともと辛みが強く薬のような味わいで、身体を温め、整腸作用もある野菜として重宝されていた。このような特徴をもった大根は、秋田の「松館しぼり大根」や長野の「信州鼠大根」など国内の山間部で今でも栽培されている。

現在、在来する地方品種だけでも100種類を超える数の大根が栽培されているが、それは日本の土壌が軟らかく根が伸びやすい良環境であったことが大きい。一般的に大根は地下に根を伸ばすが、よく耳にする「青首大根」は、胚軸が地上に伸びる性質をもっているため、引き抜きやすく生産性も高いということで、現在の栽培の主流を占めている。それに対し東京の「大蔵大根」や神奈川の「三浦大根」など「白首大根」と呼ばれる在来種は、地下に根を伸ばす性質のため生産性・収穫作業の効率ともに高いとはいえず、つくり手の数も年々減ってきているのが現状だ。

ところで、なぜ大根は冬になると美味しくなるのか? それは、寒さにより大根が感じる“ストレス”が関係しているという。大根の氷点はマイナス4度。寒さにより土中の温度が下がると細胞内の水分濃度が低い場合、凍結してしまい、細胞が破壊されてしまう。それを防ぐために、大根自身が細胞内で糖質を生成し、凍結を防ぐ。これが甘さの秘密なのだ。

今回は、さまざまな品種をオススメの調理法別に紹介していこう。味わいや食感の違いを生かした料理で、冬のもてなしの食卓をワンランクアップさせたい。

大根そのものの味を楽しむ!
生で味わいたい品種

シャキシャキとした食感を楽しんだり、鮮やかな色みをサラダのアクセントにしたり。生食に適した大根をご紹介。

その評判は湘南界隈に留まらず……
三浦大根(みうらだいこん)/神奈川県

重さは約3㎏、長さは約60㎝まで成長する大きな大根。中央部から先端にかけて太く膨らむかたちにも特徴がある。肉質はキメが粗く、水分が多いので柔らかい。つまり、煮込み料理にはあまり適さない。正月料理に欠かせない「なます」をつくるのに最適な品種。

これ、本当に大根ですか?
ビタミン大根/神奈川県

その名の通りビタミンを豊富に含む。中国原産の外来種で、長さは約20〜30㎝。全体の3分の2は地上に伸び、その部分が鮮やかな緑色に染まる。後味に若干の辛みが残るが甘みが強いので、サラダ向き。鮮やかな色合いは、華やかなアクセントにもなりそう。

ヨーロッパ生まれの有色系大根
ラディッシュ/神奈川県

16世紀にヨーロッパで開発され、明治時代に日本にやってきた。別名「廿日(はつか)大根」とも呼ばれる。きめ細かい肉質と、しっかりとした辛みが特徴。美しく華やかな色合いを生かしてサラダにするのがおすすめ。酢の物にしても美味しい。

なんとサラダ専用の大根!
レディサラダ大根

神奈川県三浦市で三浦大根と欧米産の大根をかけ合わせて開発された大根。最近ではスーパーの野菜売り場でもしばしば見かける。別名「赤大根」とも呼ばれ、シャキシャキとした食感はまさにサラダ向き。肉質はキメが粗いが、水分が多くフレッシュな味わい。

切ると中は真っ赤です
紅芯大根(こうしんだいこん)/神奈川県

中国原産の外来種。まるでカブのように丸いかたちが印象的。緻密で硬い肉質で、キメが粗い。辛みはないが、有色系大根独特の雑味が残る。赤い色は加熱すると消えてしまうので、生のままサラダや浅漬けにするのがおすすめだ。

似てるけど違う野菜、大根とカブの違いって?

さまざまなかたちの大根を見ていると、どことなくカブに似ているものもあり「いったいどこが違うの?」と疑問に思う人もいると思う。シンプルにいうと、大根は漢字で「太った根」と書くことからもわかるように根が太ったもので、一方のカブは茎が太ったものだ。青首大根は葉そばの青くなる部分が地上に出るが、ここは茎であり、白い部分が根となるのである。

 

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text:Discover Japan special thanks:Sakafumi Matsumoto
2012年12月号 特集「冬の味覚でおもてなし」


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