建築家・中村拓志の自邸
後編|森と家族がゆるやかにつながる2階建て
住宅からホテル、公共的な施設まで幅広い建築設計を手掛け、木とともに生きる佇まいと居心地を追求してきた建築家の中村拓志(なかむら ひろし)さん。長い年月をかけて構想し実現した自邸「巡礼の家」を通し、都市から森へと心身が還っていく、木の家の物語をひも解く。
中村拓志(なかむら ひろし)
1974年、東京都生まれ。鎌倉と金沢で少年時代を過ごす。明治大学大学院修了後、「隈研吾建築都市設計事務所」を経て2002年、「NAP建築設計事務所」を設立。現在、明治大学理工学部客員教授。代表作に「Ribbon Chapel」(2013年)、「狭山の森礼拝堂」(2014年)など。「ウェスティン都ホテル京都 佳水園」の改修(2020年)を手掛けるなど、近年は伝統建築や庭園文化の現代的な再構築にも取り組んでいる。
〈1F〉
家族の様子がわかるキッチン

白を基調としたキッチンには厚み60㎜のシオジ材を用いたハイカウンターを併設。家族が自然と集まる中心としての役割を担う。
キッチン脇にはキッズルームを

幼い子どもが遊び、将来は勉強できるキッズルーム。カウンターテーブルにはナラの一枚板を使用。南の庭には果樹を植えた。
〈2F〉
窓を開け放ち森林浴を愉しむ浴室

床と壁には美しい石目が連続する花崗岩を敷き詰める。腰壁から上にはガラス塗装を施した檜のリブ材を回した半露天風呂。
外の緑と連続性を
もたせた洗面脱衣所

緑がかった大理石の天板が、窓の外に広がる森の色と静かに調和する。壁面収納の三面鏡でも、外の緑の景色を映している。
シンボルツリーを借景に
柔らかな光が回る主寝室

朝に目を覚ますと隣家は視界に入らず、庭木の緑が立ち上がって見える。天井には柔らかなアールを設け、光を優しく回す。
外観と呼応しながら
木で覆われた子ども部屋

子ども部屋の天井には外壁と呼応するマツのリブ材を施し、窓辺に組子障子を設置。左の壁紙の絵柄は、長男自ら選んだもの。
光と緑の景色を取り込む工夫

左)書斎からライブラリーを見る
リビング奥の階段では、光が柔らかく回り込むように壁の角に丸みをもたせた。書斎からはライブラリーを望み、ハンス・J・ウェグナーのデザイン夜「ベアチェア」が空間に彩りを添える。ライブラリーの南北の壁には窓が開けられ、座ったときに森の緑に包まれる。

〈細部に宿るこだわり〉
木や緑本来の表情が随所に

左)ダイニング北面の障子
キッズルームのガラス仕切り戸には、採取した葉や花を押して封入。ダイニング北面の障子は、一本の秋田杉を余すことなく活用し、閉じたときに枠の小口面の木目が通るよう細やかに調整した。スイッチは板材をプレートにし、ボタンのみのシンプルな設えに。階段の手すりにはクワを採用し、自然素材の風合いを随所に取り入れている。
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text: Jun Kato photo: Toshihiro Sobajima
2026年9月号「木と生きる2026」


































