世田谷《旧尾崎テオドラ邸》
モデル・菊池亜希子さんと建築探訪へ
後編|レトロな喫茶とギャラリー
東京・世田谷の閑静な住宅街にあり、界隈での愛称は「水色の洋館」と言われる「旧尾崎テオドラ邸」。1933年に現在の地に移築された。2年前の大修復を経て、澄んだ空のようにオーラを放つ明治の洋館を、建築に造詣の深いモデル・俳優の菊池亜希子さんとめぐった。
菊池 亜希子(きくち あきこ)
モデル・俳優。幼い頃から間取りに興味をもち、高等専門学校から建築を学び、大学は都市環境システム工学を専攻。住宅建築が好きで、大学生のとき読んだ隈研吾氏の『負ける建築』の論に共感。喫茶愛好家としてもつとに知られる。近著に『ありが10ふく、みせて!』(扶桑社)など。2026年春からのNHK連続テレビ小説『風、薫る』に出演。
住まいから喫茶とギャラリーに転身

天井高3・5m。洋館のシンボルたる階段の吹き抜けに、昔ガラスを通した光がこぼれると、「美しいなあ」と目を見張る菊池さん。明治、大正、昭和と時代が下る中、共同住宅として数家族がぎゅうぎゅうに住んでいた時期もあったとか。そんな豊かな家時間に磨かれたつややかな古材が、床や壁にしっかり生かされている。

住宅建築好きの菊池さんは、天井の回り縁や壁の巾木など「すみっこの造作」にも魅せられるという。
「特に巾木。現代建物ではお飾り的になりがちですが、この洋館の巾木は補強の実用と装飾の美を備えています。色も無難な茶色や白でなくグレーベージュというセンス、絶妙です!」と感嘆しきり。

現在、2階には世界的な人気を誇る漫画家たちが発信するギャラリー、1階はレトロな喫茶サロンとなり、国内外からのお客を迎えている。昨年はここで漫画作家による弾き語りライブもあったそう。

温もりを戻した洋館。その種をたどると、個人の「救いたい」情熱のひと粒から実を結んだ一連の活動に、あらためて瞠目する菊池さん。
「私の好きな喫茶店も、洋館と似た状況にあるんです。この先、店主の高齢化などもあって、個性的ですてきな内装の店が失われていく未来を想像すると胸が痛くて。何かできないだろうかと考えていたところで、漫画家の方々の保存活動に希望を感じました」
次の100年に命をつなぐ水色の洋館が、大切な場を守る新しいかたちを見せてくれるように思える。
菊池さんのお気に入りの建築
「まず街の個性豊かなレトロ喫茶店。マスターの趣味が凝らされた岐阜・多治見の喫茶店『ヒヨコ』は、ツララのような吊り下げ照明にピンクレザーの椅子と、オンリーワンの内装です。音楽に浸れる鹿児島・いちき串木野のジャズ喫茶『パラゴン』は、れんがの建物と窓の配置に注目。東京では目黒の喫茶『ドゥー』。看板文字や小物もすべてが小粋で、ここは代替わりして30代の方が後継者となったニュースも喜ばしい。憧れの住宅建築では、近年、日本のモダニズム建築の巨匠・吉村順三が設計した神奈川『鎌倉山の家』を、中村好文氏が改修した『ink gallery』(年数回の限定公開)。茶室+コンクリートの和モダン空間は必見です!」
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旧尾崎テオドラ邸
住所|東京都世田谷区豪徳寺2-30-16
Tel|03-6413-5413
営業時間|10:00〜18:00
定休日|木曜(その他展示入替休館あり)
https://ozakitheodora.com/
text: Reiko Oishi photo: Kenta Yoshizawa hair & make-up: Yuko Aika
衣装協力=BUNON
2026年3月号「訪ねる建築 暮らす建築」



































