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温かみがあり、やさしい村木雄児さんの「片口」
高橋みどりの食卓の匂い

2020.9.20
温かみがあり、やさしい村木雄児さんの「片口」<br><small>高橋みどりの食卓の匂い</small>
食卓のふたつのシーン。醤油を常時入れておく醤油差しは使わず、その都度。村木さんの小さな肩口に。粉引の片口は、めんつゆや大根おろしを入れたり、酒つぎにも盛り鉢にも、と使いやすい大きさで出番が多い

スタイリストであり、いち生活者でもある高橋みどりがうつわを通して感じる「食」のこと。五感を敏感に、どんな小さな美味しさ、楽しさも逃さない毎日の食卓を、その空気感とともに伝えます。

高橋みどり
スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。近著「ありがとう!料理上手のともだちレシピ」(マガジンハウス)など

村木雄児さん
1953年、神奈川県生まれ。東京デザイナー学院、瀬戸の愛知県立窯業訓練校で陶芸を学び、卒業後には徳島県鳴門市の大谷焼の窯元に入社。1980年、伊東市に独立開窯。近年は登り窯で焼成。粉引、三島などのうつわを手掛ける

村木雄児さんのうつわの基礎知識

肩口
口縁の片方に口を付けた片口は、樽や甕から酒や醤油などを移し分ける道具として古くから用いられた。酒つぎなど注器としての用途以外に、盛り鉢、花器、杯など、サイズや形状により自在な使い方ができる。

村木さんの小さな片口
小ささゆえに、「うんと渋く」など思い切った表現ができるが、凝縮された印象になるため、やり過ぎて小さいもののかわいさがなくならないよう村木さんは心掛けている。たれやコーヒーミルクピッチャーに。

村木さんの「唐津」
村木さんは唐津に潔さを感じるという。ろくろでひいたまま、さっと削ったままでよしとする、李朝ものにも通じる飾らなさに憧れ、そういう思いでつくる。唐津の砂の多い土を、常滑の土などと混ぜて使っている。

 

村木雄児さんの片口が好きだと言う高橋さんに、「俺、片口だけつくっているわけじゃないんだけどなあ」と村木さん。30年近くつきあう親しさからでる軽口だ。でも工房を訪れたり、深く話すようになったのは、割と最近のこと。二人にとって大切な存在だった、陶芸家の故・青木亮さん。思い出や、当時のことを語り合える仲だ。青木さんに比べて、村木さんは自分から交際を広げるタイプではなかったと自認する。だが数年前、薪窯を気築いたことで。窯焚きを手伝う仲間が集い、年の離れた後輩とも酌み交わすように。

「50代後半から世界が広がって、今が一番楽しいよ」と言う。自身も昔、仲間がよく蟹江良二さんの手伝いに行った。弟子ではないが、その生き方、土に対する思い、何よりも心の動きをぶつけるようにものづくりをおもしろがる姿勢に影響を受けた、「心の師匠」だ。

温かみがあり、やさしい、と評される村木さんの粉引。つくり続ける片口も、その時々の村木さんが造形に表れ、大きさやラインは少しずつ違う。今が素直に出てるから、裸にされるような恥ずかしさがある、と村木さん。そのうつわには「人間臭さが練り込まれている」と高橋さんは感じる。

小さな片口を、醤油差し代わりにしている高橋さん。そんな風に、うつわを銘々が好きな見立てで楽しむのは、たぶん日本だけ。だからこの仕事はおもしろい、と村木さん。いくらつくっても飽きない、そう語る人のつくるうつわは、毎日使いたくなる顔つきをしている。

text&styling : Midori Takahashi photo : Atsushi Kondo
2018年9月号「縄文人はどう生きてきたか。


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