世田谷《旧尾崎テオドラ邸》
モデル・菊池亜希子さんと建築探訪へ
前編|明治の佇まいが残る水色の洋館
東京・世田谷の閑静な住宅街にあり、界隈での愛称は「水色の洋館」と言われる「旧尾崎テオドラ邸」。2年前の大修復を経て、澄んだ空のようにオーラを放つ明治の洋館を、建築に造詣の深いモデル・俳優の菊池亜希子さんとめぐった。
菊池 亜希子(きくち あきこ)
モデル・俳優。幼い頃から間取りに興味をもち、高等専門学校から建築を学び、大学は都市環境システム工学を専攻。住宅建築が好きで、大学生のとき読んだ隈研吾氏の『負ける建築』の論に共感。喫茶愛好家としてもつとに知られる。近著に『ありが10ふく、みせて!』(扶桑社)など。2026年春からのNHK連続テレビ小説『風、薫る』に出演。
世田谷イチ古い洋館が
漫画家たちの熱意で守られた

創建は1888年。英国と日本の血をひく男爵令嬢・テオドラ英子。縁深いその名と明治の佇まいを継承した水色の洋館で、菊池さんが思いを馳せる。
「華美でなく、さりげなく細やかな装飾が乙女心をくすぐる。描いてみたい住んでみたいと、この洋館に漫画家の方たちが惹かれた気持ちがわかります」

2020年、老いた洋館の取り壊しピンチを救わんと、山下和美さんをはじめとする著名な漫画家が集結。保存会を立ち上げ、約2年がかりの大手術で回復を遂げるが、その道ゆきは控えめに言っても難所の山、と改修を担った建築家・田野倉徹也さんが振り返る。
「この上げ下げ窓の障子も一からつくり直しました。滑車と重りを使った精巧なつくりで、技術的に難易度は高く、費用は膨大。既製品なら簡単で安く抑えられるが、それでは洋館たる意味がない。古い洋館の風情を伝えるディテールは譲れない、とした保存会の熱意と美意識で守られたんです」。

洋館といえど明治のそれは外国の建物をまねた日本建築。修繕をはじめると頑丈な土台や丁寧な細部に、当時の大工の工夫と気概が満ちていたという。昔の手仕事を継承しつつ、電気や換気、耐震など機能性も過不足なく盛り込んだ。何より譲れない「明治の風情」。それらをくみ取ったアプローチを「古い茶室の修理と同質」と語る田野倉さんが数寄屋建築専門と聞き、大学で建築を学んだ菊池さんも深くうなずく。
「手を加えた部分がもともとのしつらえのように溶け込み、馴染み方が素晴らしい。古きものをリスペクトしてなせる、修復の最大ポイントですね」
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レトロな喫茶とギャラリー
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text: Reiko Oishi photo: Kenta Yoshizawa hair & make-up: Yuko Aika
衣装協力=BUNON
2026年3月号「訪ねる建築 暮らす建築」



































