「アトリエ 二キティキ」欧州の優れた玩具を伝え続ける玩具店
大熊健郎の東京名店探訪
「CLASKA Gallery & Shop “DO”」の大熊健郎さんが東京にある名店を訪ねるシリーズ《東京名店探訪》。今回は50年近くにわたって歴史あるヨーロッパの玩具を紹介してきた玩具店「アトリエ 二キティキ」を訪れた。
「CLASKA Gallery&Shop “Do”」 ディレクター。国内外、有名無名問わずのもの好き、店好き、買い物好き。インテリアショップ「イデー」のバイヤー&商品企画、「翼の王国」編集部を経て現職。
www.claska.com
幼年時代の思い出となると実に心許ない。どんな玩具で遊んでいたか。覚えているのはウルトラマンや怪獣の人形とか、仮面ライダーの変身ベルトをつけて「変身!」とポーズをとった写真が残っているので、だいたいそういうもので遊んでいたのだと思う。もし今回紹介する店にあるようなおもちゃに囲まれて過ごしていたら、きっとデザイナーにだってなれていたかもしれない……。
賑やかな吉祥寺の繁華街を抜け、住宅地へと差し掛かるあたりまで歩くと、大きなクマのぬいぐるみがディスプレイされたウィンドウが目に入った。どこかおまじないのような響きをもつその店の名はニキティキ。およそ半世紀にわたり、スイスやドイツ、北欧などの自然素材を使った優れた玩具を紹介し続けてきた玩具店である。
アトリエニキティキのはじまりは1971年。創業者である西川敏子さんがドイツの美大に留学していたとき、現地で出合った素晴らしい木製玩具に魅了されたのがきっかけだ。日本の子どもたちに伝えたいという西川さんの熱意あふれる申し出を最初に受け入れてくれたスイスのネフ社をはじめ、7社の商品を扱うことから事業はスタートした。
日本で紹介するのははじめての上に当時の為替事情により商品も高価だったため、最初は苦労したという。けれども玩具の価値を理解し宣伝してくれたデザイナーの存在や、百貨店での催事の成功などにより、ニキティキという名前は次第に広まっていった。
さて、久しぶりに訪ねた店に入ると、気になるモノが次々と目に飛び込んできた。グラフィカルで洗練されたネフ社の木製玩具の美しさ。前から欲しかったドイツのケーセン社のブラウンベア。小さい頃親戚の家で遊んだ汽車のおもちゃがスウェーデンのミッキィ社のものだと知ってうれしくなったり。
と、年がいもなく一人大興奮。ただ童心に返ったというのではない。いま、大人になった目で眺めてもそれぞれの玩具が美しくて、素晴らしくて、感性を刺激してやまないのである。
デジタル全盛のこの時代に、こうした歴史あるヨーロッパの玩具が、いまも自国で大切につくり続けられていること自体に感動してしまう。つくり手の玩具に対する強い信念と、その価値を認め、一人でも多くの人に伝えたいというニキティキのような届け手がいることにただ感謝したい。
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3
TEL:0422-21-3137
営業時間:10:00〜19:00
定休日: 木曜
URL:www.nikitiki.co.jp
文=大熊健郎 写真=鈴木真貴